36 女神様の落とし物
お待たせいたしました。
ヘイデン男爵領は、男爵に跡継ぎも無く兄弟も居なかった様だ。
ヘイデン男爵はお取り潰しとなりました。
ヘイデン領を次は誰が治めるか。
モルダビア王国は平定されてから、五百年以上になる。
大きな内乱も無く。国外との戦も無い。
新たな領地が生まれる事は少ない。
俺がこの世界に来て。アリス王女奪還戦争になりそうな事は有ったな。
その他には魔の森での魔物暴走も有ったけど、領地を貰える様な出来事は
無かったと思う。
王城でも、色々な貴族が虎視眈々とヘイデン男爵領を狙って居るが。
本音を言えば皆が欲しがる領地では無い。
ヘイデン男爵の領地政策が良く無かったのだろう。
(良ければ、嫁も来るし逃げなかった)
魔の森には接して居るが、レセント川も流れて居て砂漠地帯では無い。
モルダビア王国は、温暖な気候なので農業が盛んだ。
普通に作物が育つ。普通に農業をして居ればの話だけど。
畑の連作障害を回避する。肥料を施す。
その様な畑の運用方法を。ヘイデン男爵領でもして居たと思う。
でも何かが違って居たのだろう。
畑はやせ細り作物の出来も悪い。勿論税収も悪い。
そうなると悪い方に悪い方に何事も転がって行く。ヘイデン男爵の様に。
逃げ出す農民も出始めた所だった。
伯爵以上の上位貴族は直接に領地経営を余りしない。
男爵クラスの下位貴族に丸投げする。全てに関われないのだから。
でも任せっぱなしはヘイデン領の様に成る。フロム伯爵様の失態だな。
俺は今、フロム伯爵邸に来ている。
次のヘイデン領の領主を決める。打ち合わせをする為だ。
フロム伯爵を頂点に。三子爵と数十の男爵や騎士爵が治めている。
俺もだけど。ペルシス男爵も入って居る。
でも誰も火中の栗を拾う事はしない。
重苦しい会議室。
「フランク、お前が責任を取ってだな。家臣の誰かを男爵としたらどうだ」
フランク・ダンカン子爵だ。ヘイデンの上司だな。
「伯爵様、我が家臣でヘイデン領を建て直す様な者は居りませぬ」
「そうか、居ないか。少し休憩してからもう一度始めるぞ」
休憩中に。
「ペルシス兄さん。ちょっと良いかい」
あれから、ペルシス男爵とは家族ぐるみの付き合いをして居る。
「ケント、どうした」
「兄さんが立候補したら良いと思うよ」
「俺でもヘイデン領を建て直すのは無理だよ」
「僕が農業の方は、何とかするから大丈夫ですよ」
「ケントが手伝ってくれたら大丈夫だな」
「それに。文句を言ったり、何か邪魔をして来たら。アルテナ姉さんが居ますからね」
「俺の奥さん強いからね。最近は魔物も出て来なくなったな」
「それでは、お願いしますね」
休憩後の話し合いで。
「フロル伯爵様、私ペルシスにヘイデン領を任せて頂けませんか」
「ほう、ペルシス男爵がやってくれるか。他には居ないか?」
「・・・」
「それでは、儂は王都に行って御前会議にてペルシス男爵が受けてくれると
報告して来るからな。皆の者も協力してくれよ」
「 「 「 「 はい 」 」 」 」
反対する者は居なかった。
皆が解散して。俺は伯爵の執務室に呼ばれた。
「ケント、アンジェラの容態は良いのか?」
「はい、元気ですよ。まあ、少しは悪阻が有りましたが。健康ですよ」
「男の子だったら良いな」
「私は、健康な子供だったら何方でも良いですが」
「ケントよ、貴族なら男子が一番だぞ。跡継ぎが居なければお取り潰しだ」
「私はまだ若いので、大丈夫ですよ。正室も側室も居ますので心配はして居ません」
「そうだな、マダマダ若いからな。それに比べたら儂の息子達に子が出来ないのだ。アンジェラの子が初孫になりそうだ」
「ヘイデン領の農業不振とかも有りますが。何か有るのでしょうか?」
「そうだな、お前はアルテミア様の使徒だよな。一度農地を調べて浄化
したらどうだろうか?」
「何か呪われて居るかも知れませんね。王都の神官長を連れて行って祈祷
して貰いましょう」
「それなら、一緒に王都に行くか。ケントよ、お前の馬車は乗り心地が良いそうだな。乗せてくれるよな」
誰に聞いたのだろうか。アンジェラか?娘なら。親に言うだろうな。
・・・・・・・・・
数日後、準備も出来たので王都に向けて進んで居る。
俺の馬車にフロル伯爵様が乗って居る。
「ケント、中々の乗り心地だな。王室の馬車より良いのではないか」
「王室の馬車は乗った事が有りませんが。やはり王室の馬車の方が良いでしょう」
「嫌、俺は乗った事が有るから分かるぞ。この馬車の方が数段上だな。だがな、
ケント、馬車は良いぞ。しかし、馬はどうしたのだ。普通は二頭引きなら
同じ様な馬で揃えるだろう」
そうだ、伯爵様のおっしゃる通りです。
