告白に次ぐ告白
数日後。部室に集まった部員達は長島のパソコンを操作する動作を見つめる。
長島はマウスをクリックし、そして口を開ける。
「は……」
みんなが息をのむ。
「89%!」
「や、やったー!!」
池尻がガッツポーズをする。他のみんなもホッと胸をなでおろした。
「山田さん! よかった! よかった!」
「はい! よかったです!」
坂井が琴子の手を握り喜ぶ。
「僕が脱いであげられなくてごめん!全部山田さんのおかげだよ!」
「いや脱がなくて良かったと思います」
「うん、ホント。琴ちゃんのおかげだよお!これからもよろしくね!」
池尻がパソコンの上から飛び出し言う。池尻を引っ張り席に戻すと、長島が話しだす。
「ま、パソコン部としては、これからもこの専用サイトの充実を図っていこうか」
「はーい。ってそんなことより! 課題も達成したわけだし、パーッとお祝いでもしましょう!! 買い出し行こう!」
「そんなことより……まぁいいか。じゃあ俺はかえ」
「バカッ! 帰っていいわけないでしょ! 屋上でやるからお前先屋上行ってろ!」
「ハァ、死にたい」
そうつぶやきながらも、長島は笑顔で部室から出て行く。
「琴ちゃん! 一緒に買い出し行く?!」
「はい」
「じゃあ僕もついていきます」
「えー!坂井はいいよお」
「買ったもの持ちきれなかったら困るでしょう」
「はぁ~。あ、松田と岡崎先輩は先屋上行って長島が帰らないように見張っててよ!」
松田と岡崎は頷き立ち上がった。琴子と池尻と坂井は買い出しへ出た。
コンビニへと歩きながら、池尻が話す。
「俺さぁ~あの日、琴ちゃんが校門でゴスロリ着てサイトの宣伝してるの見たとき、本当にズガーン! てきちゃって」
「ズガーン?」
「元々琴ちゃんのことはタイプど真ん中! って感じで好きだったんだけどね。あの日さらに好きになった! ね、本気で俺とのこと考えてみない?」
「え……」
「池尻先輩、そういうのは二人きりの時に言ったらどうですか」
「いや、それお前がついてきちゃったからしょうがないじゃん! じゃあ帰れよ」
「嫌です」
睨み合っている二人に琴子はそろそろと話しかけた。
「あの、池尻先輩にはたくさんお世話になってますが、まだその付き合うとかあまり考えたことなくて」
「琴ちゃん! じゃあ付き合いながら考えよう!」
「はい、コンビニです」
坂井が池尻をコンビニの中へと押し込む。池尻はブーブー言いながらもコンビニの中へ入りカゴを取り商品を選び始める。池尻がアイスをカゴに入れ始めたのを見て池尻に言う。
「池尻先輩、アイス先に買って帰らないと溶けちゃいますよ。前にそれで長島先輩に怒られてたでしょう」
「おう、そうだな」
「他のは俺が買っとくので、いそいでください」
「あ、ホント? おっけー」
池尻は手早くアイスを入れ込みレジに行き会計を済ませ出て行った。
「じゃ、先行ってるからー」
坂井は走って行く池尻を見てつぶやいた。
「……単純」
「ん?」
「いや、山田さん好きなの選んでっていいよー」
「はーい」
坂井と琴子はポテトチップスやジュースを買いこみ会計をしてコンビニから出た。帰り道、坂井は口を開いた。
「山田さん、僕も、あの日の山田さんにはビックリしたんです」
「あぁ、もうそんなにつっこまないでくださいよ」
「いやいや、すごいなって。元々、下半身露出してる僕なんかの言うことをいつでも素直に聞いてくれて、すごい子だなって思ってた」
「そんな、そんなすごいことは何も」
「僕、山田さんが好きです」
「……えっ?!」
琴子は一瞬理解できなくて、坂井を見つめた。
「それだけ、伝えたかった」
坂井は寂しそうに笑うと、それ以上何も言わず歩き出した。
二人は学校につき、屋上に行った。屋上の真ん中で、4人はすでに楽しそうに座り込んで話をしていた。琴子と坂井もその中に入ると、買ってきたお菓子たちをその場に広げた。ジュースをそれぞれ手に取ると、みんなで顔を見合わせて小さく乾杯をした。
各々飲んだり食べたりしていると、長島がその場から立ち上がり、屋上のフェンスへ行きそこから見える校庭を眺めた。そんな長島を琴子が見ていると、ふと琴子のほうへ向いた長島と目が合った。長島が琴子に向かってコッチコッチと手を動かしたので琴子は立ち上がり長島のそばへと行った。
「山田琴子さん。ありがとうございました」
「いえいえ! 部長こそあの横断幕、いつの間に作ってたんですか?」
