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32  伯爵の使い

お待たせいたしました。

 十騎程の騎士に先導された。馬車がやって来た。

多分フロル伯爵家の馬車だろう。

原住民は、この世界の国旗や貴族の紋章類は全くもって覚える気が無かった

様だ。


 そうだよな、俺が前世でも大国の国旗位は知って居たけど。

全ての国の国旗まで覚える気は無かった。

まあ、知る気も無かったのが本音だが。身近な生活なら関係無い国旗だ。

オリンピックで関係者なら知らないで済まされない。間違ったら国際問題になる。


でも困ったな。

今現在、我が家には執事や家宰を務める者は居ない。

仕方ない、俺が何役もしたらいい事だ。無い物ねだりは出来ない。

男爵邸の玄関で待つ事にする。


伯爵家の馬車が玄関前の車寄せに到着しました。

騎士達は、下馬して防御態勢で馬車周辺に待機します。

中々、訓練が行き届いて居る様です。


馭者が降りて、馬車の降車用の階段を降ろしてドアを開ける。

最初に、執事だろう人が降りて来る。

the、セバスチャン。俺も欲しいですね。


 執事さん、御一人様だけの様です。


「初めまして、私は、フロル伯爵家に使える、オシム・サンチェスと申します。アルテミア様の使徒ケント様で間違いないでしょうか」


「はい、ケント・スミルナです。こちらこそよろしくお願いします。此方で

ご用件をお伺いします」


 家の中に招き入れる。

執事さんと騎士長が着いて入る。一応、応接間は作ってある。父の王都の屋敷を

真似て作った。


「ほう!見事な部屋で御座いますな。男爵邸の範囲を超えて居ますな」


 やはり、爵位に応じた家格と言う物は有るのだな。知らぬが仏だよな。

現地人は、色々な貴族からは招かれた事が無い。

父親の辺境伯も、後継者たる長男や次男は連れて行った。

風評被害の看板を背負った五男は隠したかっただろう。連れて行くはずが無い。

憑依してからの記憶が、俺の見た貴族の家が基準になる。


 爺さんの男爵邸と辺境伯の屋敷、王都の辺境伯屋敷。

王様の王城も見たけど、男爵邸の基準じゃない。

ペルシス男爵邸も爺さんの屋敷と同じだ。

だから少しランクを上げて辺境伯屋敷を真似た。

前世でも、DIYが好きで色々な木工細工はしていて手先は器用なのだ。

木材の切断方法も色々有って木目の出し方が面白い。


 今回は、壁と床天井を柾目で揃えて居る。自己満足だけどね。

以前の様に魔力込め込めはして居ない。少しだけだ。

防腐処理程度だ、シロアリさんが居たら泣きそうになる位かな。

でも、執事さんは珍しいのか。部屋の隅々まで食い入る様に見て居る。


 侍女が、テーブルの上に紅茶を人数分置いた。

アリス達は、この場には出て来ない。


「オシム様が、今日、来られたのはこの土地の事ですよね?」


「ハッ!そ、そうで御座います。王城に我が主フロル伯爵が宰相様に呼ばれて

登城致しましたら、この領地をケント・スミルナに与える事が決まったと」


「私も、宰相様に男爵位を戴いた時に。今分け与える領地は無いが開拓

したらその領地を分け与えると言われまして。開拓しました。ある程度

治める自信が出来ましたら。フロル伯爵様にご報告する予定です」


「当家も随分前から、この辺りを開拓しようとした様です。なにぶん魔物の

支配地で御座います。先代の頃に諦めた様です。ケント様は成功された様ですな」


「イエイエ、マダマダデスヨ」


「領主の館も出来て居ます。道路整備も終わって居る様ですが。まだ何か

不足なのですかな?」


「土地の開拓は粗終わりましたが。領地の囲いがまだ出来て居ません。

館も完成しましたが。人材は整って居ないのが現状ですね」


「人材は大事ですな。父君スミルナ辺境伯には人材が沢山居られるはずです

廻して貰ったら如何なのでしょうか?」


「オシム様は、数年前までの私の事はご存知でしょうか?」


「いやはや失念しておりました。あれでは、スミルナ領内での人材確保は

難しいかも知れませんな。でもアルテミア様の使徒と言う身分になった

今なら家臣として仕える者も居るでしょう」


「一度父に相談して見ます」


「それが良いと思います。王都の学院でも執事を養成する学部も有ります

新卒採用をされても良いかも知れませんが」


「でも、優秀な学生は引く手あまたで、私の様な新興の男爵を選ぶ学生は

多分居ないでしょう」


「ケント様、私が今フロル伯爵家に仕えて居なければ。貴方様の執事に

なりたいと思いますよ。アルテミア様の使徒も魅力ですが。全く新しい

男爵です。古い柵も無く執事としての遣り甲斐は有ります。

それと、奥方様が。皆、 各国の王女様です。この領から新しい世界が始まる予感がします」


「オシム様、私は世界を変えるつもりは有りません。残りの人生を此処で妻達とゆっくりしたいだけなのです。争いの無い世界にしたいだけです」


「隣国との諍いは有っても、戦争にはなりません。北も南も大きな山脈が

有ります。大軍を率いては、糧食の問題も有りますので出来ません。

国内の内乱や隣の貴族同士の諍いは有るかも知れませんね」


「隣同士の喧嘩は、モルダビア王の仕事ですね。私は国同士の戦争を止める

行為をアルテミア様の使徒として行います。なるべく無い様に願って居ます」


「話は変わりますが、魔物の様子はどうなのですか?」


