†第16章† -53話-[ストレス発散②]
【新約:特に呼ばれた記憶は無いが、異世界に来てサーセン。】
【異世界と混ざった現実世界でデスゲームとスキルライフを満喫する!~原生林に飲み込まれたキャンプ場からお送りします~】
【地球消滅ENDで死んだ私は、神様の異世界救済枠に選ばれたので故人の為にも頑張って生きていきますっ‼】
・上記3作品も投稿し始めました。よろしくおねがいします。
アルカンシェが展開している【氷銃追従核】四基が絶えず捻氷柱弾を発射し続け、その合間を縫うように【氷竜追従核】二基とアルカンシェ自身が魔力砲を放っている。
———弾幕、という戦法を一人で実行出来るアルカンシェの才と努力に肝が冷える。
水精アクアーリィから魔法式の仕様が流れ込み、知った宗八はげんなりしながら左腕を構えた。
「マジで良くやるわ……アルシェ天才過ぎない?」
『魔法制御に関しては、本当に凄いよぉ~♪』
宗八の賞賛の言葉にアクアーリィも同意する。
あのオプションは、自動射撃する”セントリーガン”ではない。
常に術者が魔力を注ぎ、斜度や速度を調整して魔法を発動する必要がある只の発射地点に過ぎないのだ。
いくら氷垢のステルシャトーの召喚魔法に対抗する為とはいえ、アルカンシェの才覚と執念には宗八も脱帽せざるを得ない。
水氷属性への抵抗力や凍結無効を考え、回避と左腕に装備されている青竜の蒼天籠手での受け止めを意識した動きを見せた瞬間———。
「あっれぇ~!?チャ~ンスって奴ですかぁ!?」
マリエルの声が背後から聞こえ、同時にバチバチっ!と特有の音が耳を叩く。
「ノイ……」
『(いや、貫通して来るから無理ですよ……)』
地精ノイティミルにようやっと求めた宗八の救援を彼女は一蹴した。
宗八の背後でアルカンシェの射線に入らない場所へ≪雷瞬≫したマリエルは、高濃度魔力を駆使した雷分身を複数作り上げていた。
「≪「《翠雷帝剛突連脚!≫」
神力で発動した魔法とは別格とはいえ、高濃度魔力を編みこんで発動した魔法の威力に流石の宗八も冷や汗を流す。
前門のアルカンシェ、後門のマリエル。
宗八という人間の戦闘力をしっかりと把握した上で、対処し切れないラインを見極め攻める彼女たちの戦略に宗八は遠慮なく力を解き放つ。
「≪神の心臓≫」
わずかでも精製出来た神力を用いて、宗八は呟く。
「≪———万有回避≫」
アルカンシェとマリエルの魔法は示し合わせたかの様に同時に宗八を攻め立てた。
しかし、衛星が星を廻るように———。
魔法が弧を描き宗八だけを避ける様に、自身の魔法に目を疑う二人と観客。
物質である捻氷柱弾も、魔力である青竜の蒼天咆哮も翠雷帝剛突連脚も。全てが等しく宗八を避けたのだ。
完全に挟み込む位置取りだった二人の魔法は宗八だけを避けた為、氷弾と魔力砲の向かう先にはマリエルが。雷分身の突喊先にはアルカンシェが居た。
「なっ!? ≪解除!≫」
「危なっ! ≪解除!≫」
両者とも射速の速い魔法だった為、互いの目前に魔法が迫った瞬間———。
魔法が解けて魔力が広範囲に霧散していく。
その光景がディスプレイいっぱいに広がり、観客たちは幻想的な映像に一瞬言葉を失い惚ける。
出来る限り長く続いてほしい、と願い皆の望みを砕く行動を取る者が一人。
「≪|火竜聖剣《イグナエル=エクスカリバー》≫」
弾幕が一掃された空間に、一筋の緋光が伸びた。
いや、七精剣カレイドハイリアハイリアに炎を纏わせた宗八が、アルカンシェに向けて飛び出したのだ。
「ポシェント!≪神の心臓!≫」
六基の追従核から繰り出される弾幕とスナイプは常に意識を割かなければならない。
それを嫌った宗八がアルカンシェを狙うのは必然だ。
「≪雷瞬!≫≪風神脚!≫」
アルカンシェが宗八の考えを察して下がった隙にマリエルが再び雷と化し差し込んだ。
両足に装備された天翔靴フリーダムハイリアに嵐の力が宿り、宗八を迎え撃つ。
「≪刻加速———≫」
中途半端な対応では、マリエルなら馬鹿みたいな反射神経だけで食らいついて来る可能性がある。
身体への負担も大きいが、宗八は模擬戦だろうと負担を考慮せず魔法を発動させ———マリエルが地面に斬り伏せられた。
「———ッカハ……ッ!」
マリエルが叩きつけられた衝撃は凄まじく、今までとは比べ物にならない地割れが広範囲に発生する。
当然、マリエルも相応のダメージを受け、肺から空気が全て強制的に吐き出された。
異次元の動きでマリエルを突破した宗八は、そのまま退いて行ったアルカンシェを追う。
「≪蜃煙幻象———≫」
ついでに足止め役をこの場に残した。
大きな煙が二つに分かれ、それぞれが人の形を取っていく。
いや、どこか見覚えのあるシルエットだが、何かが違った。
『お魚さんソード!』
『お姉さま、遊んでいる場合ではありませんよ?』
やがて二つの煙は、水精アクアーリィと闇精クーデルカの少し歳を重ねた姿を取った。
水精アクアーリィは、七精剣カレイドハイリアを構成する一本でもある水属性のハイリアを手に構え。
闇精クーデルカは、閻手が姿を変えた常闇ノ襟巻を装備して自身の身体の確認を行う。
「くっ!姫様……っ!」
立ち上がりながらも目の前の新魔法にマリエルは目を疑う。
観客たちの方でも宗八の動きに動揺が広がっていた……。
「今のはなんだ? カメラでも追い付かなかった様だが……」
火のヴリドエンデ王国のアルカイド王太子が傍に控える諜報侍女に問いかけた。
「今のは自身の時間を加速させる魔法です。マリエル様を高く評価した結果、加速度を最大値で発動されたのでしょう」
問うたのは、アルカイド王太子だけではない。
多くの者が今のカメラが追いつかない動きを見せた宗八の解説を希望した。
だが、現地のマリエルはそれどころではない。
反応は出来たのだ。だが、反応した瞬間には剣は振り抜かれ自分は地面に打ち込まれ大地は避けていた。
痛みに耐えながら自分の主を心配する一方で、目の前には甘く見る事の出来ない精霊の意思を持った幻像が立ちふさがる。
『パパの希望を叶えるために長女アクアーリィがマリエルの相手をつかまつる!』
『一撃でも喰らえば消える体です。能力差もあるので全力で妨害させていただきます』
宗八を手本に剣の腕を磨いた水精アクアーリィは、侮れない鋭さを持っており、サポート特化の闇精クーデルカが宣言通り全力で妨害すれば如何なマリエルと言えど厳しかった。
———それに。
「観客が居るからこそ、無視できないじゃないですかぁ~~~~!クソ隊長ッ!」
マリエルの怨嗟の声が響く頃、宗八はアルカンシェに追い付き近接戦を展開していた。
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