「あれ実は立花先生がくれたの。結構心配してくれててさ」
「そうだったんですか?!」
「うん。立花先生は実は俺が一年の頃からお世話になってる人でさ。俺の事件があったあと、俺がまたちゃんと学校に戻って来れるように色々助けてもらったんだ」
「へぇーやる気ない先生だと思ってました」
「うん。それにしても、山田さんも変わったよね。最初部室の前で会ったときは死んだ目してたのに」
「は?!そんな目してましたか私!」
「してたしてた。岡崎先輩も長島2号がきたよなんて言ってた」
「ひどい」
「ハハッ、でも今は全然変わったもんね。良かったよ」
二人は顔を見合わせて笑った。
「山田琴子さん」
「はい。てか、なんで部長いつも呼ぶときフルネームなんですか」
「前にも言ったじゃん。好きな名前なんだって」
「あぁ~」
「名前も好きだけど、山田琴子さん自身も好きです」
琴子はまばたきしながら長島を見た。
「山田琴子さんがそばにいてくれたら、死ななくていいかなって思える」
「そっ、そんな重大な役目!」
「ごめんごめん、でもこれでちょーっとは俺のこと意識してくれたら嬉しいな」
琴子は眩暈がした。と、そこへ池尻がやってきた。
「琴ちゃーん!! こっちきてもっと食べなよー!」
「あ、はい。あ、でもちょっとトイレ行ってきます」
琴子はその場から逃げ、ひとまずトイレへと退却した。トイレの手洗い場で、いったい今日はなんて日なんだと一人ため息をついた。考えてばかりいてもしょうがない、先輩達にはそれぞれ今はそういうことには興味がないのだとちゃんと伝えねばならないと、気合を入れた。
トイレを出たら、岡崎先輩が出迎えてくれていて琴子は壁に倒れこみかけた。
「おおっと大丈夫山田ちゃん」
「先輩?どうされたんでしょうか……」
「さっき、長島ちゃんと何か話してたの、告白されてなかった?」
「えっとどうしてそれを」
「わかるよ~! 君等より長く生きてるもんー! それよりさ、山田ちゃんが他の誰かのものになる前に、一番最初に俺と付き合ってくれない?」
「それって、血が欲しいって話ですよね? お断りします」
琴子は岡崎の横をすりぬけ屋上に戻って行くと背後から岡崎がついてくる。
「それもあるけど、俺あの日の山田ちゃんに心打たれちゃったんだよねー。俺の一番最初のコレクションも山田ちゃんがいいんだよー」
「ちょっと意味が……」
琴子は屋上の扉に着き、扉に手をかけようとしたら岡崎に手を握られた。手を振りほどこうかと思ったら向こうの方から扉が開いた。松田がでてきてその様子を見て、屋上の扉を大きく開け「ぶちょ」と長島を呼ぶ動作をしたので岡崎はめんどくさいことになるなと思い、渋々琴子の手を離し先に屋上へと出て行った。最後に琴子にウィンクをして。身震いした琴子は松田に苦笑いして見せた。松田は少し琴子の顔を見つめたかと思うと、ポケットから封筒を取り出し琴子に手渡した。
「うん?」
松田はそのまま何も言わずその場から去って行った。トイレに向かったのだろうと予測し、琴子はもらった封筒を開けてみた。便箋に『山田琴子様 僕はあなたのことが好きです』と書いてあるところまで読んで琴子は慌てて便箋を折りたたんで封筒にしまった。そしてポケットに入れると、深くうなだれた。
すると屋上のほうから池尻が琴子を呼ぶ声が聞こえる。
「琴ちゃーん!」
琴子は困ったように笑い、みんながいるほうへと行った。
琴子の高校生活は、まだまだこれからである--。
これで完結となります。
元は脚本で書いたもので、設定も社会人から高校生へと変えて初小説となりました。
(その脚本も箸にも棒にも引っかからない作品です)
しかし小説がこんなに難しいものとは。もっと勉強と修行をしなければいけないと思うのですが、メモ帳にしてもワードにしてもブログにしても新人賞応募用に書こうと思ったものにしても、自分の中にしか存在しない作品ってなかなか最後まで書ききれず、絶対途中で「なんだこの糞、やめ! やめ!」となって終わってしまうので、ちょっとでも人目につくところに投稿すれば、最後まで書けるんじゃないかという無謀な思いでなろうデビューいたしました。
読んでくれた方がいるのならば、最後まで書けたのはあなた様のおかげです。本当にお付き合いありがとうございました。少しでもうまく伝えたいことが表現できるように、精進致します。
2014.4.24 あきんど