【心の変化】4
研究室についた二人は、本を置き、椅子に腰かけた。セシルはまだ青い顔をしている。シルバはセシルの横につき、背中をさすった。
「ありがとう、シルバ」
「で?何を言われた?」
セシルは一つ息を吐くと、話し始めた。
「……この二カ月くらい、魔術作成の成果がないんだ。転移の魔術に時間がかかってるから。で、政府の方針で……その、僕自身を研究対象にしたプロジェクトが動いてるって……」
「セシルを研究……」
それはクライヴにもイアンにも言われていたことだ。セシルを研究し、魔術を作る能力を他の人間へ転写し魔術の発展をさせる計画。残酷だといわれている魔人ですら、そんなことはしないだろう。しかし、現状、されようとしている。
シルバは手を握りしめていた。
(クライヴの調整がうまくいかなかったのか)
背中をさする手がとまると同時に、セシルは何かを覚悟したように、一つの紙束を渡してきた。レポート用紙のようだ。シルバが手を取り、内容を確認する前に、セシルが内容を説明し始める。
「……こうなることは分かってたんだ。どこかで魔術を作るのにも限界がくる。そうなったとき、シルバに影響がないように、転移魔術と同時並行で作っていた魔術がある」
「『契約の解除』?」
「シルバと僕の間には魔力で形成されたつながりがある。これを魔術で切断する。そうすれば、僕になにがあってもシルバは逃げられる」
「ふざけるな!!」
シルバはレポート用紙を床に投げつける。
「我はセシルの使い魔なのだ。最後まで一緒であるに決まっておろう!第一、イアンとやらの研究に付き合ってやる必要はない!」
「うん、でも保険で……」
「駄目だ!例えセシルが我らの間の契約を解くというのならば、我がセシルを使い魔にする!いいか?とにかく、我はお前と離れぬ!」
「……うん、ありがとうね?」
力なく笑ったセシルの顔を見て、シルバは何とも言えない気持ちになる。守らなければならない。数か月の主従関係は関係ない。シルバがセシルを守りたいと感じたのだ。
シルバはなにか方策がないか、そう考えながら、セシルの手を引き、家に帰るのだった。




