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特に呼ばれた記憶は無いが、異世界に来てサーセン。  作者: 黄玉八重
閑話休題 -次に向けての準備期間-
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閑話休題 -88話-[フォレストトーレ鎮魂式③]

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『ただいまを持って御霊を視認できる魔法を停止致します。

 雨が止むまで少しの猶予はありますが目当ての方と出会えた方、出会えなかった方、語り終えない方に限らず会場まで早めにお戻りください』


 フリューネをソファにして子供たちと[Omegaの天泣]を維持していた俺たちの耳に魔法で王都全体に響くセリア先生のアナウンスが聞こえて瞑っていた目を開き周囲を軽く見回すと、すでに故人との対話を終え別れを済ませたフォレストトーレ民がちらほらと会場に戻っておりその全員が王都に向かって跪き残る被害者の御霊に祈りを捧げていた。


 今回の鎮魂式の参加者は一応フォレストトーレ領内の各町で周知を行ってもらい俺がゲートを設置済みの町や勇者メリオの訪れた事のある町に参加希望者を集めて連れて来た。総勢三万人に上る参加者のうち戻ってきているのは四割といったところか…。

 会場と言っても何もない原っぱに即席の舞台と来賓に座っていただく席を用意しただけで多くの参加者はこの辺りに集まってくださいねと会場内の案内役の仰せつかった各国の兵士諸君が声掛けなどを行っていた。


「時間になったみたいだし魔法は止めよう」

『あい!』

『かしこまりーですわー!』


 共鳴魔法(レゾナンス)特有の二人を包む魔法の膜が解除されウェザーコントロールも失われる。

 これで残る自然現象としての雨が止めば鎮魂式も締めとなるだろう。


『ぷはぁー!疲れましたわー……、お父様ぁ…撫でてくださいましー……』

『アクアはお膝一番席お願いしま~す』

「はいはい、頑張ったからね。おいで」

『『わぁーい!』』


 途端にボワンと兎のアニマル形態へ変化したニルが胸元に飛び込んでくるのを受け止め、アクアがドカッ!と俺のお膝元に深く座り込むのを抱きとめた。アクアのアニマル形態である龍は細いので撫で甲斐が無いけれど、ニルは頭からお尻まで撫でると毛並みも整っているから撫で甲斐がある。ニル自身も頭だけでなく全身を撫でてもらえるアニマル形態はお気に入りで甘える時は兎になる事も多い。


「相変わらず我関せずとマイペースだな、貴様は」

「……ちゃんと会って話せたんだ…な? おい、なんで連れて来てるんだっ!」

「父上の御霊は表情こそ穏やかになってもらえたが消え去る事はなく王城跡に残った。

 弟のアーノルドはこの王都や国の行く末が気になるのか立ち去ろうとした時から何故か付いてきてな…。二人とも早く成仏してもらえるように民の為、国の為に励もうと改めて思える良い思い出になった……」

「まぁ…ラフィートが良いならそりゃ良かったな」


 ご機嫌なアクアとニルだけでなく他の子どもたちもあやして王都へ向かった人々の帰りを待っているとラフィートが護衛を引き連れて帰って来た。影が差したところで顔を上げるとラフィートが目の前で腕を組み俺たちを見下ろして若干嫌味っぽい事を言ってきたが、その顔は駆け出した時に比べると晴れやかな表情に変わっていた。しかし、その背後に護衛とは明らかに違うラフィート似の半透明な不審者が居ては驚くのも仕方ないだろう?


 今は魔法の効果が効いているから見えていてもいずれは見えなくなるから別にいいのか?

