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『やまと』 ~戦乙女との現代戦争奮戦記~  作者: Sky Aviation
終章 ~新たな平和と未来を目指して~
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台湾復興へ

―同時刻 TST:AM09:30 台湾民主国首都台北 大統領官邸3階大会議室―








「そうか……。とりあえず、通常のインフラ整備はほぼ完了したか」


 私は報告を持ってきた交通省の交通大臣の報告内容にそう安堵しつつ答えた。


 あの戦争終結から7か月ほど。


 私たち台湾は、今国の大復興に躍起になっていた。


 まず、復興資材や人材の流通をスムーズにさせるために、国のインフラ整備に全力を尽くすとともに、南部での被害をかんがみて多大な復興予算を回した。

 国防にも一部回したかったのだが、今のところそれどころではないのでとにかく回しに回しまくる。

 そして、人材も首都方面を含む北方から大量に派遣し、復興促進のための糧とした。


 そして、それらは今最低限ではあるが復興したインフラの一つである道路交通網を使って向かっているころであろう。


 ……こんな短期間でできたのも、


「はい……。いやはや、ここまですぐにインフラ、特に道路交通網等のほぼすべてを整備できたのは、ひとえに日本の災害復興技術の支援があったからにほかなりません」


「ああ……。彼らの災害救助・復興支援技術はとても高いものがある……」


「はい。……伊達に災害には慣れていない、といったところでしょうか」


 交通大臣も、額から流れかけていた汗をハンカチで軽くぬぐいつつ、そう感心したような顔で言った。彼自身も少し今までの業務につかれているのだろう。


 しかし、彼の言ったことはまさに本当だ。


 伊達に今までに地震やら津波やら台風やら、果ては噴火やらといった自然災害を受けまくっただけあり、それの対策は万全で、その技術はここでも大いに生かされた。

 日本との国交樹立後、日本の行為と我が国としての興味の関係もあってこれらの技術を輸入していたのがまさに不幸中の幸いというやつだった。

 彼らの災害復興技術はとても使えるものばかりであり、それらを独自に駆使して道路交通網を回復。簡単な橋等も即行で整備することに成功した。

 なんとか台湾中の交通を大体を回復させることに成功し、一応は物資や人材の流通が容易となった。

 また、港湾施設や空港、空軍基地もある程度は回復し、あとは南部都市の建造物の回復や秩序回復に努めるばかりであった。

 もちろん、問題はまだ山積みである。しかし、このインフラ整備が整ったことによりひとまずは大きなヤマは乗り越えたというところであった。


 私は大きなため息をついて安堵しつつ、さらに指示を出した。


「よし、ではほかの公共施設等の整備に入ってくれ。まだまだ休むわけにはいかんぞ」


「お任せを。では、失礼します」


 そう彼は言うと少々機嫌を良くしてこの場を離れた。

 そのままほかの部下に指示を出しに行ったようである。

 この周りも似たような状況にある者たちばかりで、みなこの場で各々で指示を出し合って復興作業の陣頭指揮に躍起になっていた。

 しかし、彼らは生き生きしている。戦争が終わり、やっといつも通りの復興ができるという喜びからであろうか。終戦からすでに7ヶ月も経ったというのに、中々熱は冷めないものである。


 ……しかしまあ、こうしていられるのもこの災害復興の異様なまでの速さにいい気分でいるということなのだろうな。これも、こういう災害慣れしている日本の助けがあったからこそだ。結局、我が国は最後の最後まで助けられっぱなしか。


 ……我が国もまだまだだ。今後は自分たちでこの技術を身につけていかねばな。


「……よし、ではあとは……」


 と、次の指示をどうするか考えていた時だった。


「……うん?」


 手元のテーブルにあった資料を適当にあさっていると、その視線の横のテーブルに1個のコーヒーカップが置かれた。

 その中身は茶色に染まっており、淹れたてらしく程よい湯気を立たせていることもあり、すぐにそれがコーヒーだということが分かった。……そもそもカップがコーヒーカップな時点ですでに察せれるのだが。

