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「それで? どうしてこんなに時間が掛かってたんですか? まさかあなた達2人で怪しげな事を……」

「なんでそうなるんだよ!? ちょっとコンビニで日向の知り合いに会ってさ」

「お知り合い? 誰です?」

「小島君」

「ブフーーーッ!! ウエッグヘッゴホッ!!」

「うあッ! ばっちぃ!!」

「ぐぁああああッ、目が、目がぁーーーッ!!」



小島の名前が出た時俺の正面に居た神崎の口から盛大にチゲスープが放出され俺の顔面に浴びせられた。



「プッ…… アヒャヒャヒャッ! あんたらなんでいつもコントになるのよ!? バカじゃないの! あははははッ、腹痛いッ!」

「あたしのパスタにも掛かった……」

「こ、この野郎! いきなり何しやがる!? 目が痛ぇ……」

「ゴホッゲホッ! ずびまぜんッ!」

「清人これで顔拭きなよ」

「ある意味清っちにはご褒美かな! 莉亜も顔がばっちぃから拭きなよ」

「ありがとうございます。 …… これ雑巾じゃないですか! 拭いちゃったじゃないですか!!」

「あはははッ、あんた芸人でも目指した方いいんじゃないの?」



チゲが滲みる目を擦り俺の豚丼を見れば神崎が吐き出した汁が掛かってる。 これをご褒美と呼べるほど俺はフェチじゃないぞ……



「ちくしょう…… なんで俺が痛い目に遭うんだよ?」

「はぁ、すみません。 小島君に麻里の携帯の番号など教えて欲しいと言われてましたがすっかり忘れてて」

「んあ? 朴念仁の莉亜にそんな事頼んでたんだ、へぇ麻里も隅におけないじゃないの」

「なんであたしが小島君に教えなきゃいけないの? 鬱陶しいし返事するのも面倒」

「ふーん。 それにしては清っちから何かきた時はこまめに返事してるくせに」

「…… 清人はいいの」



そっか、あの小島って奴日向の事好きなんだな。 日向の塩対応にも目がなかったし。 多分あいつはいい奴だ、なんとなくだけど。



「番号くらい教えてやってもいいだろ? 篠原の知り合いと違って印象良さそうだし」

「ブーブーッ! さりげなくディスってんじゃないわよ!」

「清人が居るのに浮気しないもん」

「う、うう浮気!?」

「清っちがどうするかわかんないしまだ付き合ってるわけじゃないのに莉亜動揺し過ぎ。 そんなん浮気になるわけないっしょ? あー、でも陰キャな麻里の恋愛観は束縛束縛で男にとって地獄のような……」

「彩うるさい。 そんな事ないもん」

「ちょっと待てよ、別に俺まだ日向と付き合うなんて一言も言ってないだろ?」

「あ、あなたは清純な麻里の気持ちがわからないのですか!?」



ガタッと神崎が立ち上がって言った。 え? なんでお前が言うの?



