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0.古の唄
わたしはどのくらいの記憶を重ねてきただろう。
過去という時が鮮やかなだけ、今という時の味気無さに驚かされる。
愛していた友を失ったあの時、自暴自棄に任せて魔女の性に呑まれていく自分自身を静かに噛みしめながら、私は青年を待っていた。
わたしの傍には人形。血の通った美しい少年であった事のある宝物。これを取り返すために、彼は罪を侵した。神々の裁きは逃れられない。どうして人は愚かなのだろう。
罪人を裁くために御使いは解き放たれた。
御使いの名はアマリリス。
彼女はきっと間に合いもしない。