 一瞬、このコーヒーが差し出されたとき、持っていた手も見えたのでその方向をふと見ると……。


「……お疲れ様です総理。相変わらず仕事熱心なことで」


 そうねぎらいの言葉をかけたのは、この場についさっき赴いたばかりらしい黄首相であった。

 彼の左手には、今彼自身が私のもとに置いたものと同じコーヒーがあった。

 ソーサーを持っており、中からは程よく湯気が立っており、どうやらこの私のもとに置いたのと同じく淹れたてらしかった。


 私は一つ軽くため息をつくと、少し顔をゆがませて笑みを浮かべつつ言った。


「ああ、君だったか……。もう、そっちのほうは終わったのかね。ずいぶんと早いな」


 そう言いつつ左手でソーサーを持ちつつ右手でカップを持ち中身を口に入れる。

 ……彼の直々のブレンドだろうか。中々の美味である。


 彼も一口コーヒーを口に入れていった。


「ええ。思ったより向こうが早く切り上げてくれまして……。向こうも、用が済んだらさっさと帰りたいようですな」


「そうか……。どうせなら私から直々にお見送りしていこうかと思ったのだが」


「総理に迷惑はかけれない、ということみたいです。まあ、どっちにしろ総理は今手が外せませんゆえ」


「まあ、そうだがな……」


 そう言ってまたコーヒーを一口飲む。


 実は、昨日からアメリカから大統領閣下が我が国に訪問しており、我が国の復興状況を視察していくとともに今後の我が国との国交関係に関する会談をしていたのだ。

 しかし、見ての通り私はここの指揮をとらねばならないので全然手が外せない。とはいってもこのアメリカとの会談は野暮にはできないので、急遽首相である彼を対応に当たらせることで手を打っていたのだ。

 昨日から、復興状況に関する説明を受けたり、今後の国交、外交関連の話をしていたようで、昨日聞いた限りでは中々有意義なものであると聞いている。


 そして、今さっきは彼は近くの台湾桃園国際空港まで言って彼の帰国のお見送りに言っていたのである。

 エアフォース湾を見るのは初めてらしく、昨日の彼の来台のときから結構そわそわしていた。まあ、生で見るのを楽しみにしていたのだろう。

 今さっきの彼が帰国するときもある意味同じようなものであった。

 アメリカ側もこちらの事情を知っていたので、私が出れないということには快く理解を示してくれた。

 さっき彼が迷惑を云々といったのはそういうことである。


 そして、彼のお見送りを終えた後、こちらの手伝いをするためにここに赴いたというわけである。


「……しかしまあ、」


「?」


 私は眉を一瞬若干上げて口ゆがませつつ、一瞬首を軽くクイッと傾けつつ少しあきれるように言った。


「……アメリカさん、相当“機嫌悪かった”だろ?」


 そういうと、彼は少し苦笑いで「ハハハ……」と笑いつつ、やっぱりあきれるように言った。


「いや……。思ったほどそうではありませんでしたが……」


「……が?」


「あー……。階段の合間合間に言う“嫌味”がまたすごくって」


「あ~りゃ……」


 はは、やっぱりこうなったか。


 というのも、どうもアメリカは中国での一件で相当腹が立っているようで、いや、戦争でというわけではないのだが……、聞いたところでは……、


「確かあれか? 中国の政治的アメリカ依存社会の形成を邪魔されたとかどうとかか?」


「まあ……、そんなことをさりげなく。自分たちの立場がなってないとか、こっちから積極的に様々な場面に助言を行うのは当然で、別段他意はないだとか、いくらなんでもあからさますぎる嫌味だったので思わず苦笑いしそうになりましたよ」


「はは……。まあ、アメリカさんらしい」


 まあ、向こうのやることだろうな。


 今回、この選挙等の政治改革は当初全部アメリカがしきることになっていたらしく、まずこの選挙もアメリカ側が大きくアメリカ政府の意向にのっとって厳選に審査することになっていたのだが、当の中国から、


「民主的選挙なのにわざわざ審議する必要あるか? 何か問題あっても決めるのは我々国民だぞ?」


 という、民主主義を掲げまくってるアメリカとしては何とも地味に痛い質問を受けまくり、その結果日本も日本で、


「とりあえず審査とかは最低限にしてそのほかは国民に任せてみては? その後の政治指導でどうとでもなるんだし」


 的なことをマスコミに漏らしたことも受けて、アメリカの異常な規制審議に疑問の声が世界で大小様々な形で起き始めてしまい、これ以上強行するとさすがにまずいということで、日本の言っていた通り基準を大幅に下げるなどをして結構な融和をした。

 その結果、中国としてもアメリカの指導が“違う意味で”行きにくい者も台頭することになり、しかもよりにもよってその人物に限って中国国民にとっても評価の高い者たちばかりで、マスコミや我々各国政治家の間でも当選確実とみられている者たちばかりであったのだ。


