第2話 05私の名前は夢子です
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「いい加減にしてくれないか?」
ニックスは眉間にしわを寄せ、うんざりした様子でため息をついた。
「俺が疑うに値しないって、さっきから言ってるだろう。」
しかし、目の前の少女——夢子は、冷たく笑った。
「そういうことを言えば言うほど、余計に怪しいわね。」
彼女は肩をすくめ、踵を返す。
「まあいいわ。他にやることがあるから、また後でね。」
そう言い残し、立ち去ろうとした。
しかし、ふと何かを思い出したように足を止め、振り返る。
「ところで……私の名前を知ってる?」
突然の質問に、ニックスは一瞬戸惑ったが、すぐに首を横に振った。
「まだ知らないな。教えてくれるか?」
夢子は薄く微笑むと、ドアを開けた。
その瞬間、朝の陽光が差し込み、部屋の中を優しく照らし出す。
光のカーテンが揺らめき、その中で彼女の淡い青の瞳がきらめいた。
まるで澄んだ湖面に映る朝の空のように、美しく、幻想的な光景だった。
ニックスは思わず目を奪われる。
「覚えておきなさい。」
夢子は微笑みながら、少しだけ顎を上げた。
「私の名前は夢子よ。しっかり記憶に刻んでね。」
彼女の声が静かに響く。
ニックスは少し驚きながらも、ゆっくりとうなずいた。
「……ああ、それじゃまた後でな。」
夢子は満足げに頷くと、ゆっくりと扉を閉めた。
扉が閉まる直前、彼女はふと小声でつぶやいた。
「この男、火焔鳥を倒したってことは、少なくとも弱くはなさそうね……。」
朝の光に包まれた通路で、彼女は一人思案する。
「彼の行動や記憶が異世界人を示している以上、村の人たちに彼の素性を伝えて、信頼してもらえるか様子を見てみるしかないわね。」
その言葉は、ドアの向こう側には届かなかった。
なぜなら——
部屋の中のニックスは、その瞬間、再び奇妙な力に引き寄せられていたのだから。
——視界が歪む。
身体が引き裂かれるような感覚に襲われ、一瞬のうちに周囲の景色が消えていく。
(……またか……!)
目を開けると、そこには見覚えのある空間が広がっていた。
そして、目の前には——あの精霊が立っていた。




