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0.混沌の唄
わたしは誰だろう。
物心ついた時からとてつもなく大きな使命感に囚われ続け、そしてわたしはわたしという自我を失ったまま自由も許されずに大義の為に身を捧げた。
わたしは誰だろう。
受け取ってくれたのは大きな竜の女神。その優しげな眼差しは勿論の事、牙のぎっしり生えた口より漏れだす美しい声は、不安定なわたしの為のかけがえのない子守唄だった。
わたしは誰だろう。
平穏が崩され、約束されたはずの永久の絆までも悪は攫っていく。その罪の全てをたった一人の人間に押し付けて。
わたしは誰だろう。
誰であったとしても、わたしは知っている。
聖女の名はアマリリス。
混乱に囚われしわたしを、取り戻してくれるはずの赤い花。