第7話13一度戦争が始まると、終わらせることは困難です
村長の声は、どこか遠い過去を思い返すように淡々としていた。しかし、その目の奥には、時が癒やしきれない深い後悔の色が滲んでいた。
ニックスは黙って耳を傾けた。窓の外では、静かな風が木々を揺らし、柔らかな陽光が村を穏やかに包み込んでいた。まるで、この村がかつて戦場だったことを忘れさせるかのように。
「炎の精霊たちは、誰も傷つけていなかった……」
村長の言葉が胸に響く。もしそうなら、なぜ彼らを追い出さなければならなかったのか?なぜ戦わなければならなかったのか?
「……つまり、これはただの征服戦争だった、ということですか?」
ニックスの問いは静かだったが、その声には怒りとも悲しみともつかぬ感情が混ざっていた。
村長は静かに目を閉じ、少し間を置いてから答えた。
「そうかもしれない。だが、その頃の私は、ただ命令に従っただけだった。兵士として、何の疑問も抱かずに。私たちは、正しいことをしていると信じていたんだ……」
その声には、わずかな震えがあった。
「だが、結局、私たちは村を奪い取った。炎の精霊たちは多くが死に、生き残った者たちも行き場を失い、森の奥へと姿を消した。そして、私たちはここに新しい村を作り、“夕暮れ村”と名付けた……」
村長はそこで言葉を切り、天井を見上げた。
「今でも思う……この村を占領した意味は、本当にあったのか?」




