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後日談:幸せな日々 後編

 オフィーリアの妊娠がわかってからもオフィーリアはいつも通り公務をしようとするのだが、メルヴィンがオフィーリアの体を心配してなかなか公務を許可しなかった。


 そして、ことある毎に


「そこ、段がある。(つまず)いたらいけないからだっこしよう」


「喉乾かないか?」


「お腹は空かないか? 二人分しっかり取らないと……」


「重いものを持ってはいけない。その本は私が持とう」


 あれやこれやと世話を焼こうとする始末。



 困ったオフィーリアは二人きりでソファに座っている時にチャンスとばかりにメルヴィンに頼むのだった。


「メル、妊娠は病気ではないので普通にして大丈夫です」


 メルヴィンは否定するように首を振った。


「しかし、フィーに何かあってからでは遅い」


 メルヴィンの心配しっぷりにオフィーリアは少し(あき)れた様子を見せた。


「今まで通りに出来ないこともありますが、気をつけていれば、必要以上に心配する必要はありません」

「転けたら危ないから、ずっと座っていてほしい」


 メルヴィンのいつも人前で見せる冷静な表情とは違う、心配でたまらないと言う表情にオフィーリアはくすっと笑いたくなるのを堪えながらメルヴィンを見つめた。


「先生に歩かないでじっとしていたら、運動不足で子を生む力が無くなると言われております」

「しかし……」

「メル、先生に言われたように出来ることはしておきたいのです」

「でも……」

「一人ではありませんし、周りに付いてくれている者もおりますので大丈夫ですわ」


 オフィーリアに言われてもメルヴィンは納得できないのか言葉を続ける。


「それでも、私は愛しいフィーに何かあったらと思うと心配なのだ」

「それはわかりますが、私自身、赤ちゃんのためにも気を付けますわ」


 オフィーリアはメルヴィンの片手を自身の両手で包み込んだ。そして、懇願するようにメルヴィンを見上げるのだった。

 愛しいオフィーリアにそこまで言われて、メルヴィンは渋々納得したような表情をみせたのだった。


「わかった。でも、気をつけてくれ」

「メル、ありがとうございます」


 礼をするオフィーリアが顔を上げるやいなや、メルヴィンはオフィーリアをぎゅっと抱きしめ、オフィーリアの顎を掴んだかと思うとオフィーリアの唇にそっと口づける。


 唇を離したかと思うとメルヴィンはオフィーリアの目を見つめて、普段とは違う甘い声でそっと(ささや)いた。


「フィー、愛してる」


 それを聞いたオフィーリアは顔をほころばせて微笑んだ。そして、メルヴィンを見つめ返した。


「メル、私も愛しています。あなたと結婚できて幸せです」


 その言葉にメルヴィンも顔をほころばせて微笑む。

 メルヴィンは片腕を更にオフィーリアの背中に回した。再び唇をそっと重ね、そして気持ちを示すように深く口づけていくのだった。



◇◇◇◇


 いよいよオフィーリアの産み月が近づいてきた。オフィーリアのお腹も大きくなっていた。

 オフィーリアの公務はなく、出産の準備を粗方(あらかた)終わらせていた。わが子の誕生を心待ちにするメルヴィンとオフィーリア。


 そんなある日、メルヴィンの公務も無く、メルヴィンとオフィーリアは一つのソファーに二人仲良く座っていた。オフィーリアは生まれてくるわが子の世話に使うハンカチに刺繍を入れている。メルヴィンは仕事の書類に目を通しながら、時折オフィーリアの様子を見ては嬉しそうに微笑んでいた。


 そんな時、オフィーリアがお腹に痛みを感じ始める。すぐさまメルヴィンによって出産のため準備された部屋へと運ばれた。ベッドに座るオフィーリアの手を握るメルヴィン。


「フィー、大丈夫だ。今、先生を呼びに行かせている」

「ありがとうございます。先生より初めての出産は時間がかかると伺っていますので急がなくても大丈夫ですわ」

「そうだな。しかし、フィー、心配でならない」


 メルヴィンは苦しそうな顔をしながら、握るオフィーリアの指先に口づける。


 そこへ侍医が部屋へと入ってきたのだった。メルヴィンは顔を上げて侍医を見る。


「先生頼むぞ」

「陛下、ここからは私にお任せください。陛下は部屋の外へ」

「わかった」


 メルヴィンはオフィーリアを見つめて唇に口づけると名残惜しそうに握っていた手を放し、部屋の外へと出て行った。



 心配なメルヴィンは部屋の外でそわそわ。出産は命がけ、産後も命を落とすことがあるので、心配過ぎてその場所を離れられない。側近に執務室に行くように促されても首を振る始末。


