†第13章† -13話-[突入前の洗礼]
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「クラウディーナ!悪いが這い出て来る奴らの浄化を手伝ってくれ!トドメはこっちでやる!」
『いいでしょう!浄化ならば我が使命も同然!力を貸しましょう!』
近しいオベリスクは方々に散った仲間が砕いてくれているから俺たちが魔法を使うに邪魔は無い。
突喊していった叢風のメルケルスは状況を安定させてからでなければ追う訳にも行かない。
「瘴気は気にするな出た端から安全マージンを取りつつ片すぞっ‼」
「はい!」
「かしこまりました!」
「りょ~かい!」
「応ともさっ!」
残ったメンバーは突入確定の俺・アルシェ・メリー・マリエル・セーバーの五名のみ。
島とは言えそこまで広くも無く人数も居る事から時間はあまり掛からず彼らは戻って来るだろう。それまで一先ず抑えればさらに安定させることは可能だ。
浮遊瘴気精霊と瘴気精霊はクラウディーナが放つ光のブレスで吹き飛ばす為、肉体を残す寄生体とその他多数を俺たちは相手取る。
「ほっ!はっ!様子見がしたいけどこの量はっ!アルシェ!」
「流石に多すぎます!」
「「《水竜一閃‼》」」
這い出る敵は全てが瘴気を纏い全力で走ってくるから手前に居る奴らは斬り捨ててタイミングを合わせた一閃で斬ッ‼と一刀両断にする。これでも少なくとも三十体は消えたはずなのに後から続々と飛び出してくるのでキリがない。
「これが瘴気に侵された世界を相手にするって事!?
入口が一か所だからフォレストトーレに比べれば楽だけどずっと出てくるんですけどぉ‼」
「少々それぞれで間隔を空けて範囲攻撃を多めにすべきでしょうかっ!」
「いやいやっ!今は目の前の敵を倒す事しか考えられないって‼」
マリエルとメリーは数に圧倒されて今は戸惑ってしまっているけどすぐに持ち直せるだろう。
範囲攻撃も織り交ぜるのは当然だが、セーバーが魔法を用いて使用する武器は範囲が大きいのでそのカバーでマリエルとメリーが漏れを潰す事でこの場から誰も通さない様に動き回っている。ひとまずは現在は瘴気さえ纏って居なければ斬り伏せるに苦労はない奴らばかりだからこれで時間が稼げる。
まだ見ぬ上位の敵は身体が大きいからか全然姿を見せず戦い続ける中、一番に戻って来たのはゼノウとトワインだった。
「フォローする!」
「這い出たばかりの敵を対処します!」
「味方人数は増えていくんだ、息切れする程は不要だぞ!」
「「了解!」」
ゼノウが近接で、トワインが遠隔で敵を攻撃し始め多少息を吐けるようになり、その後も続々とオベリスクを砕き終わったメンバーが戻って来ては参戦していく。四十分程度とはいえ全力で戦った俺たちは殲滅力が増した事で一旦戦線から外れてローテーションを組んで向こうに入り込めるタイミングを狙う。
「クラウディーナ!浄化を交代するから少し休んでください!《星光よ煌やけ!星光天裂破‼》」
『ふぅ……これは大変ですね…』
魔力マシマシで狙いを定めて剣を振り下ろすと異界の入り口を中心に光の柱が降り注ぐ。
これで数分は浄化作業の肩代わりは出来るはずだ。
「どうしますかクラウディーナ。このまま退いてもらって構いませんよ。
この状況が何日続くかもわかりませんし」
『今日は付き合うと約束したではありませんか』
「頑固ですね。じゃああれが消えたらまたお願いします」
『任せてください』
その様なローテーションを三時間も続ければ敵の種類も増え始めた。
「宗八!なんか小動物っぽいのが混じり始めたぞ!」
「体長二m近いサイボーグリスの事だよなっ!?名称はメタルスクイールでいいだろ!」
瘴気精霊寄生体の数が少なくなって来たのでそろそろ突入出来そうかと思いきや、異世界の入り口を少し屈んでエントリーして来た小動物(一部機械化&巨大化)を見てセーバーが叫び俺もそれに呼応する形で少々ビビる。
手乗りから見上げるほどに大きくなった体長にほぼカンガルー並みの筋肉質な肉体。さらに野生動物らしいアクロバティックな動きで俺たちに飛びかかって来たサイボーグリスちゃんの攻撃は苛烈であった。
