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怪物があふれるようになった地球で生き残る、全てを見通せるようになったこの目を使って  作者: よぎそーと
3章

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43 生き残りの救助

 畳敷きの部屋の内外にいた30人は死に絶えた。

 その場にはそれなりの量の保存食もおかれていた。

 中にいた者達が独占していた物資だ。

 残り少なくなってるが、イツキだけが使うなら十分な量だ。

 30人の二ヶ月分の量がある。

 一人で食うだけならもっと長く引き延ばす事が出来る。



 その食料を持って別の部屋へと向かう。

 今すぐにこれらを食べさせねばならない者達がいるからだ。



 それらは外から鍵をかけられた部屋の中にいる。

 餓え死にさせるために閉じ込められた者達だ。

 そのほとんどは幼い男子ばかり。

 一番年長でも小学生である。

 食い扶持を渡すのはもったいないと、こうして隔離されていた。

 やがて死ぬその時まで。



 残念ながら既に事切れてる者もいる。

 生きてはいても、口を動かす元気もないほど衰弱した者も。

 それらはさすがに救えない。

 魔力や霊力を注ぎこんで体力を回復させればあるいは、というところだ。

 それでも回復の可能性は限りなく低い。

 やるだけ無駄というしかない状態に陥ってる者もいた。



 そんな者達の所に食料を持っていく。

 生き残りを回収するためだ。

 もちろん、全員を救うわけではない。

 あくまでも生かしておくべき価値のある者だけに食料を配っていく。



 閉じ込めらてた子供達は玉石混淆だった。

 いずれ怪物になりそうな者から、人としての己を保てる者まで。

 また、心根がまともな者も少ないが存在する。

 そういった者達を見極めて、そいつらだけを回復させていく。

 今後のために。



 中には衰弱著しく口を動かせない者もいるが。

 そういった者にはまず霊気を流しこんで体を回復させる。

 飢えで失った生命力をとりあえず補充する。

 それから保存食を食べられる状態にしていく。

 ほとんどが生でそのまま食べられるが、今の子供達に食べさせる事は難しい。

 衰弱してる胃腸が受け付けないからだ。

 生き残りも保存食も、まずは問題なく食べられる状態にしなければならない。



 棒状に固めた携帯食をお湯で溶かしていく。

 それだけの簡単なスープ。

 だが、消化吸収に優れており、必要な栄養を素早く取り込む事が出来る。

 生き残った子供達に一番必要なものだ。

 まだ味を楽しむほど回復してないのだから。



 もっとも、作るのには少しだけ手間がかかる。

 お湯で溶かすだけだが、時間がかかるのだ。

 最低でも10分は必要だという。

 それまで待たさねばならない。



 ただ、それほど手間はかからなかった。

 救った子供はたった2人。

 その分だけスープを作れば良いのだから。

 おかげで助かっている。

 だが、残念でもあった。



 閉じ込められていた子供は20人。

 この中で、性格や人格がまともな者は2人だけ。

 他はろくでなしばかりだった。

 これだけいて、たった2人しか救助対象ではない。

 あまりにもひどい結果に泣けてくる。



 なお、他の大人達はもう全滅していた。

 避難所の中で発生した怪物に殺されたり。

 外に出向いて帰らなかったり。

 辛うじて生きてる者も、やはりろくに何も食べられずに衰弱していた。

 おまけに、救う必要もないような人間性の持ち主だった。

 わざわざ助ける必要がない。

 むしろ、怪物にならないように処分していった。



(ここじゃ2人だけか)

 何百人もいた避難所で、救出すべき者はたったこれだけ。

 比率にしたら1パーセントにもならない。

 それでもイツキは貴重な人材を確保出来た事を喜ぶ事にした。

 今はまだ子供だが、やがて戦力になってくれるかもしれないと。



 そんな子供2人が食事を終えて元気を取り戻していく。

 それを見て、イツキは残った作業を進めていく。

「残った連中を始末してくる。

 お前らはここで待っててくれ」

 魔力というエネルギーと、携帯食スープで人心地ついた子供達は、キョトンとした顔をする。

 何を始末するというのか?

 顔でそう問い掛ける子供達に、イツキは正直にこたえる。



「まだ生きてる連中。

 このままだと怪物になっちまう。

 だから、そうなる前に片づけるんだ」

 そう聞いて何をするのかを察したようだ。

 子供達は「あー」と声を出さずに口を開けた。

 そして。



「なら、俺にも」

「やらせて」

 納得をした子供達はこんな事を言い出した。

 驚くイツキだが、すぐに理由を察する。

「やり返したいのか?」

 無言で頷く2人。

「そうか」

 そう言うとイツキは2人を促した。

「なら、遠慮無くやれ」



 それから避難所だった公民館の中で処分が始まっていく。

 まだ生きてる者には、子供達が刃物を突き刺していく。

「この野郎、この野郎!」

「ふざけんな、畜生!」

 怒声と罵声を衰弱した子供達にぶつけながら。

 よほど鬱憤が溜まっていたのだろう。



 それもそうだろうとイツキは思う。

 少しばかり覗いた二人の過去。

 そこで彼等らは衰弱している者達に暴行を受けていた。

 学校犯罪の被害者として。

 その時の恨みを、今少しでも晴らしたいのが伝わってくる。



 そんな2人を止める事もなく。

 イツキは気分が晴れるまで好きなようにやらせてやった。

 気持ちは痛いほどよく分かるからだ。



 復讐はしっかりやっておかないと後悔になる。

 それに、加害者を野放しにするわけにもいかない。

 野放しにすれば、どこかで新たな被害者が生まれるのだから。

 それに危害を加えた者がのうのうと生きてる事に何の利点があるのか?

 これが許されるならば、他人に暴行を加えて生きていく方がよっぽど得というものだ。

 そうはさせないためにも、復讐は報復はしっかりさせておいた方が良い。



 そんな子供達の横で、イツキは死体を破壊していった。

 ゾンビや怪物にならないように。

 出来れば消し炭にしてやりたいが、さすがにそれだけの火力を発生させるのは難しい。

 今は体の主要な部分を破壊して、簡単に取り憑けないようにするしかない。



 こうした処理が終わり。

 イツキは2人の新たな同行者と避難所を後にした。

 食料を回収して。



 その帰り道。

 子供達に尋ねる。

 自分達を虐げた連中の処分を終えてどんな気分なのかを。

「どうだすっきりしたか?」

「うん!」

「はい!」

 助手席に並んで座る2人の子供。

 彼等は晴れわたるような笑顔を見せた。

「そうか、良かったな」

 笑顔を取り戻した二人を見て、イツキも心をほころばせていった。




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