07
雷飛は中庭へと向かった。
月光に照らされた楊麗がそこにいた。
白い肌が月光によって青白く光り、輝く瞳が神秘的だ。
「雷飛…」
「楊麗…」
雷飛が楊麗の元に駆け寄った。
始めはあまり多くは語らなかった。
言葉を交わさずとも、互いの意志が通じる気がした。
二人はこんな気持ちは始めてで、不思議だった。
暫く見つめ合っていたが、二人は寄り添って月を眺めることにした。
「楊麗、見違えたよ」
始めに言葉を発したのは雷飛だった。
「ありがと」
楊麗が照れくさそうに言った。
実際、露出度の高い舞踏服を着ているため、雷飛の前だと余計に恥ずかしい。
「…雷飛も子供の時から見違えたよね」
雷飛が楊麗の方を向いた。
「なぜ?」
「だって、雷飛のご両親が死んで、一人で一生懸命畑仕事をしていた頃は軍の指揮をするなんて思ってなかったもん」
「はは、そうか」
雷飛もそんなことは当時思っていなかった。
「…ねぇ。この戦、負けたらどうなっちゃうかな?」
「負けたら…か」
雷飛が楊麗の顔をのぞくと、不安と寂しさが出ている。
無理はない。
これから戦が起こるのだ。
もし負けて賊が城に入ってきたとき、自分はどうなるのか。
もし負けて雷飛が死んでしまったら、誰を頼ればいいのか。
雷飛は楊麗にそんな不安が付きまとっていることを察した。
「…負けないさ。相手は大軍といえど賊は賊。つまり烏合の衆さ。それに…」
雷飛は楊麗の頭をなでた。
「悪い方に考えれば本当に悪いことが起きる。逆に良い方に考えれば良いことが起きる。最近教えたろ?」
「うん…。絶対に勝つ…よね?」
「絶対に勝つ。約束する。だから安心してくれ」
「約束だよ」
「ああ、約束だ」
この後、二人は同じ室内で一夜、雷飛にとって最初で最後になるかもしれない夜を過ごした。




