漂流スタートってありなのかねぇ
『楽しかったですか?』
楽しかったよ。色んな思い出もある
『満足しましたか?』
満足だよ。でもやっぱり少しだけ寂しいかな。
『なら、もし…』
――ピピピッ…ピピピッ…ピピピッ…
「んぁ?…あー、もう起きる時間?」
モゾモゾとベッドの上で動きながらアラームを止めようと伸ばした手が空を切る。寝起きで、ぼんやりした頭は鉛のように重い。
「アラーム…どこだ……あ、止まった」
起き上がった事を確認したのかアラームは自動で止まった。未だ慣れないところに自分の不器用さを感じるが慣れていないのだからしょうがない。ベッドから立ち上がり、部屋に備え付けられている洗面台で軽くうがいをしてから、クローゼットから仕事着にしている服を取り出し着替え部屋を出る。
「定期チェックは異常無し、か。まぁ問題あっても困るけど」
廊下を歩きながら、端末に映ったチェックリストを確認する。特に不具合も無く順調と言って差し支えなかったが収支がマイナスなところが気になる。補給してないので当然なのだが、数値が減るのは精神衛生上良くない。それでもまだ一年以上持つ計算だから少しは安心してもいいかもしれない。
そんな事を考えながら目的の部屋に入る。入室に反応してライトが付く。誰もいないから省電力の為に消灯されていた様だ。ぼんやりと光るコンソールが、日常業務を粛々とこなしている事を知らせていた。
「メインシステム。状況報告」
『はい。異常はございません。艦長』
無機質な声が返ってくる。VUIによるリアルタイム応答だ。もっと自然な音声も出せるらしいが、あえてこういう音声にしているのは、システム音声なのを分かりやすくするため、とマニュアルに書いてあった。
「目標の恒星まで、残りどのくらい?」
『およそ49時間ほどです。加速しますか?』
「いや、良い。このまま何かあるまで近接しよう。大丈夫だろうけど緊急時はそのまま離脱だ」
『了解しました』
とりあえず、もう少しで着きそうな事が分かっただけありがたい。流石に恒星近くなら惑星か小惑星の1つでもあるだろうし、最悪採掘で燃料か氷の補給くらいはできるだろう。
「しっかし、今日で遭難何日目?」
『13日と18時間です』
「そろそろヤバいかなー、人為的な電波とか受け取ってないの?ビーコンとかあってもいい頃合なんだけどなー」
深宇宙に放り込まれてから約2週間。物資こそあるが、それでも少しでも文明の痕跡が見つからないと、文字通りの天文学的な博打をする羽目になる。恒星の重力から計算して星系外縁部にもう少しで着くから、文明レベル次第では、宇宙用の誘導ビーコンや電波の1つは有って然るべきだし。もっとも、少々気難しい相手なら、ビーコンの受信圏内に入った瞬間スクランブルも有りうるのが怖いところだが、これ以上考えない事にしておく。怖いから。
「まぁ、相手がなんであれ対話と補給出来るなら何でもいいけどねー。星図とか見せてくれたら御の字か?」
しかし、このままただ漂流している訳にもいかないから、腹を括った方が良さそうだ。
「んー、よし、少し怖いけど、ステルス状態解除。アクティブソナー付けて。惑星か人工物見つけられた最高なんだけど」
『了解しました。ステルスモード解除します』
観測用耐圧窓から見える景色が一瞬揺らぐ。ステルスが解除された際のシールドの偏向方向の変化による揺らぎだ。この艦のステルスモードはシールド技術の応用で、電磁波の放射量や反射の低減させるもので、偏向方向や出力を調整する事で、外から見た時に電磁波量が小惑星やデブリ程度になりステルス状態になる事ができる。宇宙を遭難し漂流してるからこそ、未知の敵性存在の発見率を下げるため、ステルスをしていた。だが、星系外縁部に近づいてる今、下手にステルスを維持するのも良くないだろうし、半分賭けだが、もし星系軍の様なものがあり、指揮官が理性的であるなら、漂流者を最低限基地に案内してくれるだろうから、ここから先は発見率が高い方が良い。多分。
『アクティブソナー起動します』
「あ、その前に一応救難ビーコン出しといて。流石に救難信号無しでアクティブソナーはハイリスクな気がする」
『救難ビーコン起動します。続いてソナー起動』
レーダーからポーンと音が鳴る。アクティブソナーの起動音だ。モニターに光点や帯が瞬く間に表示され周辺の状況を教える。
「とりあえず、これで目星くらいは付けられたから、あとは何事もなければ…」
と思った瞬間に、アラートが鳴る。この音はレーダー照射やロックオンをされた音。恐らくは懸念事項が当たったんだろうが
『そこの所属不明艦、応答せよ。こちら第27沿岸警備隊。貴艦の所属と航行目的を明らかにされたし。繰り返す。所属と航行目的を明らかにされたし』
と、まぁこうなるわな。所属不明艦がいきなりアクティブソナーとか度肝抜くにも程があるし。
「いやー、流石にまずったかね。アラート的に多分いつでも撃てる様にされてるっぽいのがなぁ…俺でも警戒するわ、こんなUNKNOWN」
さてどうするか。と言ってもやる事は一つだが信用して貰えるかは不明だ。上手くいく事を祈るしか無いし、上手くいかなければこのまま大人しく星屑となる他ない。
『応答せよ!貴艦の所属と目的は?!』
「はいはい、今答えますよっと………あーあー、こちらデネブ。艦長のミクマだ。最初に言い訳させてもらうが、先程のアクティブソナー、悪意は無かったんだ。この艦は現在ワープ事故により遭難している。MAPデータが無く現在地や周辺状況が不明だった為使用した。救難ビーコンを起動しているが、済まないがそちらの使っている物と同じ電波と同じ事を祈る。所属は…あー、無所属なんだ。フリーランスでね。」
我ながら実に怪しい言い訳だが、今はそれしか言うことが無いのでしょうがない。まぁ、向こうは信じる他無いだろうがね。
『ワープ事故?先日の重力異常はお前か?……では一先ず我々に追従してくれ。救難ビーコン確認した。コロニーへ案内する。その後保安検査を受けてもらうが構わないな?』
「了解した。これから我が艦は追従モードに移行する。案内頼んだ」
これで安心、とはいかないが、最低でも寄港は出来るだろう。それからの事はいくつか懸念事項はあるが、酷い事にはならないだろう。というよりこれ以上酷い事は数える程度しか無いし、いずれも低確率の筈。
「屋根と壁があるところで羽伸ばせたら良いんだけどなー、ホテル代くらいは調達出来ると思うけど、入港料いくらかな。相場が思ってる通りなら、そんな法外な料金じゃないよな。いずれにせよ向こう次第だけど」
はてさて、どうなる事やら。期待に胸が特におどるわけじゃないけど、それでも少し期待したくなる。初めての寄港だ。きっと想像以上で、想像通りになる。ならばせめて
「せいぜい楽しみますかねぇ、せっかくのこの機会を。人生は少しでも笑える事が多い方が得って先生も前に言ってたしな。」
こんにちは。読んでいただきありがとうございます。
自分が書いてみたい通り思いついたままに書いてますので拙筆ではございますが悪しからずご容赦いただけると幸いです。
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