3. 雪煙の中の襲撃者
爆発の余韻がまだ空気に残っている。あれだけの音……何かが気づいてもおかしくない。
「何か来るかもしれない。そいつを不意打ちで倒そう」
「分かりました」
「とりあえず隠れる場所は……」
チラッと爆心地を見ると、分厚い氷層が露出していた。
永久凍土では珍しくないがこの厚さは異様だ。
中に――人の腕が埋まっている。
「人の……腕です」
「……嫌な兆しだ」
かつてここで合戦があったとは聞いたがその残骸だろうか?
俺は確認するため近づこうとした。
バババババ……
地面が震え、五臓六腑に響く重低音が迫ってくる。
農業機械のようだが音の質が違う。
パールが必死に叫んでいるが音にかき消される。
諦めたのか指先を動かしながら、俺の頭をつかんで口元へ引っ張り叫んだ。
「あ”っち”!!!何か”い”ま”す”!!!!」
「だが何も……なんだあれは!」
姿は見えない。
だが轟音の周囲で雪煙が不自然に散り、そこに何かが潜んでいるのが分かる。
「パール!辺りを吹き飛ばせ!奴は何かで姿を隠してる。俺らも雪で隠れるぞ!」
「分かりました」
パールの魔法で地面一帯が爆散する。
これだけの雪煙があれば隠れるには好都合……そう思っていた。
「全部吹き飛ばされた!」
やつは魔術による浮遊ではない。
物凄い風によって浮いているんだ。
カタカタカタ……
ドドドドドドド!!!
直後に重低音が鳴り響く。
「熱い!」
頬に薬莢がかすめた。機関銃だ!
奴は本気で粉砕しに来ている。
「これは一体……」
「……考えるのはあとだ。あの大木をまとめて倒せ。押し潰すんだ」
「はい!」
目の前の幹が弾け、木々が連鎖的に倒れる。
巻き込まれたくはないのかやつの攻撃は止み、音が遠ざかっていく。
俺たちはその隙に木陰へ走りこめた。
「これからどうします?」
「別のところに行くまで隠れるしかねえよ」
あれだってずっと居座るほど暇じゃないだろ。
……だが何かが放たれた。
それらは枝の間を苦もなく滑り、時折ぴたりと止まる。
「小さい機械か?」
「あれで探す気ですね」
あの雪の撒き散らし方からして本体はかなりの大きさだ。
当然林は避けると思っていたが対策済みか。
だが小さいのなら小銃でも落とせる……当たれば。
「パール。あれを直接吹き飛ばせないか?」
「地面を爆発させる魔法なので浮いてるのには……」
「無理か」
ドドドド……という音が、まるで二つの心臓が競り合うように響く。
空気が震えて枝がしなり、雪は舞い上がり続ける。
だがどんどん俺たちから遠ざかっていく。
「あのうるさいのは見失ったようだ」
「でも小さいのは?」
「止まった瞬間に撃つ。それしかない」
動きが止まった時を狙う。じっくり探しているのか時々空中で静止している。
パン
放った銃弾は小さな機械に当たり撃ち落とした。
「……何だこれは。見たこともない造りだ。拾ってみる」
「得体が知れないのに勇気がありますね」
「知りたいことがある」
少しでも情報を仕入れておかないとここでは生き残るのは難しい。
あの機械は何なのか少しでも調べるべきだろう。
「今まで見たどの機械よりも精密だ」
「帝都でもここまでのはないですよ」
銃撃で空いた穴から見えるのは未知の物体だらけだ。
「裏を見てみるか」
裏を見ようと手を差し入れた瞬間――
バチン!
身体に閃光が走り視界が白く染まる。
意識が途切れた。




