エースの飛ぶ新たな空
―JST:AM11:55 日本国沖縄県宮古島市 下地島空軍基地内スクランブル待機所―
「……ん?」
僕は待機所に訓練帰りで訪れたが、そこであるほうを向いた。
そこにいたのは隊長だった。
ソファに腰かけ、自分の座ってるソファの前にあるテーブルの右にあるTVを、膝に右肘をついて前のめり気味になりながら見ている。
「なにみてるんです? ワイドショーですか?」
僕はそう呼びかけた。
隊長が座っている、表面をガラスで覆われたセンターテーブルを挟んで反対側にいるソファにどっかりと座り、右手に持っていたリンゴジュースのキャップを開けていると、すぐに隊長は答えてくれた。
「ああ……、これ」
「?」
僕はそのTVを見る。
どうやら時刻的にも昼のワイドショーで間違いないらしく、どうやらある場所から中継をしているようだった。
左上に表示されているその時間はAM11:55。
天気もその右に小さく出ており、反対側の左には小さくテロップが掲げられており……、
「……民主化進む中国、初の立候補者演説?」
そう、2行に分けて書かれていた。
隊長もすぐに答えた。
「あぁ、どうやら、今これやってる真っ最中らしくてな……」
「へぇ~……」
そのままTVを凝視する。
どうやら中継というのは確からしく、一面にびっしりと敷き詰められた大衆が確認でき、その中心にある演説台には、その立候補者の一人らしい人が身振り手振りを使った中々熱い演説を展開していた。
……が、
「……ん、あれ?」
「ん、気が付いたか?」
隊長が横目でこっちを向いた。
……この黒いスーツの人。まさかと思うけどこれ……、
「……え、」
「……燕中佐?」
「……正確には、元、だな」
隊長がそう口をゆがませてにやけつつ言った。
彼に間違いはなかった。
あの顔、確かに、あの時一緒に会話したり、時には戦場で、敵としても味方としても空をともに飛んだ、あの人だった。
……そうか。あの後言っていた通りに空軍を退役したんだっけ。んで、こっちからいろいろとアドバイスを……。
「お前のとこの兄さんが、いろいろと協力したんだって?」
「ええ……。こっちからお願いしたら、素人意見で言いならって」
「素人って言いながら相当な知識じゃないか……。下手すれば今すぐに政治家言っても十分通用するレベルで」
「はは……、まあ、確かに」
実際そこら辺はみんな言っている。そして、自分も少し狙ってたりする。
……なったら首相にでもなっちゃえばいいと思うの。
すると、隊長が感慨深そうに言った。
「しかし……、あいつも、しっかり政治家目指す人間になったな」
「……ですね」
「……あのときから、もうずいぶんと経ったか……」
「ええ……、もう、7ヶ月ですね……」
あの日以来、1週間の期間を経てそのまま日本に帰還。
下地島はやられて修復中、さらにその次に近い沖縄の那覇空港をはじめとする各日米基地もやられているため、いったん現状使えるので一番近い宮崎県の新田原基地に降り立つことになった。
帰還すると、向こうでは大きな歓迎を受け、僕たちは戦争中最も戦果を挙げた部隊として有名になっていた。
特に撃墜数が多かった僕は、最終的には20機というとんでもない撃墜数を得るに至り、大きく称えられることとなった。
なので、実は結構な有名人になりました。まあ、20機も落とすわ、中国のエースと対等に渡り合ったりするわしたらそりゃ有名にもなりますって。
総理から直々に勝算のお言葉を承ったりしてもらったが、でも報道だけはさせなかった。さすがにそこまで行くと騒がれすぎて疲れるから。でも、それでもネット内では情報が漏れたらしくこれまた有名になっている。
……あと、それによってかなんでか知らないけど、真美が司令部に単身突撃したり、兄貴がミサイルを手動で落としたりっていう情報も最近になって出回ってきたせいか、「これなんて偶然?」とか、「なにこいつら家族そろってチートか?」とか言われたりしている。
……無理もない。こんな家族そろって何かしらのアカンことをやっちゃってたらそりゃそういわれる。というか、真美があの無線の前に単身突撃云々のことをやらかしてと病院で聞かされた時は思わず倒れそうになった。
うちの妹があそこまでチートの人間卒業野郎だったとは。うちの家族は人間やめたやつばっかりだ。え? 僕? そっちよりこっちのほうがひどいだろうに。
……そして、そのあとも僕たちの周りも大きく動いて、政治云々で結構な動きがある中、こっちも部隊の再編成ということで僕たちのメンバーもいくらか変わった。
だけど、運のいいことに僕と隊長は残った。そして、今は下地島に戻ってこうしていつも通りの空飛ぶ日々を送っている。
今日は午前朝早くに訓練を終えた。ただのDACT訓練。
……え、結果?
