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ある日の事俺は体調不良になり会社を早退してしまった。 熱があるみたいで病院に行ってみると風邪だったらしい。
暇な時期とはいえ如月で大丈夫かな? と思ったが先輩があとはやっておくから無理をしないでと言われ抜ける事になった、情けないなと思い帰って横になっていた。
午後13時頃、荒々しく玄関が開く音が聞こえた。 まさか泥棒? と思っていると俺の隣の部屋がこれまた荒く開けられバタンと閉まる。 まっすぐ神崎の部屋が開いたから神崎で間違いないだろう。
神崎? あの生真面目な神崎が学校早退したのか? 今日は午前授業とかそういう話も聞いてなかったから早退だろう。
物音立てずに静かにしているとすすり泣く声が聴こえる。 泣いてんのか? あ、そういや学年末テスト終わったってこの前言ってたよな、てことは結果が芳しくなかったんだな。
あいつテストに備えて猛勉強してたもんな、それが早退するくらいショックな結果だったって事なのか。
うーん…… 今日はお通夜モードだなと思って携帯を弄っているとスルッと手から滑り落ち床にゴトンと落ちた。 その時神崎の泣き声が止んだ。
げ…… 出来れば泣いているくらい落ちている神崎に関わりたくない、こっちも具合があんまり良くないのだし。
「柳瀬さん?」
壁越しからこちらに話し掛けて来た。
「…………」
「ど、泥棒!?」
「だぁーーーッ! 俺だ俺!」
「い、居たんですか!?」
「壁越しで喋るのやめてくれないか? 声がデカくなる」
「あ、はい。 すみません」
すると神崎の部屋のドアが開いた。 おいおい、まさかこっち来る気か?
日向の事に頭を悩ませていて更に体調不良、そして落ち込んでいる神崎…… 日向じゃねぇがとっても面倒なんだけど。
などと思っているとドアがノックされる。
「柳瀬さん」
「なんだ?」
「入ってもよろしいでしょうか?」
「いいよ」
入って来た神崎を見れば少し目が赤い。 ていうかなんの御用でしょう?
「柳瀬さんが帰って来てるなんて…… 全く気付きませんでした」
「車あったの見えなかったか?」
「あはは、そうですよね、見てませんでした。 ところで柳瀬さんはどうして帰って来られたのでしょう?」
「風邪らしい。 気分あんまり良くなかったと思ったらな」
「あ! そうだったんですね…… すみません私は」
「どうしてお前も帰って来たんだ?」
何故か聞いて欲しそうな顔を神崎はしていた。 もう堪えきれないのかなと察した俺は聞いてみる事にした。 もうバッタリ顔を合わせた時点でこうなりそうと思ったから面倒とか通り過ぎてしまった。
「…… なんだか見透かされてるようです」
「察するにテストが良くなかったんだろ?」
「わかっちゃいますか…… 柳瀬さんなのに」
「お前が猛勉強してるのは知ってるしな。 柳瀬さんなのには余計だ」
「ごめんなさい…… 私前にも言ったように出来が悪い子なんです」
ああ、やっぱりテストだったな。 それにしてもこいつ……
「お前の両親はお前の事をそう思っているのか?」
「はい…… 私に愛想をつかしています、見たくもないのでしょうね」
「だからここに?」
「私養子ですから……」
養子…… 神崎の家庭の事情はなんだか拗れていると思ったけどこいつは養子だったのか。
「8歳の頃に引き取られました。 最初は期待されていたんです、そして期待にも応えられました。 その頃は私1番頭が良かったんです。 ですが現実は残酷ですね、歳を重ねて小学校を卒業して中学生になり、周りも次第に勉強に力を入れ始めてから私は他の人に抜かれ始めていきました。 私も必死にこれ以上遅れは取れないと今まで以上に勉強しましたが私は所詮そこまでの人間でした」
「それで出来の悪い子だと?」
「父や母はこれでは優秀な学校へ入れる事は無理と判断したのでしょうね、私はそんな失意の眼差しに押し潰されていました。 そして役に立たない私は厄介払いのようにここへ。 今に至ります、そして今の学校生活でも1番になれないような不出来な娘です」
「そうだったのか」
「仮に今の学校で1番になっていても父や母に認めてもらえるわけがないとわかってました。 でももしそうなれたら少しは私に振り向いて貰えるかもと…… そんなのは無駄な期待だってわかってます、わかっていますが私はバカなんです。 笑っちゃいますよね」
神崎はそう言って顔を伏せた。
養子にまでしておいて勝手な期待を押し付けて期待外れだったら放り出すとかどんだけ身勝手な親なんだよ……
「お前さ、勉強好き?」
「…… 大っ嫌いです」




