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休みの日になり俺は一旦家に戻り寮に帰っている途中1人の老婆に手を上げられ車を停められた。



この近くは何もないし…… ヒッチハイクか?



「ごめんなさいね、停めちゃって」

「いえいえ、どうかしましたか?」

「ちょっと道を尋ねたくてね…… この辺りにある家を探してるんだけど」

「もしよろしければ乗りますか? 車の方が早いですし」

「いいのかい? これはどうも親切に」



俺にお辞儀しながらそのお婆ちゃんは後部座席に乗った。 なんか結構上品そうなお婆ちゃんだ。 キリッとしているし。



車をゆっくりと走らせながらお婆ちゃんが探している家を俺も探す。



「確かこの辺なんだけどねぇ」



この辺は俺が住んでる所なんだけど。 そう思ってアパートを通り過ぎると……



「あ! ここよここ」

「え!? ここですか?」

「おや? どうかしたのかい?」

「俺もここに住んでるんです」

「おやおやまぁ。 だったらうちの孫と一緒なんだねぇ」



一体誰の? と聞こうとした時ガムを膨らませた篠原が玄関から出てきた。 どうやら出掛けるようだ。



「こら! 彩奈!」



その声に篠原がビクッとしてこちらを見た。 俺もいきなりこのお婆ちゃんが叫んだのでビックリした…… 心臓に悪い。



「は? お婆ちゃん…… と清っち? なにこの組み合わせ?」

「篠原のお婆ちゃんだったのか…… 」

「いやいや、なんでここに居るわけ? しかも清っちと」

「この方に道を聞いたらご丁寧にここまで乗せてもらったんだよ。 礼儀正しいし彩奈も見習いなさい」

「あー…… なるほど。 つーかなんで来たのよ?」



篠原は髪をかき上げ溜め息を吐いた。 



「心配して来たに決まってるじゃないの。 いきなりチンドン屋みたいな格好してみたり制服がいいとかなんとかで親元から離れたりしてるんだから。 それにその頭はなんだい?」

「チンドン…… まったくわかんないかなぁ、この良さが」

「お前制服が可愛いからここに来たの?」

「うん、そりゃ大事っしょ! モチベ上がるし!!」



ニカッと笑って篠原は俺に向かってピースする。 うーん、まぁ篠原らしいっていえばらしいけどな。 こいつはいつもそんな軽いノリでやってきたんだろうな。



「ああ、あんなに可愛かった孫がどうして…… うッ! いたたたッ」

「だ、大丈夫ですか?」



お婆ちゃんが胸を押さえて苦しみ出して膝を着いた。 まさか昔はどんなんか知らんけど変わり果てた篠原を見てショックで……



「こ、これはどういう事ですか!? お、お婆様大丈夫ですか?」



篠原と篠原のお婆ちゃんの声が聞こえたのか顔面蒼白の神崎と?マークを浮かべた顔の日向が出てきた。



「何事です!? じゃなかった、まず救急車を!! 麻里お願いします!」

「え……? あ、あの救急車って何番? あの……」



日向は番号がわからないのか携帯を取り出しオロオロしている。 篠原本人は背伸びをしてあくびをしている始末……



こいつは鬼か? 自分のお婆ちゃんがこんなになっているのにどこ吹く風だ。



「おい! お前いい加減にしろよ!? 今そんな呑気な事してる場合じゃないだろ!」

「いいのいいの、それ演技だから」

「「え?」」



そう言われたお婆ちゃんはオホンと咳払いをしてムクッと立ち上がった。



「「は?」」

「あ…… これだよね?」



日向は番号がわかったらしく画面を俺に見せた。 110番って警察じゃねぇーか! 



「バカ! それ違う!」

「え?」



日向から携帯を取るとタイミング悪く出てしまい間違いだったと詫びを入れた。 なんて人騒がせなお婆ちゃんだ…… アホなのか? 



「おほほほ。 失礼しました」

「はぁ……」

「…… お、お元気そうで何よりですね!」

「バカじゃないもん…… あたし悪くないのに」




茶目っ気たっぷりに誤魔化す姿を見ていると篠原はこのお婆ちゃんから影響受けてるなと感じた。 



「まったく。 気を引きたいからって悪趣味なジョークやめてよね? そのうち本当にくたばったらどうすんのさ?」

「こ、こら莉亜! 縁起でもない事言わないで下さい!」

「演技だけにねぇー! あはは」

「まぁ心配して見に来たのは本当なんだからね。 でも一緒に住んでいる子達も彩奈と仲良くしてくれてるようだし立派な彼氏も居るみたいで少し安心したよ」

「ん? 彼氏?」

「ほら、この清っちさん? でしたっけ?」

「ぶッ、あはははッ! そ、そぉだね。 清っちは私の彼氏ね! あははッ」

「お、おい!」



この野郎、否定しろよ!



「清人…… 本当にロリコンだったんだ」



ゴゴゴゴゴと辺りを歪ませるようなオーラを放つ日向に睨まれる。 んなわけないだろ!



「ええと…… ここじゃなんですしお茶でも飲んで行きませんか?」



その後本性を知られたせいかお婆ちゃんはまるで篠原が2人居るような感じだった。





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