米軍さんのレガホとぶつかって余裕で勝ちましたが何か?
……いや、まあ向こうも向こうでどうやら新人さんらしくて、そもそもこれ向こうから願い出てきたものでしてね。
どうやらトップエースのお二人に新人教育を云々ってね。ただお相手してくれるだけでよかったらしい。
なので、どうせならと新人とか関係なく問答無用で無慈悲に本気出してサッチ・ウィーブしたらなんか即行で終わってしまった。これでは訓練にならないんじゃないかと思ったが、向こうはこれで大満足らしい。
また訓練の日程を組むのでその時はと言われた。またやるのか。まあ、別にダメとは言わないけども。
……とにかく、そんな感じの午前があり、そして今は昼休憩。
他の部隊員はほかの訓練に出張っているか、または近海哨戒にでている。やはり戦争が終わり、中国の脅威が大きく下がったとはいえ、それでも不安定な情勢が続くのは確か。
現に、これまでに何度かこの戦争終結に反発している旧共産党勢力が近海に入ってきたり領空侵犯まがいのことをしているため、これらに対する対処法が確立されて、向こうでもこれの撲滅に入るまではたぶんこんな感じだろう。
……そして、昼飯食って食後の小休憩で好きなリンゴジュースを買って適当な場所に本もって休憩していこうとして、今現在に至る。
……これは、読書どころの話ではないかな? ちょっとこっちの彼の中継が気になって仕方がない。
本当は隣にある本棚から宇宙人が飛来する某SF小説を読もうと思ったんだけど、こっちよりこのTVだな。
僕はそれを、リンゴジュースを少しずつ飲みつつ見ていた。
彼の、力強い演説が響いている。
『―――今の政治に足りないのは何か! ……ほかの何者でもない、そう、それは、強い決定力を持つ人間! そして、自分の信念を貫けるその度胸のある人間である! 今までの政治は、その信念や度胸が、他の周りに流されてていた! こんなことではいけないのではないか!? ―――』
身振り手振りを使った熱い演説であった。どこぞの国家の総統かとツッコミたくなるような感じであったが、ある意味、これが一番国民にもウケる。
事実、これを聞いている周りの国民らしい大衆はしんとしているし、思わず僕たちもそれを真剣に聞いてしまった。
……ある意味隊長さんだったからなのだろうか。こういうのには慣れてるとも言わんばかりの手慣れさだった。
『―――そして、私はその信念と度胸を持ち合わせていると、自信をもって言える人間である! 皆さんが今必要としている人間が、今ここにいる! そう、今必要なのは、私を含め、この一番の信念と度胸、そして、いざとなった時の決断力ができる人間なのである! それが、今後の中国を動かす、最大の原動力となるであろう! ―――』
何とも熱い演説である。そう何度も思った。
……説得力あるというか、なんともカリスマ性を感じられるものだった。
すごいなぁ……。ここまでやるとは。
あの人、見た時からただならぬ雰囲気は感じてだけど……、ここまでとは思わなかった。正直すまんかった。
隊長も感心しているように言った。
「……この前の人もすごかったが、あいつも中々だな……。こりゃ、確実に当選するぞ」
「え?」
まさかの当選宣言までされた。
思わず僕は聞いた。
「……その根拠は?」
「この中継始まったあたりからずっとこれ見てたんだけどよ、他の奴等より政策が一番現実的だし、そして、自信満々だ。そんでもって何より……、これ、“本心で言ってる”ってのがよくわかった」
