66 EVENT《LS》4
「ううーん、疲れてるのかな?」
「沙耶ちゃーん。ねえ見て見て!」
ああーっ、本当は黙ってて沙耶ちゃんに当てて貰うつもりだったのに、つい嬉しすぎてお揃いのバッジをアピールしてしまった。
ミラの乙女作戦があ。
「あぁ、そういう事。お揃いだねミラ」
「うんっ沙耶ちゃん」
少し疲れたお顔で、よしよしされた。
幸せ〜。
はあ。来て良かった。
ミラは大満足です。
ミラは幸せだけど周りの人は怒ってる。これは質量保存の法則?
ごごご・・と会場が揺れた。
気付けば憎悪の渦に包まれている。
空気に色があるとしたら赤。
学園長がさっき酷いこと言ったから皆が怒ってるんだと思う。
地鳴りのように揺れる怒りにミラが恐怖で震えると沙耶王子さまがさり気なく抱きしめて守ってくれた。沙耶ちゃんっ大好き。
「フッザケンナ!」
「ソードリアン。許されんぞ!ここは神聖な代理戦争の場だ、それを汚した責任を持って、今この場で学園長を辞任しろっ」
「そうだっそうだっ!!」
「辞めろっ」
「辞めろー辞めろー」
「辞めろー辞めろー辞めろー」
「辞めろー辞めろー辞めろー辞めろー」
コールが最大になった所で学園長がゆっくりと人差し指を高らかに上げて天を指した。見上げると獰猛に笑ってる。
「1万点。・・・全員に1万点だ!」
謎の言葉にブーイングが静かになった。学園長の続く言葉を聞き逃さまいと一転して静かに何を言うかと待っている。
「条件はミラ様に一撃入れる事。たったそれだけでいい。もし出来たヤツがいたなら試合の結果いかんに関わらず1万点のボーナスを俺のポケットマネーからくれてやろう」
ざわざわと
怒りの赤から、戸惑いと期待の黄色に空気が変わった。
眼鏡のインテリ魔導師の神経質そうな男が手を上げた。
「学園長お聞きします。20万点。つまりは、先着20名という事でよろしいか?」
学園長が心底バカにしたような表情で魔法使いを見下した。
「うはは、出来るならやってみろ。楽しみだぜえ」
「は、破産させてやるからな」
ビビーーーッ!
けたたましい音が鳴るとファーストの声が響く。
『聞きなさい、愚かなる者達よ!!!』
なんでか知らないけど、ファーストが割り込んできた。
『一文字・ミラ・クル・オーバーテクノは、私の孫。負ける理由など有り得ません!私からも一撃入れられたのなら10万点のボーナスを差しあげましょう。無制限で!』
ドオオオ・・・と会場が揺れる。
確変決定!
なんだか無茶苦茶な事を言い出した。
胴元が保証したため、天井知らずにポイントが吹き出てくるからだ。
こーして、ミラは皆の注目を一斉に浴びる事となってしまった。
なんだか皆の期待が重いかも?
ミラは遊びにきただけなのに。
『時間です』
学園長の姿が消えた。
いよいよ、大会が始まるみたいだ。
沙耶ちゃんがキリリと顔を引き締めた。
『これより、EVENT《LS》を行います。文句がある者は私の孫に一撃入れてみなさい。最後まで立ち上がり栄光を掴みなさい。私に武力を見せなさい』
『ラストスタンド。始めっー』
ビーーーッッッ!!
大会史上最大の金額が動くかもしれない幕を開けた。
最後に笑うのは誰なのか。