 まあつまりだ。中国人としての決意が“高すぎる”者たちがそろってしまったことにより、アメリカの“策略”が見事に頓挫したも同然となってしまったのだ。

 彼らとしても、政治改革は賛同するだろうが、その先のアメリカ依存の社会形成になりかねない指導自体は反発するに違いない。

 まだだれが当選したと改善に、そもそも演説ですらまだやっておらす、たしか今日の午前であったはずだ。


 ……だからこそ、アメリカは機嫌が悪く、さっき彼が言ったような愚痴を言っていたのだろう。アメリカとしては、中国経済を自分たちがわにひきつければ、株や外資の最大の顧客を得る絶好のチャンスだったはずだ。

 それを、見事につぶされた。しかも、指摘内容や自分たちの“表向きの”思想云々の問題で、表立って起こるに怒れないのだ。そんなことで怒れば「お前ら民主主義一手ながら結局自己中心的かよ。失望したわ」とかいう不満を垂れられてしまう恐れがあるという、なんとも思いっきり歯軋りしたくなる、いや、たぶん問答無用で今頃してしまっているであろう状態になったのだ。


 ……でもまあ、悪いがそれには賛同できんね。というのも、


「……しかし、今ここでそんなたくらみをしたって、結局無駄なことだろう。周元主席があんな宣言をしたんだ。中国とてそうバカでないし……」


「ですね……。彼らも彼らで、今必要なのは何なのかくらい一応は大まかにでも察しているでしょうしね」


「ああ……。結局、やっても無意味なことだろう。やるだけ無駄だ」


 私はそう言ってさらにコーヒーを一口入れた。

 彼もそれに同調する。


 周元主席が降伏宣言の前に言ったあの宣言。


 あの、中国人独自の強い意思の必要性を説いたあの宣言は、まさに中国人の今必要な心を説いていたものであった。

 それのおかげで、今中国で願っていることの大半がその“まともな意思を持ったリーダーの台頭”であり、それは情報規制が全面解除されたネットを中心として大きく議論となっており、それを通じてだれに投票するかという話題にまでなっており、もうアメリカの横やりが入ろうものならアメリカ依存社会形成による親米国家の形成なんてできるわけがない。それどころか、下手すれば反米思想にまでもつれ込みまた違う意味での中国問題に発展してしまう。

 その結果政治も大混乱だろう。アメリカに依存しないといけないがそれだと国民がだまってないとかいういろいろとややこしいジレンマに陥ってしまう。

 ……おそらく、周元主席はそれを見越したんだろう。結局、最後の最後まで独裁者ではあったもの、彼は彼なりに国民のこと、というか、中国のことを考えていたのだ。……何とも今までの彼にとっては不思議な話ではあるが。


 ……これによってアメリカも結構厄介な問題となってしまったのだ。だがまあ、そんなせこいこと考えてる暇あったらあんたらもあんたらで経済どうにかしろと。

 未だにメイドインチャイナ・バッシングの影響受けて経済立て直しがしきれてないだろう。最近ではアメリカ経済の終焉まで謳われ始めてるぞ。

 ……まあ、現実的に考えればそれはあり得んだろうがな。そのための軍縮でもあるし。


 また、それに関連して、最近アメリカの軍事力が徐々に低下していっていることを受け、この東アジアをはじめとして一部の海域にある国々ではその米軍の退いた分の軍事力補強を目指す動きも見え始め、我が国や日本もそれに該当するといってもいい。

 特に日本は、今回の件でより確実な軍事力を持つ決心がついたようで、数日前の電話会談の時では、予算さえあればもう少し海軍を中心に補強に入ろうかという話も検討されているということを聞いた。

 我が国としても、損害分の戦力補強もかねてさらなる軍事力拡大を狙いたいのだが……。もちろん、これは防衛のみに使う。というか、他国に侵攻する意味もなければメリットもない。負の意味でしか働かないものをわざわざやる必要はないしな。


 ……と、まあそんなわけで、この終戦後今までの間に結構世界も動いているということだ。


 我が国もそれによる世界事情の急激な変化に対応していかねばなるまい……。こういう時こそ、私のような政治家の手腕が問われる。


 そう私が改めて決意し、最後の一口を飲み終えた時だった。

 私が黄首相にこのコーヒーに関していろいろ話していると……、


「……あぁ、ここにおりましたか総理。探しました」


 そういう声が奥から聞こえてきた。

 みると、その声の主は金国防大臣であった。彼は手元に一枚の紙をもってここに赴いたようである。


「あぁ、君か。どうした? 何かの報告かね?」


「はい。今年度割り振られた予算でできる戦力補強に関してのリストがまとまりましたので提出いたします。大統領に直接渡したほうが早いかと思って」


「そうか。うむ、わかった。受理しよう」


 そう言って彼からその報告として持ってきたらしいリストが書かれた紙を受け取った。

 私はコーヒーをテーブルに置いてそのリストを見てみると……、


「ふむ……。やはり、現状いまの予算では損害艦の修理が手一杯か」


「はい……。新型艦の建造補強などやってる予算的余裕はなく、そもそmどこに発注するかって点でもまだ……」


「最悪まだ日本に頼むかな……。でも、向こうも向こうでオーケーしてくれるだろうか」


「自分としては、ある程度は旧性能でも構わないのですが……。できれば、汎用駆逐艦の補充がほしいです。確か、日本の高波たかなみ型がそこそこ標準的な性能を持っていたと聞きます」


