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「今日は随分機嫌が良いね清っち」
「ん? そうか?」
「締まり…… ない顔」
「もしかしてあの先輩と何か良い事でもあったのかなぁ?」
「そうなの? 清人」
日向にはジ〜ッと見られ篠原は興味津々、神崎は我関せずといった感じにご飯を食べている。
「いや、良い事なんか特にない…… 新人が来て教える事になったから大変なんだ」
「へぇー、新入社員なんだ。 若い? 女? んでもってその人可愛い?」
「なんでそんなに食い付いてくるんだよ篠原は…… 二十歳の子で女だ、可愛いかどうかは人によるから知らん」
「なるほどー、そう来たか。 ん? はい麻里!」
日向が手を挙げているのに気付いた篠原が日向を指名した。 なんだこのやり取りは……
「清人、じゃあ質問」
「おう……」
「あたしは清人から見て可愛い?」
「ゲホッゴホッ! なんでだよ!?」
「清っちはちゃんと麻里の質問に答えなさい!」
答えなきゃダメなの? そりゃ日向は可愛いさ、誰が見たってそう答えると思うけどいざ言えってなると恥ずかしい。
「清人答えて」
「清っちハッキリしなさい!」
「か、可愛い……」
「はぁーい! 清っちから可愛い頂きましたぁ! 麻里感想をどうぞ」
「…… ロ、ロリコン」
「と言いながら超照れてる麻里でした!」
恥ずかしい…… 日向の奴も照れるんなら聞くなよ!
「じゃあさ、私からも質問! 麻里が可愛いのはわかったよ。 まぁそれでもこの中で1番可愛いのは私だけどさ」
「すげぇ自信だな」
「だって私の学年でも莉亜と麻里含めて私が1番可愛いって認知されてるんだから仕方ないじゃん? だけど清っちの言う通り人にもよるしね! だから清っち的にはこの中で1番可愛いのは誰かな?」
「それ答えるようなの?」
「当然っしょ!」
先程までより強い視線で日向と篠原に見つめられる。 なんでこんな尋問されなきゃいけないんだ!?
「か、神崎黙って飯食ってないでなんとか言ってくれ」
「そうですね」
「ほら見ろ! お前達がどうでもいい話題で騒いでるから神崎がイライラしてるぞ!」
「待ってください、私にとってはこの話題は確かにどうでもいいです、ですが彩奈はしつこいので柳瀬さんが答えなければしつこく聞いてくるでしょう」
「しつこいって失礼! ブーブーッ!」
「じゃあそれって……」
「全く持って不本意ではありますがここはしっかりと柳瀬さんにお答えいただく必要がありそうですね」
「観念して清人」
「う……」
3人の視線が俺に集まる。 ま、まさか神崎までもが…… どうしよう? どう答えればいいんだ? だって3人とも可愛いわけで。
「ご飯が冷めてしまいます、お早く」
「いやお早くって言われても……」
「清人」
「早くしなよ」
改めて3人をよく見る、見た目という視点で言えば篠原は確かにこの中では1番だ、神崎、日向のレベルの高い美人の中でも。
でも神崎だって最初は最悪な奴だと思っていたけど最近は俺をただ嫌うだけじゃなくてしっかりと俺を見てくれている。
それに日向は1番最初に俺に打ち解けてくれて最近はよくわからなくなったけど今でも懐いてくれている。
そんな奴らに優劣なんて付けていいのか? 神崎は言ってた、家族のようなものだと。 俺だってそれに近いものを今では感じている。
普通だったら篠原だ、なのに俺はこんなにも悩んでいるのはやっぱりそう感じてしまっているからだ。
「神崎……」
「こ、この流れで私ですか?」
「日向」
「え?」
「篠原」
「やっぱ私? って……」
「「「え?」」」
結局3人とも言ってしまったので3人は怪訝な眼差しで俺を見る。
「なんか全員言われたんだけど?」
「いや、俺には誰が1番とか選べないよ、お前らと今まで接してきて神崎、日向、篠原の3人にそれぞれ思い入れあるし可愛いところも違うし」
「なんかそう言って誤魔化してるよねぇ?」
うぐ…… 言えば言うほど首が締まっているようだ、俺が3人の視線に耐えかねて椅子を後ろに引くとポケットから先輩から貰ったキーホルダーが落ち篠原が拾った。
「うん? 何これ?」
「イルカのキーホルダー…… これ清人が買ったの?」
「あーそれ貰ったんだよ」
「誰に? まさか新しく入った人?」
ぐぐぐ…… 日向に何故こうも追及されるんだ。
「違うよねぇ清っち、それは先輩からだよね?」
「なんでわかった!?」
「だから機嫌良かったんでしょ? にしても清っちに誰が1番可愛いか答えてくれないからしらけちゃった」
「ギクッ」
「はぁ…… もうやめようよ、清人困ってるし。 だけどあたしの事可愛いって思ってるんだよね?」
「…… うん、そうだな」
「甘いなぁ麻里は」
「それより早くご飯食べちゃって下さい」
「あれぇー? 莉亜照れてるでしょ?」
「照れてません!」




