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0.竜の唄
世界の均衡が崩れている。
その歪な音を聞きながら、私は恋人へと想いを寄せる。
再会したばかりという私情など、広がり過ぎたこの世界にとってみればどうだっていいことなのかもしれない。
罪人は破滅へと向かっていく。
我々を滅ぼした後は、裁かれるべきものの身代わりとなって、闇の奥底へと引きずり込まれていくのであろう。
もし真の悪が裁かれぬならば、我々はきっと二度と光を見ぬ事だろう。
希望の光はただ一つだけ。
滅びかけた赤い花が返り咲かぬかと期待するだけ。
その花の名はアマリリス。
勇敢なる者の血を継ぐ者。