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【WEB版】ナナイロ雷術師の英雄譚―すべてを失った俺、雷魔術を極めて最強へと至るー【コミカライズ】  作者: 日之影ソラ
第三部

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100.予言

 敵として剣を交えた相手に、無防備に手を差し伸べる。

 愚かな行為だ。

 しかし笑うことは出来ない。

 かつて俺も、同じことをした記憶がある。


 なぁスピカ。

 君の目に、あの時の俺はどう映っていたんだ?

 希望の光が差し込んだように見えていたのか?

 ちょうど今、目の前にいる彼のように。


「物好きだな、君も」

「そこは師匠譲りだと思いますよ」

「……わかった。敗者は勝者に従うのみ。君は俺に勝ったんだ。君が手伝えというのなら、俺はそれに従うよ」


 そう言って手を取る。

 夜空の星々が、よけいに眩しく見える。


 そこへ――


「いやー実に良い見世物だったよ」


 闇すら呑み込んでしまいそうなどす黒い声が聞こえる。

 振り向いた先には一人の男が立っていた。

 年は師匠と同じくらいだろう。

 外見はただの人間だが……


 悪魔だ。

 一目見なくても、声を聞いただけで悟った。

 今までに感じたことのない寒気が襲う。

 学校を襲った悪魔とは明らかに別格の魔力を持っている。

 下手をすれば師匠より……


「無様な姿だね。アリスト」

「アガリアレプト……」

「こいつが?」


 地獄の六柱、第三の柱――【司令官】アガリアレプト。

 師匠が前に話していた幹部の一人か。


「俺を殺しに来たんだな」

「その通りだよ。話が早くて助かるね。もっとも負けてしまうとは思わなかったけどね」

「……」

「まぁいいさ。二人ともたくさん暴れて疲れただろう? 今、楽にしてあげる」


 最初から悪魔の狙いは、ここで俺とアリストを殺すことだったか。

 悪魔と手を組んでいる時点で、そういう可能性も考えていたけど……


「リンテンス、まだ戦えるか?」

「少しなら。でも……」


 正直かなり厳しい。

 もう一度憑依装着を発動させても、もって数十秒が限界だ。

 幹部クラス相手に、今の状態では勝算が低い。


「考えても無駄だよ。今の君たちに、俺と戦える手はない。どちらも手は持っていたようだけど、さっきまでの茶番で使い切っただろう?」


 無間の女王のことを思い出す。

 あれはおそらく、悪魔と戦うために用意していたアリストの奥の手だったんだ。

 使いたくないと口にしていたのは、卑怯だからではなくて、この戦いを見越してか。

 かくいう俺も、憑依装着は使わないつもりでいた。


「リンテンス、逃げる体力くらいは残っているだろう?」

「何言ってるんです?」

「これは俺が招いた結果だ」

「だから一人で残るって言うつもりですか? 先に言っておきますけど却下です。そんなことしたら、俺は自分を許せなくなる」

「そんなに深く考える必要はない。どうせ二人とも死ぬ」


 アガリアレプトが迫る。


「安心したまえ。誰も死ぬことないからね」

「――この声は」

「師匠!?」

「アルフォース?」

 

 声は空から聞こえた。

 見たことのない所為物に乗った師匠は、空から華麗に登場して、俺たちの前に降り立つ。


「ほっと、どうやら間に合ったようだね」

「遅いですよ、師匠」

「いやーすまない。こんなに遠くで戦っているとは思わなかったんだ。文句はそこの黒い騎士に言ってくれ」

「アルフォース……」

「やぁアリスト。随分ボロボロだけど元気そうだね。もう吹っ切れたかい?」

「……お陰様でな」


 もしかして師匠は、彼の事情を知っていたのかな。

 まるで、こうなることがわかっていたような言い方だった。


「そうか。君がアルフォース・ギフトレンか」

「初めましてだね。隠し事を見破るのが得意な大悪魔さん。いかに君でも、僕の登場は予想外だったかな?」

「……いいや、だけど十分だ。もう準備終わった」

「準備?」

「ああ、世界をひっくり返す準備だ」


 アガリアレプトはニヤリと笑う。

 悪魔らしく、不気味で気持ち悪い笑みだ。


「何を企んでいる!」

「そう声を荒げないでくれ、リンテンス・エメロード。今すぐ何かが起こったりはしないよ。ただ遠くない未来で、この世界はひっくり返る。楽しみにしていると良い」


 そう言い残し、アガリアレプトの姿は消える。


「追っちゃだめだよ」

「追えませんよ」


 世界がひっくり返る……

 よくない何かが、また起ころうとしているのか。


「考えるのは後にしよう。今は無事だったことを喜ぼうじゃないか」

「そうですね。一旦戻りますか。シトネも心配して……あっ!」

「どうしたんだい?」

「そうだ忘れるところだった。アリストさん」

「何だ?」

「ちゃんとエルに謝ってくださいね。そこは許してませんから」

「ぅ……ああ、わかった」


 激闘を終え、悪魔との邂逅を経た。

 彼が残した言葉は、いずれ起こる災厄の予言だと……今はまだ知らない。

 

【作者からのお願い】

新作投稿しました!


タイトルは――


『通販で買った妖刀がガチだった ~試し斬りしたら空間が裂けて異世界に飛ばされた挙句、伝説の勇者だと勘違いされて困っています~』


ページ下部にもリンクを用意してありますので、ぜひぜひ読んでみてください!

リンクから飛べない場合は、以下のアドレスをコピーしてください。


https://ncode.syosetu.com/n9843iq/

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『通販で買った妖刀がガチだった ~試し斬りしたら空間が裂けて異世界に飛ばされた挙句、伝説の勇者だと勘違いされて困っています~』

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7/25発売です!
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