63 EVENT《LS》1
EVENT LS
今朝の沙耶ちゃんは燃えている。いつも以上に凛々しい気がする。
「行くよっ!」
「はーい」
「我ら一文字はぁ?」
「世界最強!!」
沙耶ちゃんとハイタッチを決めて、元気よく出発っ。
沙耶ちゃんの最強伝説が始まった。
うへへ。
会場に着くと外からのお客さんが多く集まっていた。むうう。全然、入口まで近づけないよう。
レムに肩車してもらう。じいちゃん発見っ!手をぶんぶん振る。
「楽しみだあ」
「少し緊張してるけど、ミラには格好良い所を見せないとね」
「うんっミラは沙耶ちゃんを応援してます」
沙耶ちゃんのファンが増えるといいな。おっ来た来た。じいちゃん達と合流。
「「おはよう」」
「鉄斎様。昨日は、ご馳走さまでした」
「美味しかった!」
「そうかい、そうかい。はぁー」
じいちゃんはため息をつきながらチラリと沙耶ちゃんを見た。
「美味しかったですッ」
「はて?雨でも降らんとええがの」
じいちゃんがからかうと沙耶ちゃんはぷいっと横を向いた。おおー緊張が解れてる。いつもの沙耶ちゃんだ。
「斬鉄さま、私も食べたかったですぅ」
「ええと、君は?」
あれ?怖い顔の父が困ってる。
「貴女のノノンですよ?」
「最近の子は、冗談が凄いな。ははは」
ノノン凄いな。
彼女は、ミラより欲望に忠実に生きてる気がする。
『大変永らくお待たせしました。これより、EVENT開門でーす』
ぞろぞろと列が動き出した。
スパンと沙耶ちゃんがノノンを蹴った。
「あひぃ!何するですか?沙耶さん」
「ノノンいい加減にしないと埋めるよ」
「はい、ママは反省しますぅ」
「反省してないでしょ。てやっ」
「あふっ!」
あれだよね、さすがのミラも馬鹿につける薬は無いんだよね。むむむ。沙耶ちゃんも本気で怒ってないし放置なのかな。
「沙耶、しっかり見ているので後悔がないようにやりなさい」
「はい、お父上」
次々と、ゲートに吸い込まれていき、仮想空間へと消えていく。選手の沙耶ちゃんとはここで一端お別れだ。
「頑張って沙耶ちゃん」
「ふふふ、しっかり見ててねミラ」
見ます、見ます!
早く活躍が待ち遠しいよ。
ええとVIP席に移動っと。
円形の石のフィールドを囲むように観客席があった。その中でも豪華な椅子に座りお菓子と紅茶を楽しみながら、沙耶ちゃんの出番をじっと待つ。
『それでは、EVENTの出場者100名を紹介していきます』
1人ずつ選手が出てきて、大きなスクリーンに顔がドアップになる。
見習い戦士 ヘッポコ
変態忍者 グリーンマン
聖鎧 アーバン
・
・
「じいちゃん、なかなか沙耶ちゃんが出て来ないよ?」
「期待されとる選手ほど後だからの」
「それなら、一番最後だね!」
「初出場だからそれは分からんのう」
「ええー、もしそうなら見る目ないよ。ビー玉なの?」
「はははっその通りじゃ」
亡国の王子 ビオ
三日月刀 エルム
裸レスラー テッポー
不幸な狩人 レオンハルト
笑う殺し屋 ミスターX
「ねぇ。あの人、もふもふしてる」
「獣人か、奴らは馬鹿だが身体能力は優れておるからな。搦手を使わぬ沙耶とは相性が良くない」
猛る金虎 ライガ
「オオーン!」
壊し屋 バグ
二刀流バカ 二文字鋼牙
凡骨傭兵 ダグア
「沙耶ちゃんだ!うわーい」
「ふっ 大きくなりおって」
黒髪の乙女 一文字沙耶
「じいちゃん泣いてるの?」
「内緒じゃぞ」
こくりとミラは頷いた。良かったね、じいちゃん。他にも盛り上がってる一団がいた。
「レム、レム あそこに沙耶ちゃんの名前が書かれた大きな布を持ってる人達がいるよ」
「元竜槍、今は沙耶様の一番槍でしたか。なかなか素晴らしいアイデアですねマスター」
「うん。世紀の大発明だよ。槍の人、偉いっ!」
不動の重鎧 エルグレン
砂漠の巨人 サハラ
「最後の人、大きいよ」
「ふむ、巨人族か。まだ生き残りがおったとはな」
『それでは、予選は60分後です』
「えーすぐに始まらないの?」
「ふふふ、予選は唯一の集団戦だから、最有力候補がリンチにあって沈んだりする大番狂わせは良くあるのが、このEVENTの醍醐味よ。選手同士がこの60分で、心理戦や共闘や買収をするための時間になっとる」
「ほへー」
「次の試合は16個のサークルで一斉に戦うからサクサク進むでの。その次は8個。段々と、観客席が近くなるから臨場感はアップする。ゆえにダラダラ感は無い」
じーちゃんは物知りだ。
「え?でもそのルールだと、沙耶ちゃんピンチ?」
「その通り。沙耶は妙に潔癖だから心配よのう。下手すると予選は上位メンバー達にタコ殴りにされるから決勝戦より厳しい戦いになる。だから、今回ばかりは負けても優しくするつもりで来ておる」
皆の顔を見たけど同意見らしい。どいつもこいつもシケた顔してやがる。これは、ミラが言わないと。
「駄目っ!ミラは沙耶ちゃんを信じる」
皆の顔が驚きに変わり、攻撃的な笑顔に変わった。
「「はははっその通りだ!」」
皆の気持ちが一つになった。
談笑してたら、レムの耳がぴくんと動いた。
「マスター。沙耶様を発見しました」
「レム、ナイス!」
「何をやっておるんだ、沙耶よ」
「はぁー」
レムが嬉しそう照れ照れして、じいちゃん達はガッカリした。
ミラも少しガッカリ。
沙耶ちゃんは、特に裏工作をせず貴重な時間で槍の人を追いかけ回してポカポカ叩いてた。
あぁっ!沙耶ちゃんの応援幕が燃やされた。
恥ずかしがり屋の沙耶ちゃんのプロデュースは大変だぜ。次は燃えない布で作ってあげようかな。そうだ!それよりも、もっと良い事を思いついた。
ミラは沙耶ちゃんの素晴らしさをもっと皆に見せびらかしたい。
「あのね、レム。レム」
「マスターそれは素晴らしいです」
ミラは冴えてる?
うへへ。
【次回予告】
予選開始!
沙耶ちゃんの勝利を疑わないミラだけど、沙耶ちゃんはノーガード戦法。
そんなので、他の参戦者達に対抗出来るのか?