第2話 04食べ物
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「ああ……ようやくこの世界の常識が少しわかってきたな。」
ニックスは心の中でそう呟き、安堵と共に新たな警戒心を抱いた。
(でも、これだけじゃ足りない。この世界で生き抜くためには、もっと深く知る必要がある……。)
彼は無意識のうちに視線を落とし、思考を巡らせる。
すると、目の前の少女がじっと彼を見つめ、少し眉をひそめた。
「……何を考えているの?」
突然の問いに、ニックスは軽く肩をすくめ、咄嗟に笑顔を作る。
「あ、いやいや、なんでもないよ。」
「ふん、やっぱり怪しい奴ね。」
少女は疑わしげな目を向けながらも、それ以上は追及せず、ため息をつく。
「まあいいわ、とりあえずご飯をあげる。」
彼女が差し出した食事を受け取ると、ニックスは興味深そうに中を覗き込んだ。
(見た感じ、元の世界のご飯とあまり変わらないな……)
そう思いながら、一口食べる。
「……うまい。」
口の中に広がる味は素朴ながらも風味豊かで、どこか懐かしさを感じさせた。
しかし、その穏やかなひとときは、少女の突然の問いによって破られた。
「一つ質問があるのだけど……あの剣は、どうやって手に入れたの?」
ニックスは手を止め、しばし考え込む。
「……実は俺にもよくわからないんだ。ただ、気がついたら手にあったってだけで。」
彼の言葉を聞き、少女はわずかに目を細める。
「やっぱりね……」
彼女は軽く頷くと、真剣な表情で言葉を続けた。
「あの剣はただの剣じゃないわ。あれは元素とエネルギーを合成してできたもので、この世界ではとても珍しいの。」
「へえ、そうなんだ。」
ニックスは驚いたように呟いた。
少女は小さく息をつき、説明を続ける。
「この世界の剣には二種類あるの。あなたのように元素から合成された剣と、鉄で鍛えられた普通の剣。そして、元素の剣には通常、微精霊が宿っているものよ。」
彼女はニックスの瞳をじっと見つめる。
「あなたの剣も例外じゃないはず。」
ニックスは苦笑した。
「うん、確かに。あの精霊も前に微精霊の話を少しだけしていたな……。」
「……また何か秘密を漏らした?」
少女の声が一段と鋭くなる。
彼女は両手を腰に当て、目を細めた。
「ねえ、あんた……まだ私に隠してることがあるんでしょ?」
部屋の空気が張り詰める。
ニックスは目を逸らしながら、頭を掻いた。
(……しまった。適当にごまかせるか?)
彼は苦笑しながら、少女の視線を正面から受け止めた。