「あんた言ってる事支離滅裂なんだけど? ダメって言ったり肯定してみたり」

「ち、違います! ダメですけど麻里を悲しませてはいけません! ほら今だって…… あれ?」



日向は無表情で莉亜がチゲを吐き出して掛かった部分をよけていた。 



「ん? それでなんの話だっけ?」

「もとは小島君に番号教えてあげて下さいという話でした。 なのでしたが麻里……」

「じゃあダメだったって言っといて」

「あーん、時々冷たくなる麻里にいつもショック受けてます」

「あはははッ、莉亜にも何気に塩対応だよね麻里は。 見てて面白かったから私が慰めてあげるよ、よしよし」

「俺は浮気だなんて思わないから別にいいぞ日向」

「………… 清人は番号交換してほしい?」

「そりゃ日向には友好関係は蔑ろにして欲しくないからな」

「…… わかった」

「なぁんだ、清っちが麻里には頼めば1発じゃん。 可哀想に莉亜、あんた清っちより下に見られてるわよ」

「付き合いの長さより深さとは言いましたがなかなかにショックです、えーん」



哀れ神崎…… だが俺もこんなに日向に好かれているのはマズい、絶対ないだろうけど頭にいつもチラつく未成年淫行……



俺の将来はそれで1発でアウトだろう。 例え日向がよくったって……



「ふぅん? 付き合いの長さより深さね、どうでもいい事ばっか囀ってる莉亜にしては良い事言うじゃない」

「んなッ! どうでも良い事ばっかり言ってると思ってたのですか?」




昼食が終わり部屋移動を再開する、俺が篠原の部屋に行って日向が俺の部屋で篠原が日向の部屋か。



篠原の部屋って1番ごちゃついてるから手間取るので神崎も手伝っていた。



「あたしが清人の部屋か…… 清人が居なくなっちゃうなら意味ないな」

「んな事言ったってしょうがないだろ? お前の部屋は物があんまりないから楽で良かったな」

「良くない、清人の隣のままで良かったのに」

「なあ、何度か言ってて言い難いし日向には悪いんだけどさ、俺には先輩が居るし日向とは」

「わかんない」

「え?」



日向は俺の口を手で塞いでいた。



「まだわかんない…… 清人がそうなのは知ってるしその人の事が好きなら確かにあたし邪魔してるかも。 でもどうなるかなんてわかんないし、それで何もしないのは嫌、あたしがこんな気持ちになってこんな行動するのは清人が初めて。 だからあたし……」

「おーい、こっち手伝ってくれ…… ありゃ? お邪魔したかな」

「あ、篠原……」

「うん邪魔」

「あーお邪魔しました、ついでに済んだら私のとこ手伝ってね」



そそくさと篠原は出て行った。 話を折られた日向はムッとした顔で俺を見ている、俺のせいじゃないだろ……



「ねぇ、清人はあたしに好きって言われて迷惑だった? みんなに迷惑かけてる?」

「日向…… 迷惑だなんて」

「だって清人ずっと困った顔してる、あたしが好きって伝える前はそんなことなかった。 彩が言うようにあたしって重いの?」

「い、いやそんなことないよ、好きって言われて嬉しくないわけなかったし」

「じゃあなんで……」

「ごめん日向、それは俺がハッキリしないから悪いんだ。 日向もわかってると思うけど俺は先輩のことが好きだ、だから俺は……」

「あたしの事はその人と同じようには見れない?」



勇気を出して告白してくれた日向には全く持って申し訳ないが俺は頷いた、すると日向の目からブワッと涙が滲みだしポタポタと床に落ちた。



「清人ッ…… あたし、あたしは清人が好き」



泣き縋って俺にそういう日向に俺はどうしてやるのが正解か全くわからない、俺は付き合った事はあると言ってもこんな状況になったことはないから。



「イヤだよ清人ッ、あたし清人がいいの。 愛想良くしろって言うならもっと頑張るから料理だって頑張るからズボラなとこも直すから莉亜とか彩みたいにちゃんとするから……」



日向がそんなこと言うなんて。 い、いや、初志貫徹するんだ俺、ここでブレたら先輩への気持ちは嘘だってことになるんだぞ!



「ダメだよ日向、もっと日向を悲しませることになるから」

「やだ、もう悲しいもん」



どうしよう…… そう悩んでいると日向が顔をあげる。



「付き合ってない……」

「え?」

「清人とあの人は付き合ってない、そうだよね?」

「あ、うん」

「あたしも清人も付き合ってない」

「そ、そうだけど?」

「だったら清人にあたしを好きになってもらえればいいんだ……」



…… え?!



自己解決したのか日向は素の表情に戻った。



「勝ってるとこある、だってあたしは清人と一緒に住んでるんだから。 ならいっぱいスキンシップする」



その直後に日向は俺を抱きしめた。



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