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んー…… やっぱりこんなもんか。 結構本気だったが自信満々だった滝沢には勝てそうにないな。 それでも2番目にスコア高かったんだし俺も意外とやれるもんだ。



それにしても篠原の奴ボウリングもなかなか出来るんだな、今居る女子の中じゃ1番を叩き出している。 さてはこいつ自分有利に進められるからボウリングなんてチョイスを……



だけど1位は滝沢だったし。 あー滝沢よ、頼むから先輩にはちょっかい出さないでくれよな。



「柳瀬君凄いね、結構上手かったんじゃん」

「乙川さん! 俺の方が柳瀬さんより凄いっすよ!」

「あはは、滝沢君も凄い凄い」

「柳瀬さん私も楽しめました。 こういう事って普段しないので余計に」

「良かったな、お前頭が固いからいい気分転換だろ」

「あれぇー? 柳瀬さんって随分莉亜ちゃんの事詳しそうっすね?」

「い、いや! 観察してれば大体わかるだろ!? そうですよね先輩!」

「へ? ああ、うん。 そうそう!」



危ねぇ、滝沢にバレたら絶対騒ぐだろうからなぁ。 



「つーかご褒美って何くれるんだろ!? 彩奈ちゃん、俺やったぜ!」

「うわぁ、凄いねぇ。 じゃあはい、チュッ!」

「え!?」



篠原は滝沢のほっぺにチューしていた。



「あはぁ、グロス塗ってたから唇の跡付いちゃった。 ごめんね」

「あ、彩奈! なんてはしたない事を! 見て下さい、そんな事するからされた方はとても不快な思いを…… あれ?」



滝沢を見ればとても幸せそうに腑抜けた顔をしていた。 顔に出過ぎだろ……



「喜んでんじゃん。 物足りないかなぁと思ったけど大丈夫だったみたい。 さすが私!」

「さすが私! じゃありません、軽々しくやる事ではないと言っているんです」

「いいじゃん減るもんじゃないし。 でもなぁー……」



すると如月にポンと肩を叩かれる。



「柳瀬先輩残念でしたね、乙川先輩とあんな事したいんですよねぇ? 頑張ったのに滝沢君が1番でお気の毒です」

「勝手言いやがって。 大体先輩に1番になったからって言ってそんな事頼めるわけなかったわ」

「ですよね、柳瀬先輩好きな人には奥手になるタイプなのかなかなか進展しませんしねぇ」



ニヤニヤと笑って嫌味を言う如月を鬱陶しく思っているとハッとして日向を探した。 そして案の定こちらを見てむくれている姿の日向が……



「ああ、麻里ちゃんですか? あの子見た目もさる事ながら柳瀬先輩思いで可愛いですよぉ〜」

「おい! 俺は先輩の事が好きなわけであって日向の事は別に」

「何々? ゆいちゃんと柳瀬君2人してコソコソ内緒話?」

「いえ! やましい事は何もありません!」

「そんな事言うと逆にやましい事あるみたいじゃーん。 私仲間外れ?」

「乙川先輩可愛いねって今話してたんですよ、ね? 柳瀬先輩」

「うッ…… ああ! 先輩はいつ見ても…… そう思います」

「え!? そ、そうだったんだ。 ふぅん、なんかお邪魔しちゃったみたいね」

「あれ? 先輩!」



先輩はトイレの方へそそくさと行ってしまった。



「ありゃ〜、乙川先輩照れちゃってるなぁ」

「余計な事言うから俺も合わせるしかなかったし。 そのせいであっち行っちまったじゃねぇかよ」

「むふふ、いやぁそれはいい意味で去ったんだからいいじゃないですか。 それより麻里ちゃんそろそろ本気で怒っちゃいますよ?」



あ! そうだった。 ってなんで俺がいちいち日向の顔を伺いながら行動しないといけないのか……



「よぉ、楽しかったか?」

「それなり。 清人と一緒にやった方が楽しかった」



日向はピッタリと俺に肩を寄せて寄り掛かってきた。 



「おい、そんなにくっ付いてくるなよ、市原見てるんだけど?」

「いいもん別に」

「いやよくない」

「疲れたから寄り掛かってるだけ」

「俺は壁でもなんでもないぞ」

「清人鼻の下伸ばしてた」

「そこまで見て…… いや、そんな事ない」

「そんな事ある……」



ボウリングが終わりゲーセンの方へと向かった一行について行くと後ろからドンと背中を叩かれた。 日向は如月と先輩に絡まれてるからこんな事する奴は……



「なんだ、やっぱり篠原か」

「なんだとはなんだ! まぁそれより清っち残念だったねぇ私とキスできなくて」



何が残念なんだかと思っているとふと篠原の唇に目が止まった。 グロス塗ってたよな? 今は取れてる。



「ん? なぁに?」

「いや別に。 ていうかああいうのやめた方がいいって言ったよな?」

「うん、やめてたよ。 さっきはご褒美とか言ったからやっただけだよ。 もしかしてジェラシー?」

「俺は滝沢じゃないんだからあんなに浮かれないし、して欲しいとも思ってない」

「この私になんて言い草、さすが清っち。 あれくらい露骨に喜んでくれたらわかりやすいのになぁー。 あ、でもそれじゃつまんないよねぇ」

「柳瀬さん」



横から神崎が割り込んできた。 なんか怒ってるような表情で怖い……



「な、なんだ? 俺なんにもしてないよな?」

「何故そうなるんですか? 私こそ何もしてません」

「莉亜の顔が怖いからだよぉ〜、ほら笑顔笑顔」



篠原は神崎のほっぺたを摘んで変な顔をさせる。 



「やめへくらひゃい!」

「あはは、変な顔」

「もう! 私で遊ばないで下さい!」

「てかなんか用なの?」

「用というか…… 」

「ふむふむ。 ほい」

「んひゃッ! んむぅー!」



篠原は俺の手を取って神崎の頭にポンと乗せた。 何しやがんだこいつ……



神崎は両手で口を押さえて声を殺して叫んだ。 そのリアクションこっちもビビるからやめてくれ。



「ええー? 莉亜ったら顔赤いよ」

「あ、あなたのせいでしょう!? 何するんですかいきなり…… 」

「あらあら」



篠原はそんな神崎の様子を見てご満悦になっている。 ゲーセンも見終わりその後ご飯を食べて帰る事になった。 滝沢の車で送られ車を置いていた所へ戻りまた遊ぼうと言って2人は帰って行き俺らも解散となった所で篠原が口を開いた。



「ちょっと待って」



篠原は財布から10円玉を取り出して俺によく見せた。



「それがなんだよ?」

「ふふん」



篠原は10円玉を指の間から上下に転がしパッと消してみせた。 こいつマジシャンかよ? こんな特技あるなんて……



「すごーい! 彩奈ちゃんそんな事出来るんだ?」



先輩達は篠原の意外な特技に食い付いたので篠原はまたやってみせた。 神崎も日向も驚いて見てるので初めて知ったようだ。



そして俺に向き直り両手の手の甲を見せて両指を重ねると更に10円玉を転がしてみせどちらかの手で10円玉を握った。



「どっちだ?」



どっちって……



「右手」

「わお! 正解! 当てた清っちには何かご褒美あげないとね」



え…… ?




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