【共同生活】2
「おお」
思わず感嘆の声が漏れる。家の中は思っていたより広かった。二階がない代わりに天井が高く閉塞感がない。ただ、コケが覆っていただけあって、ひんやりとした湿気がある。
「ここが風呂、ここがトイレ、キッチンはここで、リビングと寝室がある。家具は勝手に我が買った。金はお前の給料から出した。まあ、使い魔なのだから許せ」
「二人で住むには、すこし広いかな?」
「お前の研究室に比べたら、広いだろうな」
シルバは笑いながらキッチンへと引っ込む。気になってキッチンを覗いてみると、冷蔵庫から食材を取り出しているところだった。
「……なにしてるの、シルバ?」
「夕飯を作るのだ。当たり前であろう?」
「え?シルバが作るの?」
「当然、使い魔の使命である……といいたいが、自分が食べたいものを作るだけだ」
シルバは、魔王だ。本当に料理などできるのだろうか、と料理ができないセシルは思う。魔王、というくらいだから、料理人が料理をしていたのだろうし、世話は使用人まかせだったであろう。セシルですら、用務員の人が弁当を持ってきてくれていたのだ。
「シルバ、料理なんてできるの?」
「我をなんだと思っている?魔王だぞ。魔王に不可能はない」
「いや、だって魔王のときは料理なんてしてなかったでしょ?」
その質問を答える前に、シルバは包丁を取り出し、綺麗に食材を切っていく。シルバは料理をしながら口を開いた。
「我が魔王城は人手不足でな。魔王城には私しか住んでいなかった。だから料理も掃除も容易い。まあ、我ほどの存在になると、なんでもできるのだ」
「掃除って、魔王城全部を?広くない?」
「広かった。だから、不要な部分を削って小さい魔王城にした。小さい方が扱いやすいからな」
そういえば、勇者アレックスが「魔王城、小さかった」と魔術棟でつぶやいたのを聞いたことがある。あれは、そういうことだったのか。
「それより、今のうちに風呂に入れ。もう沸かしておいた」
「え?いや、昨日、入ったし……」
「毎日入れ!」
「は、はい!」
シルバの圧力に負け、セシルは風呂に向かう。それはまるで、奥さんに怒られる旦那のような状態だった。




