それでも進み続ける
――触れた瞬間…
魔法陣が記録媒体に触れた瞬間。
音が消えた。
色が消えた。
感覚が消えた。
代わりに。
“流れ込んできた”。
――死。
――死。
――死。
――死。
――死。
濃密な死という概念そのもの。
「――――ぁ」
声にならない。
数えきれない“死”が。
記憶が。
歴史が。
脳を、焼く。
「いやっ」
拒絶する。
無理だ。
こんなの。
「………ぁ」
体が、壊れる。
骨が砕ける。
肉が裂ける。
意識が潰れる。
「死…ぬ……」
次の瞬間また目が覚める。
「……は?」
次の瞬間。
また、“流れ込む”。
「やめっ…」
壊れる。
耐えきれなくなって体が崩壊して死ぬ。
その痛みが体に焼き付いたように離れない。
痛みも冷めないうちにまた、
目が覚める。
そして死ぬ。
これの繰り返し。
繰り返す。
繰り返す。
繰り返す。
「あ…………ぁ…」」
歴史の重圧につぶされる
何度も。
何度も。
何度も。
何度でも、“生き返る”。
それは。
地獄の始まりだった。
壊れる。
再生。
壊れる。
再生。
それの繰り返しで
終わらない地獄。
記録媒体自身の、消滅したくないという修復機能が自動で働いているのだろうか。
痛みが重複し、自分と世界の体の境界線が分からなくなる。
「いやだいやだいやだいやだ」
叫んでも、止まらない。
死ぬほど苦しいのに。
死ねない。
あそこで出会ったみんなのためにも絶対に死ねない。
耐えろ
耐えろ
耐えろ
それが。
どれだけ続いたのか。
もう、分からない。
ついに。
リンは、“受け入れた”。
抵抗を、やめた。
流れ込むものを。
拒絶しなくなった。
もう自我が壊れてしまったのだろう。
「……ああ」
痛みは、消えない。
苦しみも、消えない。
でも。
“耐えられる”。
いや。
“処理できる”。
そして痛みが薄れていった。
目を開ける。
そこは、外だった。
「……ぁ」
初めて見る、空。
風が吹く。
匂いがある。
光が、自然にある。
目から水がこぼれた。
「……ぁ」
彼女は生きている。
それだけは、確かだった。




