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【共同生活】3
「う、うまそう」
セシルが風呂から上がると、テーブルには料理が並んでいた。スープにサラダ、肉を何かで煮込んだものにパン。いつも弁当を食べていたセシルにとっては、何十年ぶりの、ちゃんとした食事だった。
「ほら、席につけ。食べるぞ」
「う、うん」
そう言われ、席につく。手を合わせ「いただきます」と言い、スープを飲んだ。
「おいしい」
「うむ!当然である!」
相変わらずシルバは上から目線ではあるが、おいしいのは事実だった。セシルは少しずつ料理を食べ始める。
「……今日は驚くことばかりだよ。召喚術つかったら魔王が使い魔になって、二十年分の給与が銀行に振り込まれて、家まであって、魔王がつくった料理を食べて……しかも美味しい……」
「これが日常になるのだ。慣れろ」
「シルバは器用なんだね。おいしいよ、作ってくれてありがとう」
セシルが柔らかく笑った。シルバはそれを見て笑う。その笑いは自信に満ちた魔王の笑みではなく、穏やかなシルバ自身の笑みだった。