「あれか……」


 確か、今回の戦争でも我が国のほうに赴いていたな。で、一部はそっちでも損害が出たとかなんとか。

 今頃修理を受けているだろう。


 ……しかし、彼はあれがほしいのか……。確かに今の我が国にとっては中々性能のいい部類に入るが……。


「……ま~た向こうと機密関連云々で話をせねばならんなぁ……。あの旗風級とか丹陽級の時のようにはいかんぞ?」


 あの二つはほとんど日本が協力に意欲的だったり、向こうから提案してきたりしたものだった。

 だが、これはそうもいかないだろう……。先の二つみたいにスムーズにはいかないかもしえない。

 ……尤も、日本の造船関連企業から見ればウマウマな話ではあるのだが。


「そこはこっちからも提案してみます。……一応、ご検討のほどを」


「まあ……、やっては見るが、あまり期待はするな?」


「わかってますよ。あくまで提案程度です。細かい詰めもまだ考えてませんし」


「うむ……。まあ、一応はわかった」


 麻生首相にまた電話で会談してみるか……。向こうも復興作業やその他の軍事力補填に忙しい時期であろうが、はたして相談に乗ってくれるかどうか……。


 ……まあ、今かが得ることではないな。


 すると、ふと思い出したように黄首相が言った。


「あぁ、そういえば今日でしたな。……中国の立候補者の公開演説」


「……あー、そういえば」


「……確かにそうだったな」


 復興作業等ですっかり忘れていたらしいが、先にも言ったようにその演説は今日の午前である。

 民主化が進んだ中国の初めての立候補者演説ということで、世界的にも注目度が高い。我が国とて例外ではなかった。


 そして、私たち個人としても結構興味があるものでもあった。


「しかし、誰がどんな演説をするか……。実に興味があります。まあ、自分は仕事で外せませんが」


 そう金国防大臣が言った。


 子国防大臣ではあるものの、中国との今後の関係を見越してこのようなものにも目をつけていたのである。

 ことによっては、我が国の国防事情にも大きく影響するからだ。


 黄首相も興味ありげに賛同する。


「そうだな。私も、この話題には結構興味を持たせていただいている。……はてさて、誰が当選するやらなぁ……?」


 そう視線をそらして目を細めつつ、右手で顎を撫でていた。

 顔は少しニヤついている。この手の話は結構好きらしい。政治家らしいといえばらしいのだが。


「そうだな……。しかし、誰が当選しようとも、今後の中国は我が国にとっても“友好的な中国”だ。……ご丁重に相手してやらねばな」


「中国の保護下から抜け出した“娘”たちの成長を見せてやりましょう。……ここまでやるんだぞってね」


「はは、おいおい、なんだって息子じゃなくて娘なんだ?」


「え、そりゃ、日本じゃ国擬人化したアニメでは我が国が女性で中国が中世気味の男性なのですよね?」


「ははは! なんだ、君もあれ知っているのか?」


「何をおっしゃる。私とてアニメ文化には結構精通してますよ?」


「実は自分も」


「おお、金国防大臣もか!」


 そんな感じでにわかに談笑に花が咲いた。

 アニメ関連の話ばっかだったが、そういえば最近見ていない……。いや、政治家が一々アニメ見てる暇なんてないのだが、しかしいつか暇を見つけて未定みたいな……。まず、あの数年前はやった霧を纏ったWWII時代の軍艦型の敵が出てくる海洋SFアニメとか、例の国擬人化アニメとか。あとは人口の8割が学生の科学万歳都市が舞台で魔術とドンパチやるあのアニメとか。