 いや、どうせだからファウナには[Omegaの視界]の魔法式を伝えていつでも弟や先王と会えるようにしてやろう。普通は独り言の愚痴りでも誰にも告げ口せず口の堅い味方が居ると、この先辛い王族としての選択をしても耐えられるだろうしそれが血を分けた弟ってのもデカイだろう。


「締めの挨拶もやるんだろ? ……メリオ達、何かあった?」

「いや、俺が気にしても仕方ない事だが…。

 俺は弟が付いてくるようになってから残っていた城の勤めの顔見知りに声を掛けて成仏させていたのだが、メリオ達も近くでヒューゴとフェリシアに語り掛けていたがずっと二人は座り込んだままで何も反応を返さなかったのだ……」

「あー……、………」

「どうした。貴様が口を(あぐ)ねるとは」


 俺なら恐ろしくて絶対使わないクソ雑魚ナメクジだったから、なんでメリオ達がアレをすぐに切らなかったのか本当に意味が分からない。

 自分達の命を預けられない奴を連れ歩くって……あぁ!恐ろしいっ!

 死んで感謝される奴なんてロクなもんじゃないぞ。最悪、魂が現世に残ったとしても害を起こしそうだしニルと一緒に強制昇天の雷魔法を開発しておこうかな。


 なんて考えてたが流石に死人に鞭を打つには辛辣過ぎるかなと思い過ぎったから言葉に昇華出来なかった。

 ラフィートだって少しの間だろうけどクソ雑魚ウジムシ共と同行していたみたいだし、すでに居ない昔の仲間を悪く言われて良い気はしないだろう。


「…なんでもない」


 だから誤魔化そう。


「締めの挨拶はラフィートがやるんだろ?

 メリオ達が戻っても戻らなくても締めに移行するからもうセリア先生の元へ行った方がいいんじゃないか?」

「ふん。貴様に言われずとも少し話をしたら行くつもりだったさ。

 貴様もいつまでも座り込んでいないで貴様だけは早いうちにアルカンシェ王女殿下の元へ戻っておけよ。ではな」


 誤魔化したらひと仕事を終えた子供たちを気遣ったツンデレで返されてしまった。

 そのまま本当に去っていくラフィートを見送り言われた通りに俺だけはアルシェの元に戻るとするか。


「クー、ここは任せるぞ」

『お姉さま達のお世話はお任せください』

「フリューネはどうする?」

『ん~、近いしここでお嬢様たちの護衛でもしているよ』


 クーが頼りになるのはいつもの事だから違和感は無いけど、フリューネが護衛とか口にしても現時点で寝たままだし子供たちのアスレチックになってるだけだからなぁ。まぁそうそう危険な事なんて起こらないだろう。


「おかえりなさい、宗八(そうはち)

 お父様、宗八(そうはち)が戻りましたから私も王族として席に付きますね」

「はっはっは!私は私で護衛を連れて来ているのだからそもそも護衛に付く必要もなかったんだよ」

「祈ってばかりでは手持無沙汰ですし座っていても気を抜きすぎてしまいますから。

 それはそうと、お疲れさまでした宗八(そうはち)。アクアちゃん達は休んでいるのですか?」

「ありがとうございます。娘たちはフリューネが面倒を見てくれています」


 フリューネ様が? とアルシェの顔からも困惑の表情が伺える。

 やっぱそうだよね。普段は俺の後を付いて回るだけ、近くで居眠りばかりのアイツが今更子守と言い出してもね…。


『雨も上がりましたので、最後に締めのお言葉をラフィート陛下、オルヘルム教皇様に……』


 参列者は全員が戻ったわけでは無いだろうけど声は魔法で王都全域に届くように調整されているから予定通り式は進んでセリア先生の進行が響く。ゼノウPTとセーバーPTも今回は参列者の立場で参加していて他の参列者と共に祈りの姿勢から話を聞く態勢に切り替える姿が見えた。あいつらは冒険者だからほとんどは宿や道具屋の顔なじみの元へ向かったようだけど、もしかしたらメンバーの中に実家が王都の奴がいたかもしれない。

 そこまで深くあいつらを知っているわけじゃないけど、知り合いの知り合いが無事に成仏してくれている事を俺も祈らせてもらおう。


 ラフィートの声が聞こえる中で目を閉じ、改めて被害に遭われた方々へ。どうか安らかにと。

 参列者の祈りが届くように。どうか…、どうか……。

いつもお読みいただきありがとうございます。

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よろしくお願いします。

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