44 参戦表明
「素晴らしい悪魔的な飲み物『コーラ』を教えて頂き感謝にたえません。これは、5日後に、観戦に来る旧友達への自慢の種が増えました。今から楽しみです」
ニッコリと学園長が笑うと、沙耶ちゃんが微笑んだ。
学園長が何かを思い出したかのように、ポンと手を打つ。
「そうだ!ところで、沙耶さん。5日後に開催される《ラストスタンド》は参加されますか?」
「あの?申し込み期限は過ぎてませんでしたか」
「ふはは、私。ソードリアンは、これでも学園長でしてね。それは問題になりません。参加料1,000P(100万円)があるなら、ここは賭けるべきです」
「その話、詳しく聞かせてくださいッ」
EVENT 《ラストスタンド》
1位 32,000P(優勝賞金3,200万)
2位 16,000P
3位 8,000P
4位 4,000P
5位 2,000P
6位 1,000P
参加料 1,000P(100万円)
観戦料 5万円〜500万円
「あー、それではルールの説明を頼む」
学園長が指示すると、後ろに控えていた美人秘書さんがコクリと頷き、フレームレスの眼鏡をかちゃりと上げた。
「5日後に開催される《ラストスタンド》は、文字通り最後まで立っているものが勝者で、相手を戦闘不能にすればいいという分かりやすいルールです。
まずは、100名で乱戦を行い決勝に上がる32名に絞ります。
決勝戦に残れば、この時点で6位が確定するので、損はしません。そこから勝ち抜き戦となり1回勝つ度に賞金が2倍になり、5連勝すれば栄光の1位。
ペイアウトは112%。参加者有利で、不足分は観戦料から回収します。以上です。」
勝てば、倍々。なかなかにそそるルールだよね。沙耶ちゃんの大活躍が今から楽しみっ。
「沙耶ちゃんなら、とーぜん1位だよねっ」
「うーん。どうだろう? でも毎試合、最低3位以内にランクインし続けないと、一年で20万Pは厳しいって聞いたんですが?」
「そうですな。勝てない月もあるので、毎月約2万点は獲得しないとA級への道のりは遠いですぞ」
沙耶ちゃんの顔が曇る。むうう。学園長の分からずやー。ミラは、ぶんぶん手を振って怒りをアピール。
「もうっ。沙耶ちゃんが勝てない事なんて無いのに!」
「ふふふ、期待が重いね」
「しかし、ミラ様。EVENTの中には、フードファイター戦という沙耶さんには不利なものもあるのです」
学園長が困った顔で言い訳をしてきた。うーん。魔道具を使えば勝てるけど、沙耶ちゃんはズルしないからなぁ。ちかたない。
「むうう」
「へっ? そんなのまであるんですか?」
「まぁ、フードファイター戦は材料費が嵩むため、ペイアウト率が低いイロモノなので気にせずとも良いのですがね」
んんんと、考え込む沙耶ちゃん。
「他のお勧めの稼ぎ方はありますか?」
「ありませんな。毎朝ルーレットのポイントは生活費に消えるし。上位入賞者になると、決闘相手も逃げて成立しませんから、大会しか得点源は無いでしょう」
厳しい顔の学園長に、沙耶ちゃんは不敵に笑った。
「それなら、軽戦士に不利なルールもあるので勝てる時に勝たないといけませんね」
「ええ。このEVENTは、1位もしくは2位を狙って頂きたい。ん? 沙耶さんの現在のポイントは?」
秘書のメガネがキラリンと光った。
「11,334。入学3日で卒業資格C級プレート獲得圏内。これは、一文字ミラ学生を除くと、歴代レコード記録になります」
「なんと素晴らしい!ミラ様で忘れそうになりますが、沙耶さんも麒麟児ですな」
「えへへ。そんな事 ないです」
おおー、ナイス!学園長。照れ照れ沙耶ちゃんゲットだぜっ!
心のカメラを、ピロンピロンと押す。脳内フォルダへ保存保存と。
こっちに視線をくださーい。わあっ。見てくれた。
「そういえば、ミラは出ないの?」
「ふっふふ。ミラは沙耶ちゃんの大活躍を一瞬も見逃したくないので出ませんっ」
ふふん。どうよ?
今日のミラは冴えてる。
「それは、良かったのかな?まぁいいや。頑張るから、見ててね」
「はいっ!一生懸命応援します」
うっひょう!撫でられちゃった!?
うへへ。幸せ〜。
「ミラ様。当日は特等席をご用意しますぞ」
「ありがとう学園長。そうだ!じいちゃんも呼ばないと」
キリリと沙耶ちゃんが気を引き締めた。
はぁぁ格好良いよお。
「一文字沙耶は《ラストスタンド》に、参戦しますっ!」
一文字沙耶
11,334→10,334
A級 200,000
B級 50,000
C級 10,000 ←現在ここ
「沙耶ちゃん、格好良い!」
この時は、まだ誰も・・・あんな結末になろうとは予想していなかった。
魔王の悪戯なのか?はたまた女神降臨なのか?ともかく、最強剣士、一文字沙耶の語り継がれる伝説のEVENTの開始まで、あと5日。
【次回予告】
日常編を予定してます