エピローグ
結婚式の夜のことは未だに思い出すと、恥ずかしいやらおかしいやらで、笑いが込み上げてくる。
さすがに声に出して笑うことはしないけれど、一人ニマニマしているものだから、ターニャからはかなり不審がられてしまうのよね。
初夜の知識だけはしっかりあった……というか、前世のせいでありすぎて、緊張と興奮でガチガチなんだかワクワクなんだかわからない状態だったんだもの。
しかもそんな変な状態の私にジュード様は遠慮なさって、「いつまでも待つから」なんてお優しいことをおっしゃってくださった。
それどころか別の部屋で寝ようとなさったぐらいで、必死に引き留めたわ。
だって待ちに待ったコトなのよ?
どんなに夢みたコトか……って、口には出せなかったけれど。
ただ、もう一つの――いえ、二つの大切なことを隠したままでは騙しているようで、打ち明けることにしたのよね。
聖王家の秘密については私のタイミングで話してもかまわないと、挙式後にお兄様から聞いていたから。
もちろんお父様から許可はいただいていると。
聖王家の秘密と私の力のことを話すと、ジュード様はとても驚いていらしたわ。
「本当にそんなことが……」
「信じられないかもしれませんが、本当なのです」
「い、いや、信じないわけではないんだ。そう考えれば納得できることばかりなのだから。それにしても私がオオカミというのは……」
「とってもかっこよくて、可愛いオオカミさんです」
「あ、ああ……ありがとう……」
オオカミに見えると言うと少しは怒るかな、なんて思っていたのに、照れながらお礼をおっしゃるなんて反則よね。
本当に可愛くて抱きしめたくなったのをぐっとこらえた私は偉いと思うわ。
だけどまだ告げなければいけないことがあった。
それは私の前世について。
「――この世界とは別の世界からやってきたなど、夢みたいな話だが今なら全て信じられる」
「気持ち悪くはありませんか?」
「いや、この奇跡に感謝しているよ。私は今のあなたが好きなのだから」
「ジュード様……」
こんな漫画のようなセリフを本当におっしゃってくださるなんて、私こそ夢を――長い夢を見ているのではないかと思うくらい。
嬉しすぎて今すぐ世界中に向けて叫びたかった。
だけどもう夜も更けてきたし、変な誤解をされても困るからと込み上げる興奮を抑えていた私は頑張ったわ。
それからたくさんのお話をした。
お父様たちの力のこと、私が見た黒い靄のこと、前世の世界について。
そしてカーテンの隙間から朝陽が差し込み始めて、夜が明けたことに気が付いたのよ。
要するに、私たちの初夜は夜通しで話をしただけ。
もう笑うしかないと思うわ。
ここにきてお預けを自らしてしまったんだから。
やっぱり初めてには色々と夢を持っていて、夜明けに急いでするものでもなくて。
そのままジュード様は執務に向かわれ、私は眠ることに。
結局、長年夢みた体験は三日目の夜。
それはもう……これ以上は秘密。
とにかく今は、三人の子どもにも恵まれて幸せに暮らしているんだから、人生何が起こるか死ぬまで――いえ、死んでからもわからないってこと。
今ももちろん黒い靄を纏わりつかせた人を見ることはある。
そのときは少しでも不安を軽くしてあげられればと、できるだけ傍で話を聞くようにしている。
でもこの力をくださった神様には大変申し訳ないのだけれど、世界中の黒い靄を取り除きたいとは思わない。
私はこのボラリア王国に、ジュード様の隣に、大切な子どもたちの傍にいたいから。
そして愛しているとこれからも何度も何度も伝えていくわ。
これにて『転生王女は世界を救いません!』は完結です。
皆様、最後までお付き合いくださり、ありがとうございました。(*´∀`*)ノ




