閑話⑥ エルとの出会い -後-
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「リンリン、リンリンねぇ~」
貰った資料に目を通したけど、彼についてわかったことは、恐ろしく強いということだけ。
仮面で顔を隠していて、基本的にソロで活動しているからか、その素顔を誰も見たことがないという。
リンリンという名前からは想像もできないけど、ドラゴンと普通に渡り合えるらしい。
「本当っすかね~」
まずは見つけることから。
と言っても、見つけるくらいは簡単だった。
彼がギルド会館に来ると、みんなが注目してヒソヒソ話を始める。
それに……
「目立つな~ あのへんな仮面」
ウサギの耳?
話を聞く限り男性のはずだけど、仮面はどちらかと言えば可愛い見た目をしている。
そういう趣味の持ち主なのかもしれない。
個人的にも興味が湧いて、彼の動向を探ることにした。
のだが……
どこから来ているのか特定しようと尾行しても、いつの間にか撒かれてしまう。
依頼を受けた後について行こうとしても、足が速すぎて追いつけない。
食事中なら仮面を外すかもしれない。
「いつ食事してるんすか……」
尾行している間は、一度も食事している姿を見せなかった。
もしかして気付かれている?
でも、今まで尾行に気付かれたことなんてないから、違うのだろうと思っていた。
そしてある日――
よし、よーし!
今日は追い付けたっすよ~
依頼を受けたリンリンの後を追い、森の深い所までやってきた。
薄暗くて不気味な森で、ここまで深く潜ったことは初めてだ。
普段なら危険だし絶対に近寄らない場所だけど、この時のエルは興奮気味で、注意力が散漫になっていたと思う。
「へ……」
がさがさという不穏な音。
振り向いた先には、見上げる程巨大なムカデの魔物がいた。
「う、うわああああああああああああ」
エルは思わず叫んで走り出した。
初めての魔物だったけど、一目見ただけでわかる。
逃げなければ殺されると。
でも、エルは甘く見ていた。
逃げ切れると思っていた。
先回りされて、目の前に再び現れる。
死を覚悟した瞬間――
「――ったく」
身体がふわっと軽くなって、宙に浮いたかと思った。
エルのことを誰かが抱きかかえて、ムカデの攻撃から守れてくれた。
「尾行していおいて、自分がピンチになってどうするんだ?」
「あ、あなたは……何で?」
「悲鳴が聞こえたからな。そりゃ助けに来るよ」
仮面にひびが入り、左半分が外れてしまう。
「あっ、しまったさっきか……直さないと」
初めて見た素顔は、エルが想像していたよりも若くて、格好良かった。
「その前に、しっかり掴まってて」
ムカデが恐ろしい速度で迫ってきている。
彼は冷静に右腕をかざし――
「赤雷」
赤い稲妻が走る。
その瞬間、エルの心にも電撃が走ったと思う。
運命だと思った。
これがエルと、お兄さんとの出会い。
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タイトルは――
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