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0.恐怖の唄
恐怖を招いたのは何者だっただろう。
思い出すのは呪われし赤色と、心より愛した強き伴侶の変わり果てた姿だけ。訪れないと信じていた未来がそこにあった。
恐怖を呼びこんだのは誰だっただろう。
運命を信じ、役目に従事し、大地を清めるべき存在であったはずの私たちなのに、どうしてこんな事になってしまったのか分からない。
死の穢れを聖域に振りまいた者。
愚かで哀れで嘆かわしい大罪人。
その鋭利な牙を私はどうしても思い出せない。
恐怖がもたらすのは悲鳴だけ。全てから逃れてしまいたいという渇望に呑まれ、畏怖する弱き私を神々は罰してもくれない。
そして、勇者は放たれた。
その名前はアマリリス。
古き勇者の心臓を継いで、ただただ前進するだけの、美しき赤い花。