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0.悲しみの唄
悲しくて、悲しくて、何もかも思い出せない。
涙を流せば流すほど、大切なものまで流れていく。
私は何者であり、そして、何のために生きてきたのだったか。
それはとても大切で、尊いものであったはず。
しかし、あまりにも悲しみは溢れてくるものだから、その苦痛から私は逃れたい一心で涙を流し続けた。
そして、涙が流れれば流れるほど、悲しみは深まり続け、悪循環を生みだした。
分かっていた。
こうしていても、私は救われない。そして、私が恋しくて仕方のない誰かもまた救われはしないのだと。
悲しくて、悲しくて、何もかも思い出せない。
それでも、私の脳裏にはちらほらと名前が浮かび上がった。
その名前はアマリリス。
彼女だけが今の私に残り続ける希望の花。