出会い
馬車の中でリンは、窓の外を眺めている。
美しい自然の森を抜けた先に、白い壁が見えてきた。
「お嬢ちゃん、もうすぐ王都だぜ」
前方から、威勢のいい声が飛ぶ。
「あっ!ほんとだ…ありがとうございます」
リンはあの後、おなかが減って倒れていたところ、
この貴族の男性に拾われ、
馬車で王都まで送ってもらっている。
感謝してもしきれない。
そう思いながらお礼を言うと、
「おう!」
威勢のいい返事が返ってきた。
馬車はそのまま王都の奥へ進み、白い石造りの大屋敷へと着いた。
屋敷に到着すると、男は笑みを浮かべながら言った。
ここが俺の家だ!そう言って男はリンを手招く。
その屋敷の大きさにリンは目を疑った。
「ひろ…」
こんな立派なお屋敷見たことない。
リンが目を輝かせていると
「さて、わざわざここまで来たなら、少し力を見せてもらおうか」
「力…ですか?」
リンは首をかしげる。
「実は…王様から頼まれてな。魔法を教えられる人材がほしい、ってな」
男は言葉を続ける。
「王は以前から、強い魔法使いを求めていたんだ。だから俺は馬車で王国内を回って、適任者を探していた」
そういえばここに来る前、この男と一緒に魔物を倒したのだ。
中庭に出ると、訓練用の魔法標的や木の人形が並んでいる。
嬢ちゃんを拾ったのは、偶然だったが…
まるで戦い疲れた戦士のような目をしていた。
「まあ嬢ちゃんがいい目をしていた。そんだけだ」
男はそう言うと、屋敷の中庭へリンを案内した。そこには訓練用の魔法標的や木の人形が並んでいる。
「魔法使えるよな?」
リンはコクっと頷いた。
リンは深呼吸すると、魔法を展開する。
無詠唱で、魔力を集中させると光が集まり、
木の人形がまるで爆弾のように燃えて飛散した。
「ほう…」
男は目を見開く。剣を扱う手際も、魔法の精密さも普通ではない。
「これは…予想以上だ」
男が息を呑む。
「お嬢さんなら…王も喜ぶだろう」
リンは微笑んだ。
そして馬車で王宮に向かう途中、男はリンを王に推薦することを告げた。
あと、今の国の情勢についても少し教えてもらった。
どうやらこの国で反乱を起こそうとしている勢力があるらしい。
王はそれに気づき、娘に自衛の手段を持たせたいのだが、
娘は魔法を使おうとするとすぐ暴走してしまうらしく、
宮廷魔術師共では、誰が反乱分子かもわからないし、信用もできない。
そのため外部の魔法使いに助けを求めようとしていたのだった。
王宮に着けば、自然と面会が叶う段取りになっている。
リンは少し緊張しつつも、胸の奥にわくわくした期待を感じていた。
馬車は白い城壁を抜け、王宮の大きな門をくぐった。
守衛たちが整然と列を作り、リンたちの到着を迎える。
男は門番に声をかけ、リンの到着を告げた。
「王からの要望でな、こちらの嬢ちゃんと会わせたい」
門番は一瞥すると、静かに頷き、馬車を宮殿内部へ通した。
広大な中庭を抜け、豪華な大理石の廊下を進むと、扉の前で馬車は止まった。
「ここからは俺が外で待っている。頑張れよ」
男はリンの肩を軽く叩き、微笑んだ。リンは小さく頷き、扉を押して中へ入った。
扉の向こうには、威厳ある老人が椅子に座っていた。
「よく来たのう」
王は静かにリンを見つめる。
「そなたがダミアンの推薦の者か」
リンは頷く。
あの人ダミアンって言うんだ…
「そなたには魔法を教えてほしいのじゃ」
「もちろん儂ではなく、儂の娘にな」
リンは少し緊張しながらも、頭を下げた。
「推薦していただいた通り、私、精一杯務めます」
王は微笑むと、椅子から立ち上がり、廊下の奥から少女を呼んだ。
すらりとした体格で、剣を携えた少女――王女ライネスだった。
「娘よ、こちらの方に魔法を学ぶことを頼めるかもしれぬ」
王はライネスに向かって言った。
少女は少し不服そうに眉をひそめた。
「魔法…?剣の方が得意ですし、あまり自信がありませんわ」
王は優しく微笑む。
「ゆえに、魔法に長けた者に教えを乞うのだ。自衛の力として必要なことでもある」
リンはその言葉を聞き、心の中で小さく微笑んだ。教師に憧れていた自分の気持ちが、ここで活かせる――そんな予感がした。
王はさらに言葉を続ける。
「実は、近頃な。不可解な動きをしておる奴らがおる。国を守るためにも、そなたの力で王女に魔法を授けてほしい」
ライネスは少し驚き、リンを見上げる。
「…わ、わかりました。よろしくお願いします」
リンは静かに頷き、心の中で決意を固めた。
「私の知っていること、全部教えます」
こうしてリンは、
王宮での新しい生活――
王女の魔法教師としての役割――
を歩み始めることになった。




