オマケ
※AI漫才。可愛いカリカ君のままでいてほしい人はブラウザバック推奨
船内に戻りエアロックをくぐった瞬間、カリカの顔からあどけなさが消える。
無邪気な愛嬌にきらめいていた青空の瞳は、すっと冷えて鉱石の硬さを宿した。いっさい無駄のない動作で歩き、持ち帰ったいくつかの義体の残骸を資材置き場に下ろしてから、モニタールームに移動する。
「だそうですよ、ディ。お婿さんは無理でも、とりあえず受け入れてもらえそうで良かったですね」
前置きなしに話しかけられ、モニター前の定位置からディが渋面で振り返った。
「帰着の挨拶ぐらいしてくれてもいいんじゃないか? 『カリカ』君」
「あなたが回収用フロートを探しもしないでモニターにへばりついていたことは把握しています。それよりあなたの挙動不審についてのフォローを褒めていただきたいところですが」
「はいはいありがとうございますー! 勝手に人の弱みを暴露してくれやがってまったく」
「最適解でしたので」
「わかってるよ、おまえが正しいってことは。あーもー知性体様には敵わないよなー」
天を仰いで嘆いたディに、義体の少年は表情を変えないまま小首を傾げた。
「船をあずかる私が状況の分析と判断においてあなた方に劣るとあらば一大事だということは、ご承知だと思っていましたが」
「もちろんご承知だよ! はあ……たまには僕にも『カリカ』モードで接してくれ……なくていい、今の無し。認識がバグる」
ディは呻いて顔を覆い、深いため息をついてから胡散臭げな視線を少年に向けた。
「おまえもすっかり演技が達者になったよな、オプティ。いや言うな、演技じゃなくてモードを切り替えてるだけってのはわかってるから」
ただの負け惜しみの皮肉ですー、などと自虐的にぼやいたディに、少年は薄く微笑を浮かべた。
「やることがなくて暇ですので、任務を与えていただけたことに感謝していますよ。戻って来たパーツでいくらか破損を修復できる見込みですが、離脱はまず不可能ですし、救助が来るまで待つしかないのは変わりません」
「あー、やっぱりかぁ。……っと、よし、三番フロートが使えるから、あれでまとめて回収しよう」
「了解です」
連れ立って倉庫へ向かいながら、ディはうんと伸びをした。
「いやはや、作業義体がほとんど全滅してるとわかった時は絶望しかけたけど、予備の調査義体を船とリンクさせたらこんなに役立つとはね。なんでも予備は大事だな」
「同意します。おかげで私も無為に助けを待つばかりでなく、生産的な知的活動をおこなえて退屈しません」
端的に言ってから短い間を置き、少年はいたって真面目に付け足した。
「知性体を退屈させると何をしでかすか予測不可能ですからね」
「……そんなに暇なら、冗談のスキルを磨けよ」
「笑えませんか」
「笑えないねぇ」
「なるほど、奥が深い」
ふむ、と真顔で感心した少年の頭を、ディは苦笑いでわしゃわしゃ撫でてやったのだった。
「まぁ、そっち方面の探究心は、ほどほどにな」
(終)
あんまり進展してませんが、これ以上続けると風呂敷が大きくなりすぎるので、ひとまずこれで完結設定に。
お付き合いありがとうございました。