「本心?」
「ああ、本心だ」
「ふ~ん……」
僕は全然見てないし今さっき見たばっかりだからわからないけど、そこまですごい演説なのか。
……まあ、今の政治に必要なのは彼の言ってる通りだしね。
というか、聞いてれば聞いてるほど日本人からしては耳が痛い内容ばっかりだわ。今の政治に必要なのは自分の自国民としての信念を必要としない人間だとか、あと決断力がないやつは政治に向いてないとかどうとか。
……まるっきり今までの日本の政治家共じゃないですかやだーッ。
まあ、兄貴も兄貴でそこらへん強調していってたし、それもあるんだろうけど……。はは、これ日本中が耳を痛くして聞いてるだろうなぁ……、はは。
「これほどまでに自信持ったやつはいなかったぞ……。いるとしたらあいつと、あとこいつの前に言ったやつだ。えっと……、郭って言ってたっけ」
「郭って人、たしかこの選挙の……」
「ああ……。当選候補の筆頭だ」
そうだったね。たしか彼も相当に評価が高くて、何でも元政治将校なのに政治家になった上にアメリカのパス通ったってことですごい有名人だとか。
あと、例の高雄沖海戦で起きた南シナ海・高雄沖の共闘の件も、もとは彼の反発的な一言が無線で響いたのをきっかけに動き出したとかどうとか。
そんなすごい人が政治に乗り出したとなれば……、そりゃ、話題性は抜群だ。
しかも、隊長の言っていることが本当なら、その元政治将校という職に就いていたスキルを使った演説もすごかったはずだ。まあ、そりゃ当選候補筆頭にもなるか。
「あいつと、あとそのひとつ前のあいつは確実に当選だな……。あとほかにも何人か候補がいるが、まずこいつらは確定だな」
「ほほぅ……、そうですか」
まあ、でも確かに少なくとも今やってる彼の演説も、結構すごい迫力だからなぁ……。もう、演説というよりはもはや問いかけに等しい。そして、時にはその自分の決意や信念に基づくものであればほかの候補者すら応援するというね。中々見ないよこれ。
……彼の演説には安心感と、頼りがいのある信頼感が感じられる。
これは……、いけるかな?
「(……兄貴に頼んでいろいろアドバイスさせた甲斐があったな……)」
あとで兄貴にも報告しておこう。確か、来月に体験航海で僕たちも招待されたはずだ。ついでに妹も来るし、うまくいけばそうりゅうの乗員も来て父さんもくる。
そっちにもいろいろ報告しておこう……。向こうにもいろいろ意見聞きまわってもらったし、そして本人からも意見を頂戴したしね。
まず、メールで彼には演説を聞いた、うちの隊長が差し引きなしで当選確実だって言ってたのと、僕もお世辞抜きにして同意だってことを言っておこう。
一応スマホにも入れてる。……というか、あの人のスマホ結構新しかった。例の中国製のパクリではなくてガチの某彼の大好きな果物の名前がついている会社のとこだったわ。
しばらくの間、僕と隊長はその演説を聞いていた。
やはり迫力のある人の演説ってのは見入る。
いつの間にか前のめりになって聞いていたし、僕自身さっきまで飲んでいたリンゴジュースを飲む手が完全に止まってしまっている。
しばらくすると、彼の演説も終わった。
ざっと2、30分くらいかかっただろうか。後の人が控えているので結構早く終わらせ多っぽいのだが、それでも中身はとても濃い。
説得力があり、現実的なものばかりだ。……これ、兄貴見てるかな?
