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0.獣の唄
遠くで時代の悲鳴が生まれた。
私の感じ取ったささやかな印象を、無理にでも言葉に表してみれば、このようになることだろう。
少しずつ迫ってきている運命は、確かに私がかつて悟ったものだった。
悲鳴を生みだし、後悔もなにも持たずにこちらに向かってくるのは、罪深ささえも正しく認識できなくなった哀れな男と残酷な悪魔。
悪魔は全ての罪を男に着せ、空を喰い尽したその牙で、次は山を喰い尽くすことだろう。その報いは男に向かう。哀れな男だけに向かう。
だが、私は知っている。
男を救う者がいる。
その者の名はアマリリス。
神々が落とした種より生まれ育った赤い花の魔女。