「ひとっ飛びで強襲して来るっ!うえに…っ!重い一撃!」
「姫様っ!っとこっちも来たし!うげぇ!地面陥没してるじゃん!」
俺たちに続きアルシェとマリエルもメタルスクイールと相対し驚愕している。強攻撃や防御は金属化した部分で行うし弱攻撃も混ぜて来るから小賢しくてウザイ。本来なら短いお手手で木の実などを掴んで一生懸命食べる姿が可愛らしいはずのリスがどうしてこうなっているのか……。
斬り捨てればその姿は瘴気となって消え去るものの明らかにフォレストトーレで戦った瘴気モンスターに比べると残る瘴気も気体とはいえ濃度が濃い。
入口はクラウディーナが処理してくれているけどこの島の空気に含まれる瘴気濃度が高くなっても困るから今のうちに片っ端から浄化すべきと判断した俺は[武器庫]からクラウソラスを予備出して地面へと深々と差し込みながら詠唱する。
「《来よ!クラウソラス!》《俺式サンクチュアリフィールド!》」
元の魔法は勇者メリオが使っていたのだが「いいなぁアレ」と思っていたのでパクリスペクトして造り出した魔法だが、起点として光属性の武器を中心点に差し込む事で武器に込められた魔力が続く限り俺の手から離れても起動し続けてくれる。
差し込む時に範囲の指定を行った為戦闘範囲は全て浄化効果を持つだろう。
流石に瘴気の鎧を剥ぐほどの威力は無いのでクラウディーナには継続して頑張っていただく必要はある。
「瘴気濃度が上がったと思ったら勘違いでも良いからすぐ報告しろよ!」
「かしこまりました」
リス以外にも巨大化&サイボーグ化した元小動物は続々とそのシリーズを増やしている。
今もメリーは返事をしながらネズミっぽい何かを倒して瘴気に還していた。ってかこうも大きいとハムスターだろうがモルモットだろうがどうでも良いよな。実際デカクなりゃ判別付かんって。
さらに倒しつつ実験を繰り返したところサイボーグ化した個体に[レイボルト]などの雷魔法を撃ち込むとステータスが大きく上昇することがわかった。
「流石は霹靂のナユタの世界の生き物?だな。雷には強いってか……」
「これがあちらの世界の野生生物なのでしょうか?」
「巨大化はともかく機械化なんて好き好んで進化するかなぁ……?」
「攻撃力や身体能力が上がっている事は理解していますけど機械化ってピンと来ないんですけどどういうものなんですか?」
この世界<アニマ>は電気で動く物が無いから機械って説明が難しいんだよな……。
アルシェは早くもメタルスクイール達に慣れたのかトドメを刺しながら俺に質問してくる余裕を見せている。
「井戸に設置しているポンプとかドアノブの中央部が細かい部品の組み合わせって知ってるか?」
「それはもちろん」
「そんな感じで細かい部品を組み上げて生身の腕とか足と交換すると鉄の攻撃力と防御力を手に出来る。
だから脳も交換すれば高速演算出来るし内臓を交換すればオイルだけで食事代が浮く」
「え~……。それって良い事なんですか? 私は生身が良いですね。武器や防具で補えるわけですし食事も生きる糧としてモチベーションには大事ですよ」
アルシェの言う通り人間はそれを補う術をいくらでも持っているんだがあちらの世界はそれを取り入れている様だ。
全身機械化タイプは見受けられないけど尻尾などは攻撃に利用できるように一様に機械化している。
「鉄の身体なら防具の重さも不要になるし殴って良し武器を持って良し、身体に飛び道具隠し放題で実際相手にすると厄介だと思うぞ」
「ではナユタの世界はきっと機械化文明が発展しているという事なんですね」
「サイボーグや隠し武器だけじゃなくてロボットとかも出てくるかもしれないな……」
「ロボット?」
「出てきたらコレだよって教えてあげるよ」
それはもう驚きを通り越して速攻で全力全開の攻撃に移行するくらいにはド迫力だろうよ。
もう数時間このまま敵を減らしていけばナユタの世界に突入出来そうかな? 入った後も安全マージンを取りながら実験をしつつ星のどこかにある世界樹を探すという途方もない作業が待ってるからなぁ…、どうしようかなぁ……。
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