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あーあ、眼鏡を買いに行く事になったけど俺の社会人としての経済力今のところフル活用だよな、棚買ったり金が足りなかった分出したり眼鏡買ったりと。



この生活って意外と変なところで金掛かるな、それは俺が来たせいなのかなんなのか…… まぁ色々とこの生活は他のアパートより金が掛からない分こっちで取られてるけどな。



そう考えていると神崎のジトッとした目が俺に向けられていた。



「なんだよ?」

「あ、いえ…… 今日は裸眼なので見え難くて。 それになんだか柳瀬さんにあれこれ出費を出させてすまないなと」

「あー、俺もちょうどそれ考えてた」

「あぅぅ…… やっぱりそうですよね。 今まではそんな事あまりなかったのですが。 あ! 別に柳瀬さんが来たからとかそんな事は言うつもりはありません!」

「…… そういう風に聞こえるから余計なフォローはいらないけどな」

「そういう面では今あなたに甘えさせてもらっているのは事実です。 偉そうな事は言ってましたが柳瀬さんが言う通り私達はどうしようもなくお子様ですし」



まぁ俺もこいつらに料理とか…… いつの間にかシャンプーやら歯磨き粉とか共有出来そうな物は使わせてもらっちゃってるからいいんだけどな。



「いつもツンケンしてるくせに珍しく潮らしい態度だな」

「だ、だから悪いと思っているからでしょう! 本当はあなたに頼りたくなんてないんですから!」

「あー、はいはい。 その方がお前らしいわ」



こいつがいつまでもそんな態度だと調子が狂うのでわざと挑発した。



「ほら着いたぞ、行ってこいよ」



俺が神崎にお金だけ手渡して行かせようとすると神崎は不思議そうな顔をしている。




「柳瀬さんは行かないのですか?」

「なんで俺が?」

「あ、いえ。 柳瀬さんのお金で買うのですから柳瀬さんの趣味に合わせて買った方がいいのかと……」



なんだそれ? 俺がこいつの眼鏡好きに選んでいいの? 本当馬鹿みたいに律儀な奴だな。



「好きなの買えばいいじゃん?」

「そうは言ってもなんだか……」



あれ? なんかデジャヴるなぁと思ったら日向の棚と時と同じだな。 でもこいつの場合は何か変に遠慮してるよな?



「わかったわかった、なんかまたあーだこーだ言ってると長くなりそうだからついてくだけついて行くよ、ちゃっちゃと選べよ?」

「はい、もちろん」



店に入ると当たり前だけどズラっと眼鏡が並んでいる。



あ、そういえば先輩もパソコン弄ってる時とか車運転している時は眼鏡掛けてたよな。 それがまた可愛い……



「何をニヤけているのですか? 怖いです」



おっといけない。 先輩の姿を想像していたらつい…… ていうか顔近いぞこいつ。



「思い出し笑いだ、なんでもない。 それともっと離れろよ」

「こんなところでやめて下さい、とても恥ずかしいです。 それに見え難いんだから仕方ないじゃないですか」



じゃあ一緒に来いとか言うなよな! それに顔近い方が恥ずかしいだろ普通は。



「神崎って裸眼の視力どれくらいあるの?」

「去年測った時は0.5くらいだったのですが前の眼鏡でも見え難くなっていたのでもっと悪くなっているかもしれません、はぁ〜……」

「勉強のしすぎか?」

「まぁ勉強は毎日頑張っていますけど目が悪くなっても成績はあまり良くならないなんて泣けてきます」

「神崎ってテストの学年順位ってどれくらい?」

「なぜあなたにそれを言わなければいけないんですか?」

「眼鏡買いに来たろ」

「う………」



痛いところを突かれた神崎は溜め息を吐いて答えた。



「9位です……」

「は? 学年全体でだよな? お前そんなに頭良かったの?」

「どこがです? 良くありません。 これでは両親に合わせる顔がありません……」



とても寂しそうな顔をして神崎は言った。 こいつの両親どんだけ厳しいんだ? それにあんまりこの手の話題っていい顔しないよなこいつ。



この前篠原のお婆ちゃんが訪ねて来た時も篠原とお婆ちゃんを物凄く羨ましそうな眼差しで見ていた。



「どれが良いでしょう?」



そうこうしていると神崎は眼鏡を手に取り俺に聞いてきた。 どれが良いって…… 正直自分の好きなの買ってくれれば別にいいけど。



「これは?」

「黒縁…… 私ってそんなイメージなのですか?」



どれが良い? と言う割には顔を顰めて言うなこいつは……



試しに神崎は俺の選んだ芋くさい眼鏡を掛けてみた。 神崎が掛けると素がいいからそんな眼鏡でも結構様になっている。 顔面偏差値は間違いなく優秀だな。



「やっぱりおかしいですか?」

「いや、意外と悪くない…… けどまぁ神崎にはこれとか?」



クラシックなネイビーのフレームの眼鏡を神崎に渡した。



「あ、いいかもです!」



真面目に合いそうなのを選んでやると神崎は嬉しそうに眼鏡を掛けてみた。 なんだかんだ言って遠慮しているようだけど本当は好きなの選びたいんだよな、こいつの面倒な性格のせいで拗れるけど。



「どうでしょう?」

「うん、可愛いんじゃないか?」

「か、可愛い!? …… や、やめて下さい揶揄うのは!」

「いや思った事を言っただけで…… じゃあそれやめるか?」

「…… い、いいえ! これにします。 個人的に気に入りました」



フレームが決まってレンズ調整をして後日取りに行く事になった。 思ったより時間が掛かるんだな。



「その…… 何か食べたい物とかありますか?」

「なんだ急に?」

「お返しになるとは思ってませんが柳瀬さんに少しでもお礼をと思って」

「………… じゃあオムライスかな」

「オムライス? …… でいいのですか?」

「結構好きなんだ」

「ふふッ、わかりました。 では今日の夕飯はオムライスにします」



こいつ絶対お子様だと思ったろ……







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