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「なっ…」
雷飛は楊麗の元に駆け寄った。
「何で来たんだ!ここは戦場なんだぞ!流れ矢が当たったらどうするつもりなんだ!」
普段見せない怒りの声は楊麗を泣き眼にさせただけでなく、そばにいた兵をも驚愕させた。
「だ、だって…雷飛だけ戦って私だけなんにも出来なくて…すごく悲しくて…」
半ベソをかきながら楊麗が言った。
「はぁ…。忘れたのか?必ず勝つって。だから家で待っててくれって」
雷飛は楊麗の頭を撫でた。
「それに、泣き虫の世話もしなくちゃならない」
雷飛は手をおろした。
「城壁の上はいくらか安全だからそこにいてくれ」
楊麗はコクリと頷き、城壁に登る階段へ走っていった。
そのとき、一閃の矢が城門をくぐった。
その矢は振り向いた雷飛の右肩に当たった。
「ぐはっ!」
雷飛はよろめいた。
衣服に赤いシミが広がる。
遅れて激痛が走る。
「雷飛!」
楊麗が登りかけていた階段を下り、雷飛に駆け寄ろうとした。
「来るな!」
楊麗はビクッとして止まった。
「来たら俺の二の舞になる…」
雷飛は矢を抜き、槍を杖にして城門に近づいていった。
そのとき、再び矢が雷飛の太股に当たった。
「がっ…」
雷飛はバランスを崩し、その場に倒れてしまった。
「雷飛殿!」
異変に気づいた周達が雷飛に駆け寄った。
「周達殿…私がケガをしたと全軍に回ったら勝てる戦も勝てなくなってしまう。もし、回ってしまったら雷飛は軽傷で命に別状はないと言って下さい」
雷飛は立ち上がろうとしたが、太股に矢が刺さっているため立つことが出来ない。
「承知した。兵達にそなたを城に運ばせよう」
雷飛は兵の肩を借りて馬に乗り、城に運ばれた。
それに楊麗もついて行った。
すぐに医者に治療して貰った。
治療と言っても傷口に薬を塗って包帯を巻き、漢方薬を飲むだけである。
「くっ…がぁっ」
傷口がさらに痛みだす。
熱も出てきた。
楊麗は雷飛の額に濡れた布をのせる。
「楊麗…」
「雷飛!?」
雷飛は何とか頭を動かして楊麗の方をみた。