右側の馬は買った時のまま。貧相な馬だ。
左は俺に懐いた馬。名前も付けている【ゴードン】と名付けた。
見た目も良い。黒い馬体で筋骨隆々。あそこも立派だ。馬並みだ。
ゴードン一頭で十分馬車を引ける。
貧相な馬は余分なのだ。でも。一緒に並ばせて居る。
ゴードンに優越感を与える為だ。
やはり、飴と鞭だな。馬でも仕事の遣り甲斐が無いとつまらないだろう。
許せ、貧相な馬ヨ。
やはり伯爵様には本当の事は言えない。俺の自己満足は。
「ケントよ、道路も良く成った様に思わないか。まあ、所々悪い所は有るが」
「そうですね。デコボコも無くて良いですね。何方か奇特な方が修繕したのでしょうね。道路を利用する者としては有難いですね」
「伯爵領としては有難いな。時々修繕するだけでもお金は掛かるからな。
そう言えば、お前だろ。盗賊が道端で寝て居ると、門番に届けたのは」
「その様な事が有りましたかね?」
「惚けなくても良いぞ。お前しか居ないだろう。あれから大きな盗賊団は
居なくなったな。近頃は小物ばかりになった」
色々な話をして居たら。王都に着いた。まあ、二十日位は掛かったが。
フロル伯爵様とは、王都のアルテミア教神殿で分かれた。
「アリア、忙しい所済まないが。フロル伯爵領に行って土地の浄化をしてくれるか」
「はい、ケント様。司祭達も育って来ていますので。留守にしても構いません」
「それじゃあ、準備が出来たら明日の朝から行こうか」
「了解いたしました。それでは準備して来ます」
次の日にアリアを乗せてフロル伯爵領に向かう。
二十日程掛かる道程。新幹線や転移を使えば早い。
しかし、時間の辻褄が合わなくなる。仕方ない。
それと、俺の領にはまだ警備兵等が居ない。
王都で冒険者を雇った。
四人組の冒険者。夫婦者二組、二十代中頃位だ。
一人は馬に乗せ騎馬だな。もう一人は馭者席で警備。
女性は馬車内で、アリアの警護。アリアには巫女が一人付いて居る。
道中前から馬車が来ない時を見計らって、道路補修が終わって居ない所を
直しながら進む。
二十日は長いけど、何時かは着く。
ヘイデン領に着いた。
小さな宿屋に泊まる。夜皆が寝静まった頃に偵察に出る。
空間魔法で空に昇り、センサーで異常が無いか探る。
レセント川が蛇行してヘイデン領に大きく食い込んで来た所が何か変だ。
川岸が水で削られて居る。数年前の洪水の影響なのだろうか。
その辺りから何か黒い靄の様な物が出て居る。
これは多分肉眼では見えない物だな。
放射能を計測する様な機器で無いと難しいだろう。
崖の高さは十m位有る。今は水嵩が低いので水面ギリギリ位の所から
黒い靄が見える。
地中十m位に埋まって居たら何事も無かったのだろう。
まあ、明日明るくなってから良く見て見よう。
次の日に、アリアを連れて現地に行く。
他の者は馬車で行くが、近づけると危ない。
魔法を見られるのも駄目だな。
誰も見えなくなってから。アリアを転移で現場に連れて行く。
その物体事、土魔法で包み地中から掘り出す。
他の者には見えないが、黒い靄が出て居る。瘴気と言う奴だろう。
それに触れた木々が枯れて行く。
早くしないと危ないな。でも中身は何だろう。
「アリア、何か分からないけど非常に危ないと思う。安全な所に持って
行って調べるからね」
テーベア山脈の別荘に転移で飛ぶ。
風向きを考えて瘴気が来ない方に居る。
土を除いて見る。
何と言う事だ。地球産のレジ袋が見える。ロー〇ンとか書いて有る。
中身が気になる。非常に。直に手で触れたくは無い。
センサーを高精緻にして透かせて中身を見る。
見てはイケない物が見えた。慌てて鉛板を作り治める。
瘴気は収まった。放射能並みに危険な物になるのだな。
地球から直接転移すると、それで駄目なのか。
此方の世界に合わせて再構築しないと大変な事になるのだな。
《アルテミア様、見ましたよね》
《見てはイケない物が見えましたね》
《原因に心当たりは有りますよね》
《私では無いですよ。私はエリ〇ールですからね》
《アルテミア様は、まだ有るのですか?》
《ケント様、女性に年齢とかそれは聞いては駄目ですよ》
《ごめんなさい。じゃあ、地球の管理者イアンナ様ですね》
《私がキツク言って置きます。私は下界に干渉出来ないので処分をお願いします》
《了解いたしました》
鉛で囲った物を、幅五十㎝程の石板で囲い棺として、テーベア山脈の地下深くに封印した。
知らなかった、女神さまも有るのだな。日本製は品質が良いからね。
でもあれ一つだけだろうか。何かの弾みで地表に出ただけで一つの領が滅びた。
気を付け様。
お読みいただきありがとうございました。
(女性の方は御免なさい)