 



 そうこうしているうちに、時間が経ち、侍女が部屋から出てきた。その姿を見たメルヴィンは侍女に詰め寄る。


「オフィーリアは? 子供は?」

「親子共々ご無事です。後産の処置がありますので、もう少しお待ちください」


 メルヴィンはほっとした顔でその場に力が抜けたように立ち尽くす。周りにいる側近もほっとするのだった。



 しばらくすると、メルヴィンの入室が許可された。部屋に入り、ベッドの上にオフィーリアの姿とオフィーリアの腕の中にいる布で包まれた赤ちゃんを確認してホッとしたメルヴィンへオフィーリアは微笑む。


「オフィーリア、大丈夫か?」

「はい、無事です。ほら、可愛い女の子ですわ」


 メルヴィンは白い布で包まれた赤ちゃんを見つめる。柔らかそうな頬っぺたを人差し指で優しく触る。嫌がらずメルヴィンを紫の瞳で見つめ返す赤ちゃんにメルヴィンは思わずニッコリする。


「可愛い......」

「抱いてやってください」


 オフィーリアがメルヴィンに赤ちゃんを渡そうとする。おっかなびっくりで、赤ちゃんを抱くメルヴィン。


 その様子を見た侍医は笑うのだった。


「さすがの陛下も赤ん坊には形無しですな」

「初めてだからどのようにしていいかわからないだけだ。慣れればちゃんと抱き上げられる」


 言い合う二人を見てオフィーリアはクスッと笑う。


「お二人は仲がおよろしいですね」

「「良くない!!」」


◇◇◇◇


 二人の間に生まれた女の子は母譲りの紫の瞳を持つことからバイオレットと名付けられた。


 メルヴィンはあまりの可愛らしさにデレデレ。オフィーリアだけでなく、バイオレットにもメロメロになるのだった。時間の許す限り二人の傍から離れようとはしなかった。


 メルヴィンとオフィーリアはこの二年後、男の子に恵まれ、その一年後には更に男の子に恵まれた。


 子供達に囲まれた国王夫婦の姿に国民は王国の明るい未来を感じたのだった。



 END



何とかここまで書けました。糖分の補充が少しでもできていたらいいのですが……。


つたない文章だったと思いますが、読んでいただいてありがとうございました。

まともに文章を書いたのが初めてだったので、本編を投稿した時には「婚約破棄物を書いてみたかったので書いたことに意義がある」ぐらいに思ってました。(たくさん読んでくれる人がいるなんて思ってませんでした)

こんなにたくさんの方に読んでいただけるとは思わなかったのでビックリしています。ありがとうございました。

評価や感想やブックマーク登録や誤字報告くださった方ありがとうございます。嬉しかったですし、助かりました。


こちらはこのまま完結ですが、実はもう一話番外編を書くことにしています。

他サイトで番外編の「もう一つの結婚」に出てくるライオネルと北の砦の隊長の話をリクエスト頂いてまして書けそうなので書いてみることにしました。(ラストはまだ決まっていないので、どうなるか分かりません←初心者のくせに無謀)


「婚約破棄したら隊長(♂)に愛をささやかれました(https://ncode.syosetu.com/n6607fs/)」


間違いなくBL色が強くなるのでシリーズ化して、「国王陛下は婚約破棄された令嬢に愛をささやく」の本編と分けて独立させています。


BL苦手な方には回避をお願いしたいのですが、そうでない方は良かったら覗いてみてやってください。

(R15とR18の境目がよくわからないので安全策を取っているうちに意外とマイルドになるかもしれませんm(_ _)m)

      ↓

と言っていましたが、「婚約破棄したら隊長(♂)に愛をささやかれました」が終わり、

その後のリリアについて書き始めました。

「私、幽閉されちゃいました~幽閉された元男爵令嬢に明日はあるか?~ (https://ncode.syosetu.com/n4760fz/)」

淡々とリリアの日常を書いていく予定なので、盛り上がり(鞭とか鎖とか牢獄とか?)を期待されている方には申し訳ないですが、(たぶん)盛り上がりません。

良かったら読んでみてくださいませm(_ _)m


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[良い点] テーマはとても好きです [気になる点] 短すぎて・・告白されて次のページではもう結婚式!えーっっっっっっ、もっとふくらませて~ [一言] もっとヒロイン中心に長編にしてほしいです
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