見てなかったら例の体験航海の時に教えてやろう。これは兄貴がアドバイスした甲斐がある。いや、ありすぎる。
彼が演説台を離れた時の歓声と拍手も、万雷という言葉では足りない。カメラの音声が割れてしまうくらい大きいものだった。
……これは、決まったな。
「……決まりだな。ちょっと早いが、彼は当選確実だ。今までの大衆の反応がまるで違う」
「例の……、このひとつ前の郭って人と上がりますか?」
「ああ、上がるな。確実にな」
民主主義に生きてきた隊長や、僕がそう確信したんだ。
……これは文句なしに受かった。これで当選しなかったらそれこそ真面目に国民の気がしれないレベル。いや、割とマジで。
隊長は演説を聞き終え、「んーっ」と背伸びをしつつ言った。
「どれ……、じゃ、この後はどうせあんまり人気ないやつばっかだろうし、暇つぶしに聞き流して……」
と、そんなことをため息交じりに呟いて、僕もそれに同意しつつまたリンゴジュースに手をかけた時だった。
そう、まさにそのタイミングである。
「……、ッ!?」
途端に、サイレンが鳴った。
甲高く、かつけたましく鳴る、ある意味久しぶりにとも言わんばかりのその音……、それは、
「ッ! スクランブル!?」
とっさに体が動いた。
気が付けば、部屋の壁に設置されているランプも、待機状態の『STBY』から、緊急発進を示す『HOT S/C』と書かれている赤色に変わっていた。
すぐに隣に隣接されているアラートハンガーに突っ走り、愛機の『F-15MJ』に飛び乗った。
事前に身にまとっていたパイロットスーツの体とコックピットの座席をベルトで固定し、MHD内臓のヘルメットと共に酸素マスクも取り付ける。
「エンジンスタート」
さらにエンジンをはじめとして各種機器の始動を開始。
JFSによる初期指導からの本格的なエンジン回転。
……よし、今日もいい調子だ。最初の午前の時は違うやつで飛んだが、こいつも今日はいつも通り元気っぽいな。
エンジンが回転を始めたことで、各種電源も転倒。機体全体に電気がいきわたり始め、そしてコックピットの電子機器も始動開始。
それらをすべて操作し、出撃準備を整えていった。
HMDも起動。動作は完璧だった。
いったんHMDを上げると、キャノピーも閉じられ、外にいた整備士に合図を出して、尾翼の動作チェック。
エルロン、ラダー、エレベータ、スピードブレーキ。
すべてを確認し終えると、機付長に確認の合図を出して、さらに武器類の安全ピンを取り外した。
今回はスクランブルのため、短距離ミサイルのAAM-5Cが2発。
両主翼のパイロン下に1発ずつだった。
ミサイルの接続具等合の確認が完了すると、機付長からのチェック完了のサインを確認し、すぐに梯子も外された。
そこまで確認すると、隊長からの無線が届いた。
《無線チェック。IJYA01よりIJYA02、聞こえるか?》
完全仕事モードの隊長。
僕もすぐに答えた。
「IJYA02よりIJYA01、無線チェック、確認しました。大丈夫です。感度良好」
《よし、指示が来るまでその周波数で固定だ。いいな》
「了解」
いつも通りの手順。なんてことはない。
すぐに目の前のアラートハンガーの隔壁も解放され、目の前に青い空と白い雲が広がった。
そして、南国らしくその色は濃い。まだ4月の初めだというのに、熱いもんだよまったく。
隔壁が解放されると、すぐに無線が響いた。隊長の声である。。
《|Shimojijima tower,this is IJYA01.Recest scranble order.(IJYA01より下地島タワー、スクランブル発進許可を求む)》
向こうからの返答も素早かった。
《IJYA01,scranble order roger.Runway 35.(IJYA01へ、スクランブル要請承認。使用滑走路は35番)》
《IJYA01,roger.scranble(IJYA01、スクランブル発進承認確認。スクランブル発進する)》
スクランブル発進の許可を確認。