「気になるでしょうね。時々は出て来ますよ。その都度お引き取り願って居ます」


「ケント様、簡単におっしゃれますが。魔物は人の言う事は聞きませんよ」


「オシム様、其処は企業秘密と言う事で」


「分かりました。それでは今日はこの辺りで失礼します」


「遠路はるばるありがとうございます。これは少ないですが私が作った

お菓子です、フロル伯爵様にお渡しください。重いですから私が馬車迄

持って行きます」


「ケント様、お気遣いなく」


 馬車の後ろの荷物置き場に菓子箱を納める。落ちたら大変なのできっちり

固定する。

オシムさんが馬車に乗って、馭者がドアを閉めて階段を収納する。

馬車は騎馬隊に先導されながら帰って行った。


 やれやれ、やっと帰ったな。

この屋敷は、地下駅の上に造って有る。アリス達は危険だと判断すれば

地下駅に降りて新幹線で逃げたら良い様にして居る。

今は、それ程危険ではない。魔物も男爵領を囲むように結界が張って有る。

でも結界も万全では無い。多分ドラゴンブレスでは、数回で破壊されるだろう。


「アリス、帰ったよ。フロル伯爵の偵察だな。色々調べて考えるだろう」


「ケント、アンジェラの事は出なかったのね?」


「今回は一言も無かったよ。いずれ何か言って来ると思うよ。今問題なのは

男爵領になったから。執事か家宰が欲しくなった事だね」


「そうね、一家族なら問題無かったけれど。貴族枠になったら居るわね。お父様に相談しましょうか?」


「俺も父に頼ろうと思ったけど、やはり王様の方が良いね。一緒に行こうか」


 新幹線の準備は何時も出来て居る。馬車とは比べ物にならない速度で進む。

でも隠密行動になる。時間的な説明辻褄が合わない。

何れは、馬車を用意しないといけないな。



・・・・・・・・・



フロル伯爵の執事。オシム視点


 フロル伯爵邸に馬車が着いた。

馭者が何時もの様にドアを開けてくれる。

降りて、ケント君がくれた土産物を取りに馬車の後ろに廻り、馭者が

荷造りを解いて居る。菓子だと言って居たが厳重にロープを架けて居た物だ。

それ程大きな箱では無い。軽いと思って居た。


「グギッ!」


「アウッ!コ、腰がぁ~」


「オ、オシム様どう致しました?」


「コ、腰がぁ~! ギックリ腰にぃ~!」


「アシム!屈強な者を呼んで二人で運べ!」


「はい、父上」


 屈強な兵士二人で、箱を抱えて伯爵邸に運び込んだ。


「オシム、大丈夫か?」


「いえ、大丈夫では御座いません。腰が痛くて一人では歩けません」


「ソファーに横になって楽な姿勢で良いから報告しろ」


「はい、ケント・スミルナ男爵は数年前に言われて居たような凶悪な男では

無いですね。背も高くて顔は、第三王女様も持って居ましたが絵姿が描かれて

居ます様に美男です。あれならどの様な女性でも寝所に招き入れますね」


「そ、それ程なのか。それで新たに開発した領地はどうだった?」


「全てを廻って居ませんが。魔物の楽園が、普通の男爵領に変って居ました。

男爵にも聞きましたが、謙遜だと思いますが完全に魔物を排除して居ますね」


「まだ、兵も常備して居ないはずだ。やはりアルテミア様の使徒だな。魔物共

を駆逐したか領外に追い出せる力を持って居るのだな」


「男爵は、結界を張って居ると言って居ましたが」


「伯爵領を結界で守るとなると。膨大な魔力が居るぞ、魔法使いを沢山雇うか

魔石を使う魔道具を大量に揃えるかだな。戦争なら仕方ないが、魔物にそれ程の

装備は難しいな」


「やはりアルテミア様の使徒は本物ですな。膨大な魔力を保有して居るので

結界の維持も容易いのでしょう」


「そうだな、使徒様には太い首輪を付けさせて貰おうか。行き遅れた娘の為だ。

所でオシム、腰を痛めたのはどうしてだ?」


「男爵が手土産にとお菓子をくれた様です。菓子箱ならと軽いと思いまして

簡単に持ち上げようとしましたら。それが殊の外重いのでした」


「この箱か? グッ!・・」


「これを、男爵は一人で持ったのか?」


「はい、男爵邸には侍女しか居ませんでした。男の使用人は居ない様です」


「開けて見たらどうでしょう」


「アシム、箱を開けて見ろ」


「ハッ!」


 紙箱では無い。厚さの有る木箱だ。蓋が外れない様に紐で括って有る。

アシムが紐をナイフで切って上蓋を外す。

伯爵が中身を確認する。茶色い紙に包まれた菓子折りだ。

伯爵は軽そうに持ち上げて居る。


 「何じゃこりゃあ!」


 少し痛みの和らいだ腰をソファーから持ち上げて伯爵の傍に行く。

箱の中には、丁寧に並べられた金貨がずらりと鎮座して居る。

重いはずだ。


「お父様、どうされて居るのですか?」


「アンジェラか、例のアルテミア様の使徒と言う男爵からの手土産だよ」


「中身は金貨ですか。幾ら入って居るのかしら」


 アシムが箱の側板を外して、金貨の詰まったケースを持ち上げた。

そう、金貨を数えやすい様に1,000枚毎にケースに入れて居るのだ。

金貨3,000枚入って居たのだ重いはずだ。

大金貨一枚30g程だ。箱の目方を入れたら90㎏以上になる。

あれを軽々と持って居た、化け物だな。


「それで、お父様は私を箱詰めにして男爵に送るのですか?」


「そうか。アンジェラ、お前はやはり賢いな。その手が有ったな」



お読みいただきありがとうございました。

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