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あー、怠い。 日向を慰めていたらいつの間にか夜中になっててその後風呂入ってたら2時過ぎになってたしな。
「柳瀬君ボケーッとしてるよ、大丈夫? もしかしてまた具合悪い?」
「あ! いえ、ちょっと眠くて。 ハッ! 仕事はちゃんとやってます」
「柳瀬先輩それってちゃんとやってる事になるのかなぁ?」
「やってるだろ、お前この在庫数合ってるのか? ぱっと見全然違く見えるんだけど」
「ありゃ? 本当だ」
「お前がちゃんとやってないじゃねぇか!」
「あ、あはは! 柳瀬先輩が起きてるか試してみたんですよ、ね? 先輩」
如月は先輩の後ろにササッと隠れる。 卑怯な…… 先輩を盾にして。
「ダメだよゆいちゃん、柳瀬君に迷惑掛けちゃ。 柳瀬君疲れてるみたいだから、ちょっと待ってて」
先輩は事務所に戻ると俺に栄養ドリンクを持って来てくれた。
「はい、これ飲んで元気出して?」
「ありがとうございます」
「うひゃー、ある意味これ飲ませるからもっと働け的に感じる。 乙川先輩もなかなか鬼だ」
「お前どんだけやる気ないんだよ……」
「でもなんでそんなに夜更かししたの?」
「ああ、それは」
「あんな可愛い女の子達に囲まれてれば柳瀬先輩の分身が眠れなくなっちゃうに決まってるじゃないですか?」
「おい!」
「あ、あたし在庫取り直してきまーす!」
如月の奴逃げやがった。
「そうなの?」
「え?」
「あ、ううん! な、なんでもない! それでどうして夜更かししちゃったの?」
まぁ先輩は事情がわかるし先輩だし話しても大丈夫か。
「そんな事がありまして……」
「ふぅん、そうだったんだ。 若いっていいなぁ、青春してるじゃん」
「先輩だって若いじゃないですか?」
「うふふッ、ありがと。 私もそんな時に戻りたいなぁ」
「先輩もそういう時期があったんですか?」
「ああ! 今のはよろしくないよ柳瀬君」
先輩は少しムッとしたようにそう言った。 マズい、そんなわけではないのだけど失礼な事を言ってしまった。
「嘘よ嘘。 私だって学生時代はいろいろあったなぁ、なんか懐かしいよねぇ。 柳瀬君もでしょ?」
「まぁ…… はい」
そうだなぁ、俺も人並みに恋愛したり付き合ったり…… って今も片想いだけど恋愛はしてるか。
会社が終わり帰るとそっと玄関を開ける。 今日は誰か来てるなんてないよな?
「あら、おかえりなさい柳瀬さん」
「げ…… 神崎」
「なんです、その会いたくない人に会ったみたいな反応は?」
「お前こそどうした? そのガチ勉強モードは?」
ジャージ姿の神崎は眼鏡をクイッと上げる。
「気分転換は十分しました、中間テストも迫っております。 今後はしっかりと勉強したいと思っています」
「お、おう。 あまり頑張り過ぎるなよ?」
「はい、わかってます。 もう前のように思い詰めて勉強したりしません、頑張りはしますが」
「あれ? そういや日向は?」
「麻里は今夕飯の準備をしております、昨日私がやってしまったのでその分自分がやると」
「そっか」
日向も昨日よりは元気になったし仲直り出来てればいいなと思いつつ部屋に入り夕飯が出来るまで寝ている事にした。
「柳瀬さんご飯が出来ましたよ」
「え?」
「ひあッ!」
ゴチンと神崎と頭をぶつけた。 いや別に3人ともランダムで来るからいつもだったら驚きはしないのだけど今日は顔が近かったからビックリしてしまった。
「うひゅぅ…… 痛いです、覚えたものが一気に抜けていく感覚がします」
「悪い、神崎の顔が近くだったからビックリして」
「そ、そうでしたか? 失礼しました」
夕飯を食べその後、風呂から上がり部屋で携帯を見ていると隣の部屋から「んーーッ!」と神崎の声が聴こえる。
そぉいや勉強してたんだっけ。 前の事もあったしちょっと様子を伺ってみるかと思った。
手ぶらで行くのもなんだしあいつはたまに差し入れを持って来てくれるから何か飲み物でも持って行ってやろう。 キッチンへ行き甘いミルクコーヒーをいれて神崎の部屋をノックしてみると……
「柳瀬さん? どうぞ」
神崎の部屋に入るとやっぱり勉強していたようだ。
「お疲れ、ほら」
「え? 柳瀬さんが私に?」
「たまにはな」
「ふふッ、ありがとうございます」
神崎はコーヒーを受け取るとカップをジーッと見ていた。
「順調か?」
「だといいですね」
「なんだよ? そうじゃないのか?」
「いえ、今はあんまりそんな事考えないようにやってます。 なんだかその方がやりやすくて」
「そうか。 …… 話は変わるけど昨日あんな事あったけど日向の奴学校で大丈夫?」
「ええ。 香奈とちゃんと仲直りしたみたいです」
そう言うと神崎はクスクスと笑う。
「なんか俺おかしな事言ったか?」
「いいえ、麻里の事心配してるんだなって思って」
「普通あんな事あったら気にはなるだろ。 お前こそ最近学校とかでどうなんだよ?」
「私ですか? 私は楽しいです。 前は勉強の事ばかり考えてそんな余裕はなかったですが柳瀬さんに言われてそれ以外の事もちゃんと見てみようと思ったら楽しくて堪りません」
神崎のそんな笑顔を見るといい加減な俺が言ったことでもそんな風に思ってもらえるのがなんだか少し嬉しい気持ちになるな。
「もっと」
「ん?」
「もっと早く柳瀬さんがここに来てくれてればなと今は思ってます」
「え?」
「あ…… ええと、あの! だってそうじゃないですか!? そうなれば柳瀬さんとも仲良くなれるのが早かったのですから」
「そ、そうか」
「そうですよ…… や、柳瀬さんはきっと学生時代おモテになった事でしょうね」
「いやそんな事ないって。 学校の時はガキだったからさ、そこいらの奴と変わんねぇし今だってそうだろ」
「そう、でしょうか?」
「ああ、寧ろお前らの方がモテるだろ? パッとしない俺から見たら当時おお前らが居たら相手にもされてないって。 日向が俺を好きなんて言うのはマジで奇跡だよ」
「それはどうでしょう?」
神崎はグイッとコーヒーを飲んだ。
「うぐあッ……!!」
「どうした!?」
「柳瀬さんこれは…… 砂糖とお塩間違えてます」
「…… ごめん」




