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0.聖女の唄
ああ、なんて美しいのだろう。
幼い頃からその美しさに魂を握られてしまった。
命を奪うなんてとんでもない。この美しさは生きていてこそ輝くもの。
それでも世の中というものは、何故だかそんな当り前のことすら分からぬ愚か者ばかりであったのだ。
だから、私は囲いで覆った。
本当の価値も知らずに私利私欲のために喰い荒らそうとする醜いケダモノからその花を守るためだけの檻。
檻の中には常に何らかの花がいる。
けれど、どうしてだろう。何故、分かってくれないのだろう。
せっかく保護した花たちは、いつの間にか私の手を離れて危険な世界へと歩み出してしまうのだ。再会なんて夢のまた夢。生きているか、死んでいるのかさえも教えてくれない。
しかし、彼女は違った。
その名前はアマリリス。
私が養い育てた赤い花。