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【WEB版】ナナイロ雷術師の英雄譚―すべてを失った俺、雷魔術を極めて最強へと至るー【コミカライズ】  作者: 日之影ソラ
第二部

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58.未来の自分

 夢幻結界。

 師匠がもつ権能をベースに、特殊な術式を組み込んで生成した空間。

 その中に入った者は、己の起源を基にした自分自身と戦うことになる。

 一度始めると、決着がつくまで出られない。

 外と中との時間にはずれがあり、空間内での一日は、現実世界での三時間に相当する。

 また、中に入っている間は睡眠や食事を必要としない。


「説明は以上だ。そろそろ始めるよ」

「はい」


 師匠は杖を両手で握り、地面をコンコンと二回たたく。

 すると、水面に広がる波紋のように、白い光が周囲へ広がっていく。

 闘技場の範囲の手前で止まり、綺麗な正円を描いている。


「準備はこれでよし。あとは僕が領域内から出れば、その瞬間から修行スタートだ」

「わかりました」


 俺がそう言うと、師匠は頷いて円の外へと歩いていく。


「悪魔の侵攻まで時間がない。なるべく早めに終わらせて戻ってくることを期待するよ」

「はい。頑張ります」

「うん。じゃあ――」


 三、二、一歩。

 師匠の足が円から離れた。

 その瞬間、円を囲っていた白い線が光を放ち、ドーム状にぐるっと覆う。

 最後に見えた師匠の口が、頑張れと言っていた。


 真っ白な空間。

 自分以外には何もない。

 ただ白くて、果てしなくて、どこが前か後ろなのかもわからなくなりそうだ。

 以前から修行で使っている空間は、大空の上にいくつもの島が浮かんでいた。

 あそこも異質だったけど、今回はもっとだ。

 確かに違う。


「ん?」


 胸がざわつき、視線を下げる。

 すると、起源があるという右胸が淡く光を放っていた。

 その光は胸から溢れて、まっすぐ前を照らす。

 光は壁のような何かにぶつかって広がり、黒く染まっていく。

 人……いや、俺だ。

 黒く染まったそれは、まるで俺の影のように形を成していく。

 そうして出来上がった黒い人が、未来の自分であると――


「っ!?」


 気付くのに時間はかからなかった。

 

 刹那、黒人影が視界から消えた。

 次に見つけた時、黒い影は自分の目の前にいて、左手が俺の身体に触れていた。

 放たれる赤い稲妻。

 俺は既の所で蒼雷を発動させ、辛うじて回避する。


「ぐっ……」


 すでに触れられていたし、完全には躱せなかった。

 左脇腹からタラタラと血が流れる。

 致命傷ではないが、肌と肉を一部抉られてしまったようだ。

 このまま放置すると出血死する危険性がある。

 俺は傷口を押さえるように触れる。


橙雷(とうらい)


 オレンジ色の雷が、傷口にびりっと走る。

 色源雷術橙雷は、俺がもつ唯一の回復手段だ。

 細胞を強制的に活性化させ、自己治癒能力を向上させる。

 外傷であればすぐに治るが、その代償として負った傷の倍以上の痛みを感じる。


「っ……今のは……」


 あれが使ったのは赤雷だった。

 威力も攻撃範囲も桁違いだぞ。

 ほんの僅かでも対応が遅れていたら、今の一撃だけで死んでいた。

 これからはもっと集中して……


「何だ?」


 黒い影が右腕を上にあげている。

 視線の誘導、ではない。

 術式の発動を告げるモーションだと気づき、素早く上を向く。


「藍雷か!」


 天井に生成された無数の剣にぞっとする。

 その数はもはや数えることすら馬鹿だと思えるほど。

 黒い影が挙げた右腕をおろす。

 空中に留まっていた無数の剣が、雨のように降り注ぐ。


「赤雷!」


 俺は赤雷で迎撃を試みた。

 通常であれば、貫通力で勝る赤雷で弾き飛ばせる。

 しかし、相手の藍雷は真に迫った未来の攻撃。

 今の俺が繰り出す赤雷を、いともたやすく凌駕して、剣の雨は無慈悲に襲い掛かる。


「くっそ……」


 降り注ぐ雨は留まらない。

 俺は後方へ跳び避けようと試みる。

 それは油断ではなく、意識の隙間だ。

 逃げるようと重心が後ろへ傾いた瞬間をついて、黒影が懐に迫る。

 その右手には藍雷の一刀が握られていた。


「しまっ――」


 藍色の刃が俺の胸を斬り裂く。


「ぐふっ」


 蒼雷――反!


 青い稲妻を身体から放ち、黒い影を懐の外へ追いやる。

 二撃目を構えていたが、何とか一撃ですんだ。

 いや、これをすんだと捉えていいものか。

 

「はぁ……はぁ……強いなチクショウ」


 思わず笑えてくる。

 たった数十秒戦っただけでこの疲労感。

 正直に言えば、勝てるイメージが……全くわかなかった。

ブクマ、評価はモチベーション維持につながります。

少しでも【面白い】、【続きが読みたい】と思ったら、現時点でも良いので評価を頂けると嬉しいです。


☆☆☆☆☆⇒★★★★★


よろしくお願いします。

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