 ……と、こうやっていろいろと出してしまう自分も結構アニメオタクになってしまったものである。しかもなぜか一昔前のものばかりである。


 ……と、そんな会話をしている時だった。


「大臣、そろそろお次の仕事が入っています」


 そこに現れたのは一人のスーツ男。

 どうやら金国防大臣の秘書らしい。彼のもとにきてそう言った。


 彼もすぐに答えた。


「あー、もうそんな時間でしたか……。わかりました。では、自分はこれで失礼します」


「うむ。お疲れ」


「お疲れさん」


「はい。では、失礼します」


 そう言って軽く一礼すると、彼は秘書と共にそのままこの場を離れていった。

 その例の次の仕事とやらに向かったのだろう。確か、彼のこの後残っている仕事と言ったらその残りの陸空の戦力損害査定の詳細調査と、あとその後の損害分の補強方針だったか。

 ……まだまだ仕事は山積みであるな。


 ……と、さらにそれに続くように、


「と、では、私もこれで」


「? 君もいくのか」


 黄首相もこれにて失礼するらしい。そう私に言った。


「ええ。この後、在台日本大使館に向かって、今後の台湾復興支援に関する調整をしてこなければいけませんので」


「あぁ、そうか。確か、今後の台湾の復興に関する技術提供に関してだったな」


 彼はこの後日本大使館に赴いてそこで日本大使と今後の台湾復興に関しての技術提供関係の話をせねばならない。

 というのも、今この時間でも大いに活用させてもらっている日本の災害復興支援技術を、我が国としてさらなる発展技術として導入したいと考えており、今は機材自体を導入しているのだが、それをさらにこちらで同時発展させて使いやすいようにしたいと考えていた。

 だからこそ、これをこっちで独自改良するために、それ関連の技術者の派遣を要請しているところなのだ。

 幸い、日本側からの反応は比較的良好で、少数ながらではあるが、この機材や災害関連の技術者、専門家の派遣に協力的な姿勢を見せてくれているため、今はそのために細かな打ち合わせの段階に入っているのだ。


 そして、その担当が彼で、日本大使館との連絡パイプの役割を自ら率先して果たしてくれている。


 どうやら、そろそろそのほうの仕事に行かねばならないようであった。


「はい。もう間もなく詰めになりますので、ここでそろそろ細かな方針を決めていきたいと思いましてな」


「うむ。すまんな、このような重役をやらせてもらって」


「いえいえ、お構いなく。もとより自分から名乗り出たものですので」


「まあ、そうではあるが……」


 彼自身も、先の921大地震で親戚や親を亡くす、ないし重傷を負ってしまった過去もある。このような災害関連に関しては特に重要視しているのだろう。国家レベルでもそうだが、おそらく個人的な事情というか、感情も含まれているに違いない。


 だからこそのこの重役の立候補だ。背景事情を見ても、彼ならなんとかやってくれるだろう。


「では、私はこれで。……総理も、たまには少しお休みになられてくださいね。しばらく働きっぱなしですから」


「はは、わかってるよ。……じゃ、そっちは」


「はい。お任せください。では、私はこれで」


 そういって彼は一礼してこの場を離れた。

 日本大使館に向かうため、この後はSPや秘書を連れていくことだろう。


 ……というわけで、この場に一人残されてしまったわけだが……、


「……ふむ。では、私ももう一仕事頑張るか……」


 そうつぶやきつつ、私は目の前を見た。

 そこでは、縦長の円形テーブルが一つ。私はそこの左端に下り、奥のほうに見る右端のほうには、その先に出入り口もある。

 そして、其の周りでは様々な分野の幹部や部下たちが復興指揮のために奮闘していた。

 皆、復興のために尽力を尽くしている。中には汗をかきつつも、その死後tに熱心になっている者もいた。


 ……我が国は、次第に復活しつつある。


 彼らの熱心な仕事ぶりの様子を見ていると、なんとなくそう感じざるを得なかった。


 ……黄首相はたまには休めとは言ったが、彼らが全然休まずに動いてくれてるんだ。そのリーダーたる私だけ休憩なんてできるはずがあるまい。

 それに、そんなことしてる暇あったら私とてここで陣頭指揮をとらせてもらおう。それが今の私の性分に合う。


 ……私は手元の資料を見て、一つ鼻でため息をつきつつ言った。


「……よし、では、そろそろ私も……」












「……仕事の続きに入るか……」















 そう言って私はほかの部下たちに指示を出すなどして、復興作業を再開したのであった。
























 この日の台湾の空は晴れていたのだが、


 その空を拝むには、仕事上もう少し時間が必要そうである。


 しかし、私もこんなところでこもっていたままでは少し疲れる。


 早く外に出て、一休息できるまでに奮戦せねばなるまい。


 この国の長として、一刻も早く、この国、台湾を復興させなければ。




















 その決意を胸に、私は改めて自分に気合を入れ、


 その残っている目の前の復興事業の仕事に没頭するのであった…………

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