十四年の思い出
最初は、光を維持することすらできなかっ た。
何度も消えるし。
そのたびに怒鳴られたけどね。
「消すなと言ったじゃろうが」
「無理だって!」
「無理ではない」
容赦がなかった。
投げ出したくなった日もある。
それでも。
(死にたくない)
その一心で、頑張った。
光を維持し、圧縮する。
それを放つ。
できなかったことが、できるようになった。
できるようになったことが、当たり前になる。
剣もそうだった。
「遅いな」
「今の避けたでしょ!?」
「避けただけじゃ意味がない」
何度も転ばされ。
何度も叩き込まれ。
魔物とも戦った。
最初は、立っているだけで精一杯だった。
やがて、逃げられるようになり。
いつの間にか。
――倒せるようになっていた。
そして。
「あれから、十四年か」
ぽつりと、呟く。
私は現実世界で数えるともう三十にもなる。
ただ、このダンジョンのおかげか歳をとっていなかった。
魔力の密度が濃いからだろうか。
はじめは戸惑ったものの、ここが異世界だ とすんなり抜け入れることもできた。
変わらない暗闇。
でも。
リンの周囲には、常に光があった。
意識せずとも維持されるそれは、もはや呼吸と同じ。
「遅いぞ、リン」
振り返るよりも先に。
剣が来る。
――弾く。
すさまじい金属音。
「今のは悪くない」
「でしょ?」
軽く笑う。
目の前には、かつて“見えもしなかった”剣がある。
今は、追える。やり合える。
「まだ遅いけどな」
「それ毎回言うよね」
魔法も同じだ。
詠唱なんて、もう必要ない。
考えるより先に、発動する。
光は武器になり。
盾になり、矢になり。
空間そのものを支配する力へと変わっていた。
私に魔法を教えてくれた大賢者ククロスは、次第に私のことを天才と呼ぶようになり、彼の様々な魔術的知識などを継承させてくれた。
私も魔法が好きになり、毎日のように新しい魔法を構想していた。
大賢者ククロスは、ダンジョン内に家を建てて生活しており、リンは何不自由なく魔法の鍛錬に集中できた。
キッチンまでも備わっており、シチューを 作ってあげた時には美味しすぎて泣きながら食べてたっけ。
大賢者ククロスの教えを受けたリンは、魔法だけで言えばククロスと同等かそれ以上かもしれない。
リンの魔法に対する適性が高かったか、神気ともいえる魔力が集まるこのダンジョンの最下層で、一から魔法を鍛錬したからか。
そのどちらともなのか。
今ではククロスの実験を手伝ったり、助言を与えたりしており、リンはククロスとは別の視点で魔法を研究するなどして、ククロスをその都度唸らせている。
「……ほんと、化け物になったのう」
ククロスが呟く。
「ひどくない?」
「褒めておるのじゃ」
魔王ドラゴとも、いまじゃ親友だ。
ドラゴとは何度も戦った。
ドラゴは小さくてかわいらしい見た目をしている。
しかし、手と尻尾だけはドラゴンのそれであり、魔王と言われれば納得はできる。
実戦の最初の頃は、ドラコの放つ覇気だけで倒れそうだったのだが、今では好敵手だ。
魔法と剣が成長したからか。だんだんドラゴと戦うことが楽しくなっており、今では一緒にダンジョンの中の魔物を倒しに行ったり、一緒に寝たりする仲だ。
一番仲がいいかもしれない。
昔は気性が荒かったらしく、大賢者ククロスは、ドラゴを倒すのに苦労したらしい。
今ではククロスもドラゴもすっかり仲良くなっているが。
「んっ危ない」
「ありがと」
「今の攻撃、全然ダメダメー」
「……うっさいわね。ドラゴ~」
そんな会話をしながら魔物を倒すことができるくらいには。
ほんと仲が良い。
とそんなわけで様々な記録された英雄たちに教えを受け、リンはいつの間にか一番強くなっていた。