すぐに隊長機からアラートハンガーを離れ、滑走路のほうへ向かう。
整備士たちに左手でサインして感謝の意思を伝えると、向こうも敬礼で返してくれた。
そのままエンジンスロットルを若干押し、前進を開始。
アラートハンガーを出ると、その太陽の光がまぶしく僕を指し、日差しとなって僕を照らした。
甲高いエンジン音を耳にしながら滑走路に向かう途中に、タワーからもスクランブルのオーダーを受け取った。
目標はこのまま上がって11時方向、方位3-4-0の方向。Y-8電子戦機が1機接近中で、おそらくさっき言った旧共産党の反発勢力のものだと思われた。
まあ、相手は電子戦機だからさっさと追っ払って終わりだろう。どうあがいても攻撃受ける可能性はゼロ出し。フラグ云々を抜きにしても。
今から飛び立てば、向こうが領空侵犯する前に十分すぐにでも追いつくらしい。
その指令を受け取っているうちに、僕たちも滑走路に出た。
目の前に広がる、新品同様の少し黒めの滑走路。修復ついでに新調したので、とてもきれいに見える。まあ、そもそもこれ修復完了して僕たちがまた戻ってきて使い始めたのもつい最近の話で、結構きれいに見えるのはある意味当たり前なんですがね。
右前方にいた隊長機がA/Bを大きく轟かせて空に舞い上がるべく滑走を始めた。
……では、僕もさっさと行きましょうか。
許可もすでに得ている。隊長機との距離も十分空いた。
……よし、そろそろだな。
「IJYA02,take-off!」
その宣言と共に、スロットルを面一杯前に押した。
愛機はすぐに反応し、甲高いエンジン音にさらに燃料を吹きかけてA/B点火。
即行で速度を上げ、滑走路を滑走し始めた。
大きな揺れとGが襲うが、これも今となって離れたものとなってしまった。
むしろ、あの燕元中佐……、いや、今はもう退役したからその言い方も妥当ではないだろう。
その燕さんとの空戦の時のほうが、よっぽどきつかったくらいだ。まあ、空戦と離陸ではそりゃきつさが違うのは当たり前なんだけどね。
でも、今となってはそれが余計強調して感じ取るようになった。
操縦桿を引き、空に一気に舞い上がった。
一気に揺れが収まるとともに下から突き上げられる浮遊感に襲われ、そのまま隊長機のもとに追いついて編隊を組んだ。
A/Bを解除し、その編隊を維持していると、今度は周波数を変える指示が出る。
さっさと周波数を指定のものに変えると、今度は女性の声が聞こえた。
《This is SOUTH EYE to |IJYA01イジャー・ゼロワン),loud and clear,redar contact,vector 3-4-0,climb ALT 25.(こちらサウスアイよりIJYA01、無線感度良好、レーダーで捉えました。方位3-4-0、高度25,000ftまで上昇してください)》
《IJYA01 roger.vector 3-4-0,climb ALT 25(トゥー・ファイブ).(IJYA01了解。方位3-4-0に向け、高度25,000ftまで上昇する)》
はいはい、ということは上がったあとちょい左ね。
……というかこの女性の人。最初僕が去年スクランブルしたときもオペレーターしてたね。お疲れ様です。というか、何という偶然かな。
《……よ~し、じゃ、さっさと終わらせに行くぞ》
《不法侵入者にはご退場願おうぜ》
「ええ、了解です」
では、さっさと追い出しに行きますかね。
な~に、相手は電子戦機。フラグとかを考慮しても即行で終わるね。
そのまま、僕たちは編隊を組んで目標空域に飛んでいった。
風は穏やか。今日は春らしく穏やかな気候で、とても飛ぶにはいい日だった。
本音を言えば、もう少し平和な空で飛びたかったけど……、
……まあ、それはもう少し後の話になるだろうか。
というか、なってもらいたいと思う。
僕も、どうせ飛ぶならもっと平和な空を、優雅に飛びたいからね……。
復興に躍起になっている沖縄の地。
そこから、今日も日本の空を守るために……、
僕は、轟音を轟かせながら空を飛び翔けていった…………




