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45 忍び寄る気配


 沙耶は7Fに新たに設置され《一文字》のクラン部屋で、一人。縫いぐるみに囲まれて蕩けていた。

 そんな感じで沙耶ちゃん視線へフォーカス。


「わあぁぁぁ、うふふふ」


 沙耶は幸せです。はああ、7F最高っ!

 縫いぐるみにほっぺたをすりすりする。肌触りが堪らない。

 5Fで自分の完成しかけた部屋が消えちゃった時はショックだったけど、7Fの部屋に入ったらもっと可愛いお部屋だった。それに素材がなんか違う。見ただけで高級な感じがする。

 アード学園に来てよかったよぉぉぉ。


 私は今ようやく自分のクランルームに入ってます。それも一人っきりで。

 ミラが忘れ物したって言うから見送って、しばらく待ってたんだけど、我慢できなくて、ついね。

 縫いぐるみの魔力に負けて、クールな普段の私からは考えられない誰にも見せられない痴態を晒しています。

 こんなの見せたら幻滅される。


 でも、この背徳感がまた良いスパイスになってる。

 入口に鳴り子を仕掛けたから、ミラ達が帰って来て、それがガラガラなるまでの間だけど、めっちゃくっちゃに可愛がってあげるからな。粒らな瞳のクマさんの縫いぐるみをもふもふする。


「うりうりうり〜。うはあ幸せ」


 ベッドに仰向けにダイブする。

 天井も可愛いんだよっ。7Fのセンスの人は、マジ神憑ってる。


「ここの所、ミラと、ずーっと一緒だったからな。楽しいけど、やっぱり一人の時間もいるよね。あぁーこのまま寝てしまおうか」


 幸せで気持ちが緩んでる時だった。


 !!

 なにか気配を感じた。


「誰ッッ?」


 素早く跳ね起きる。

 この部屋には誰もいないはずなのに。


 気配のあった場所へ駆けつけると、ガタガタっと壁の向こうで音がした。廊下だろうか?壁を観察する。不審な場所は無い。

 コンコンと叩いてみたが、のっぺりしていて隠し扉も近くには見当たらない。


 入口から誰か入った?

 いや、それは無い。私の仕掛けた鳴子は魔法の糸だ。なんの攻撃力も持たないが解除してもアラートが鳴る。一文字家の歴史で、この魔法が破られたという記述はない。


 でも何かあった。

 私は、直感を信仰している。これを疑うと自分の芯が揺らぐから。

 意識を集中。


 風の流れを読み取る。部屋の中にも僅かだが風の流れが存在している。隙間風というやつ。隠し扉があれば一発で分かる。どれだけ気密性が高く閉められていようと、舞い上がった埃の痕跡までは消せない。

 分かりやすく言えば、お昼に窓辺に座り、ぼんやりと部屋の中を見つめると、ふわふわと踊る埃が見えるでしょ。そういう感じ。


「血の匂い?・・・・これは、血痕?」


 風に混じる血の匂いを感じたため、辿ると絨毯に血痕が落ちていた。温かい。さっきまで誰か?いた?

 ここは、仮想決闘場の腹の中だから何かあるのかもしれない。

 何も無い天井を睨んだところで、ガラガラっと音が鳴った。


「ただいまー。ふひーっやっと見つかったよ」


 脳天気なミラが帰ってきた。まあミラさんがいれば危険は無いと思うんだけど。

 一応ね。


「ミラ、この部屋は危険かも? あれ、なんか顔が赤くない?大丈夫?」

「うへへ、沙耶ちゃんが心配してくれた。大丈夫だよ」


 問題は無いようだ。

 あー、終わっちゃったな。私のもふもふタイム。

 名残惜しげにクマ吉を見つめる。


「それで、ミラ。何を忘れたの?」

「ほへ?あ! カメラかな。一緒に写真撮ろう沙耶ちゃん」

「はいはい、撮ったら講習を受けに行くよ。試合まであと5日だし、強くならないと」

「了解でーす。早く行こう」


 行き先も分らない癖に、くいくいと引っ張ってくるミラ。


「写真はいいの?」

「訓練してる沙耶ちゃんを撮るんだ!」


 嬉しそうに笑う。

 まぁ、ミラがそれで満足なら、それでいいよ。

 なんだか隠し事してるようなミラを連れて、私は手始めにフルプレートを試し切りに行くことにした。




【おまけ 名探偵ミラ 】


 ミラが怪しいのはいつもの事だ。だけど、友人のピンチとあれば駆けつける。

 事件あるところに探偵有り、彼女は名探偵、ミラ!


「うへへ、呼ばれた気がしたので」


 沙耶ちゃんの身に何が起きたのか名探偵ミラが究明していこう。


「助手のレムです。裏話なので執事の服を来ています。む、胸が窮屈ですね。あっそんなことよりも。はい、探偵7つ道具を忘れてますよ、マスター」

「うん、ごくろう」


 レムから受け取ったのは、探偵道Number1 過去再現機(バックウォッチャー)だ。事件の起きた部屋でボタンを押せば推理の必要もなく見たいシーンが早戻しで朧げに見える。


「ここが、事件の起きた部屋です。マスター」

「うへへ。これで謎は全て分かった!事件の起きた時間をセットして、再生しよう」


 2時間ドラマの犯人を被疑者死亡から5分で特定するミラの魔道具。


 時間が戻った部屋には、朧気な立体映像が投影された。


「沙耶ちゃんが縫いぐるみと戯れてるよおお。ファンシー沙耶ちゃんだ。レム、ちゃんと沙耶ちゃんを見て事件は起きてるんだ」

「はああ、マスター格好良いです」


 レムは分かってない。

 はぁーっ。もっと他に見るべきものがあるでしょう。


「ミラじゃなくて沙耶ちゃんを見て!」

「マスター鼻血が・」


 レムは、朧げなミラをじっと見て心配していた。え?犯人が分かった?


「ふっ、感の良い子は嫌いだよ」

「またお会いしましょう」


 探偵道具Number2 自由通行鍵(マスターキー)を起動。これさえあれば壁抜けなんてお手の物だぜ。

 ミラ探偵とレム助手が退室しました。



【次回予告】


 試し切り

 フルプレートを〜

 斬るぞっ斬るぞっ斬るぞっ♫

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