閑話休題 -39話-[アーグエングリン王都への道中]
侍女調査隊のメンバーを紹介されてさらに数日が経った。
土の国は他の国に比べて広大な土地を持っているけど、
資源の面を見るとそこまで豊富ではないらしい。
湖で魚は取れても稚魚の放流や養殖をしないと全滅は必然。
野菜も渇きがちの土地に合う種類が少なくて多くは輸入に頼る始末。
面している海も魔物が強く流れも速いとダメ押しを食らっていて、
鉱山を量産し稼いだお金が食費に消費される悪循環をどうにかしようと毎年足掻いているとの事。
「水源があるなら河を作ったり出来ないのかな?」
『日照りの時間が長く気温も高め、雨も少ないと来る土地ですよ。
すぐに干上がって使い物にならないんですよ。
せいぜいが湖の水源を守る事しか手立てがないのでしょう』
森が無いわけでは無い。
アーグエングリンの王都へ進む道中、
木陰で休憩する間の雑談相手は胡坐の中央に鎮座する無精王アニマ。
「町や村にも畑はあったしちゃんと広い範囲で作ってたのに野菜が大きくなかったなぁ…。
堆肥とか作ってないのかもしれない」
『教えないんですか?』
「作り方を知らないわけじゃないけど、
大雑把に覚えているから正しいやり方かわかんないんだよ。
もし間違って野菜が腐ったりでもしたら大打撃だろうし」
『それはそうでしょうけど……』
基本はうん〇を放置して堆肥にすると思う。
ゲームでも簡単にう〇こから堆肥が作られていたし。
ただ、畑に骨を撒くとか、窒素が大事とか、土には酸性とアルカリ性があるとか、
そういう情報も頭に残っているから下手に口出しも出来ない。
そもそもアーグエングリンの国民から見れば俺はただの冒険者だし、
よそ者が勝手に口出すってあまりよろしい結果に繋がるとは思えん。
DASH村ちゃんと観てればよかった…。
「その辺りはタラスク将軍を窓口になんとか伝えて実験をしてもらうのがベストだろう」
『いつになるやら、ですね』
あ、思い出したけど窒素に関してなら雷を畑に落とせば良かったな。
確かお米が美味しい土地は雷が多いらしいし、
聞いた話じゃ、漢字や言葉の成り立ちもは稲の妻と書いて「稲妻」。
雨に田んぼと書いて「雷」と意味を考えればそれだけ畑には大事なんだとか。
雷くらいなら遠くから誰が犯人か分からない様に落とせたな……。
「次に畑に出会ったらやっとこ」
『やり過ぎると目立ちますから気を付けるのですよ』
「フォレストトーレで暴れすぎたしもう顔を隠す必要はないんだろうけど、
目立つのはまた別問題だしな。気を付けるよ」
破滅の調査上どういう危険があるかも不明だったから顔を隠す[精霊纏]を使用していたけど、
調査に動ける精霊使いが増えて来たし魔神族相手にあれだけのドンパチをやらかせば、
流石に顔を隠す必要も無くなる。
苛刻のシュティーナに至っては絶対理解したうえで楽しむために、
イクダニム呼びを未だに続けている始末だしな。
「そろそろ移動を再開しよう。ほい、飴ちゃん」
『あーん』
「ベル!フラム!お前たちもこれ食べたら出発するぞ!」
『『はーい!』』
少し離れた先にある開けた場所で遊んでいた末っ子共にも立ち上がりながら声を掛ける。
遊びとはいえ、フラムが撃ったヴァーンレイドをベルが反射を付与した互いの掌で打ち返してラリーを続ける訓練でもあったわけだけど、
かなりの時間遊び続けられるようになっているな。
それにしてもアニマは無意識の様だがしっかりと着実に絆されているな。
以前なら拒否していたであろうお菓子も嬉しそうにひな鳥のように口を開けて放り込まれるのを待つだなんて。
でも、そんな感情をおくびにも出さずにやり過ごすよ。
ハッ!と気付いてツンされるのも父としては悲しいからね。
『『あーん♪』』
「ほい、ほい」
俺も好きだが子供たちも好きだし、
知らぬ間に勝手に減っているからアルシェかマリエルもつまんでいる可能性も……。
まぁ、カランコロンと飴を転がしながらはしゃいでいる子供たちを見るのも癒されるし、
今後の消費量を考えてまた買い足しておくか。
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