表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夏の春  作者: Chiaki
プロローグ
2/21

夏の訪れ@姉

 



 この家ほど居心地が良いと思う場所はない。

 

 そんな風に私が感じている理由。

 どうしてだろう?

 それは言葉にできない歯痒い類のモノなのかもしれない。


 心の奥底をくすぐるような……それでいて私をじわじわと幸福な気持ちにさせる瞬間にはいつも彼の姿があった。


 弟であるハルキだ。

 私は幼い頃から彼を弟として可愛がってきた。



 これからもそれは変わらない。どうして? どうしてそんな風に思えるのだろう。

 


 まったく居心地が良いのよね。




          ♢♢♢




 ひとまず、弟について語ろうと思う――。


 私が彼……という呼び方はなんだか他人行儀だね。ハルキに関する一番最初の記憶は幼稚園の頃だ。私とハルキは二歳差だから幼稚園から同じ所に通うってことが多かった。というか今でも同じ高校に通っていて、つまり私が高校三年生でハルキが高校一年生ってことね。


 ハルキは幼稚園の頃から可愛かった。私のアイドル。大人しく、あまり積極的に他の子と関わろうとはしないタイプなのは昔からだけど、それでいてなぜか人に好かれる性質みたいなもの……いわゆる雰囲気ってやつかな? そういうところがあった。


 私はハルキのそういうところがすごく羨ましかったのね。だから自然と彼の仕草なんかを一挙一動見逃さない勢いで観察してたこともあったなあ。


 でもお互い年齢を重ねるごとにスれちゃってハルキが中学一年生ぐらいの時がピークだったんだけど距離の取り方がわからなくなった時期もあった。よくある話っちゃよくある話だよね。男性と女性の区切りが徐々にはっきりしてくる時期だもんね。


 私も私でその頃は高校入試とか引退間際の部活があったりで忙しかったしピリピリもしてた。だからこそ弟に対してわざとそっけなさみたいなのを出してみたりした時もあった。

 

 そうして距離を取ってみてやっと気づけたこともあった。


 私たちはどう接していようと血の繋がっている家族であることには変わりないのだ。どんなに話さなかったり、晩御飯を別々の時間に食べたり、そもそも一日中顔すら合わせなくても姉弟として過ごす時間……というか歴史が進行していくことに変わりはないのだ。

 

 なんだかわかったようでわからない、ふわっとした説明だけど要するに私たちはどうあっても姉弟であるっていう当たり前のことにようやく気付いたってこと。こんなこと恥ずかしくてあんまり他人にはできない話なんだけどね。


 さて、夏休みが始まって三日。いつも学校がある日は私が起こしに行く前にとっくに起きている時間帯だけど昨日は夜更かししてたみたい。だからそっと寝かしておいてあげよう――。


 なんてね。ひとまず可愛い寝顔をじっくり堪能してから久しぶりにモーニングスキンシップといきますか!



 口元を緩めながら私はハルキの部屋へと向かった――。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