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『やまと』 ~戦乙女との現代戦争奮戦記~  作者: Sky Aviation
最終章 ~中亜戦争終結・戦乱の終わりへ~
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保護の主席 in 北京市内某所

―TST:AM12:00 中華人民共和国首都北京市内某所地下―








「……ん……、、?」


 私は寝てしまっていた自分を覚醒させつつそうつぶやいた。


 あの後、私はいきなり眠らされそのあとここに連れてこられたようだ。

 ……確か、いきなり車を止めたと思ったらとりあえず手錠かけるからとかいって何の躊躇もなく私の隣に例の日本人女性スパイが来たと思ったらその手錠の代わりに変な薬っぽいのを飲まされたような。覚えてるのはそれだけだ。

 たぶん睡眠薬かなんかだったのだろう……。そして、気が付いたらここだ。


「……で、どこだここは?」


 周りは白い壁で囲まれており、そこにあるのといったら扉1枚だけ。

 そして、私が座っているイスと、ガラスの板が使われたテーブルが1つ。

 ……たったのそれだけ。手錠はされている身だが、これくらいは確認できた。


 ……状況から察するに、おそらく彼女が言っていたスパイ組織の拠点である地下の支部だろう。いわば、彼女たちのアジトというやつだ。

 ずいぶんと近未来的だな。映画とかで出てきそうなものそのまんまだ。


 しかし、それのどこなのだろうか。


 地下の……。まあ、どうせ尋問室的な部屋だろうな。


「……で、誰かさっさとこないのか……」


 あんまりこんなところで孤独はなぁ……。というか、何もできずに暇なのだが。


 ……すると、


「……ん?」


 その1枚しかない扉が開いた。

 そこから例の女性が現れたが、さっきのSPのときとは違ってほかの服に変えている。

 といっても、ただの真黒なスーツだが。


 彼女は私を確認するやいなや、扉を閉めつつ安堵の表情で言った。


「お。起きたわね。寝心地はどうだった?」


「寝心地ね……。もう少し安眠したかったな」


 そんな冗談を返してみる。

 まあ、でもねるならもう少し平和的に寝たかったのは事実。あんな薬飲まされて云々なんてされたくはなかった。


 彼女は向かいのイスに座りつつ言った。


「ここの場所がバレるのはまずいのでね。少し強引にいかせてもらったわ」


「まあ、そんなことだろうと思ったよ……。で、私は今どんな状況なんだ?」


「ただの拘束者。一応、こちらの保護下に入らせてもらうわ」


「理由は……。まあ、暗殺等を防ぐためか」


「ええ、その通りよ」


 だろうな。やはりか。

 今回の一件で、私の命を付け狙う者が大量に出てくるだろう。この後刑事裁判調査団も来るからそれに身を預けねばならんし、その前にもいろいろやることがある。

 そんな中殺されたらたまったものではない。


 ……おそらく、適当にSPの者たちが預けてたとかいうつもりだろう。実際は日本のスパイだが、そんなことをのたまおうものなら彼女たちから殺されかねん。

 いくら理由があろうとも、機密のためなら話は別だろう。まあ、私の死にたくはないので口はつぐむが。


「で、今はいつだ?」


「あれの翌日」


「なんだ、結構寝ていたな……。上はやばい状態だろうな」


「ええ。情報ではすでに共産党がある天安門とかの周りがデモ隊で埋め尽くされているわ。まるで昔の安保闘争……、って、これはあなたに言ってもわからないわね」


「あー……。とにかく、やばい状況ということか」


「まあ、そういうことね」


「ふむ……」


 まあ、そんなことだろうとは思った。

 今頃シュプレヒコールが鳴り響いているころだろう。私がいなくなったんだ。軍部の指揮だけではああいうデモ隊を全部対処しきれんだろう。


 ……と思ったが、どうやらそれ以前の問題らしかった。


「……ああ、それと」


「?」


 彼女は思い出したように言った。


「共産党を支配していたって言ってた軍部連中、私の仲間が調べたところによれば、今朝ほど軍部の首脳陣の全員の死亡が確認されたわ」


「なに? どういうことだ?」


「その前に聞きたいんだけど、あなた、軍部が支配し始めた時にいた部屋覚えてる?」


「ああ、覚えているが?」


「あなたがあそこから脱出する前、銃撃戦かなんかあったの?」


「銃撃戦……? ああ、あったな。そういえば」


「ああ、やっぱり」


「? どういうことだ?」


「いえ、その部屋らしきところにさりげなく関係者に扮して潜入した仲間がひどい有様を見て。全員あそこで死んでたわ」


「なに……?」


 あの銃撃戦の後、互いに全員が死ぬまでやったというのか……?

 あれから誰も降伏などしなかったということか? 何という精神だ……。考えられん……。


「身元もとりあえず高級将校に関しては称号を済ませたわ。そして、首謀者らしい林蜂木総参謀長の死亡が確認されたわ。彼の指揮がなくなった今、軍は完全にその力を失ったといえるわね」


「そうか……」


 彼もやはり死んだか……。にっくき首謀者とはいえ、私の腹心として結構働いてくれたこともあり結構信頼はしていたのだが……。

 ……これも運命か。仕方ないのだろうな。


「となると、デモ隊を止める軍はもう動いていないと?」


「いえ、一応各地域の部隊が独自判断で鎮圧には当たっているわ。だけど、やはりあくまで現場の独自判断だけで動いているから、デモ隊側との勢力相対比も差がありすぎることもあって、さすがに限界があるのが現状ね」


「それほどのか……」


 デモ隊の勢いがうかがえる。

 うちの陸軍は簡単には押し倒されるほどのヘタレではないはずなのだが、それでも無理なのか。というか、市民が軍を恐れずそれほど大規模なデモを仕掛けてくること自体が、もはや国民の共産党に対する反発意識の高さがうかがえる。


「とにかく、そういうわけで上は大混乱よ。秩序もクソもないわ。だから、今はあなたはここで待機よ」


「ふむ……。で、私はいつまでここにいればいいのだね?」


「1週間ほど時間を頂戴。1週間後に降伏調印式がアメリカ空母“ロナルド・レーガン”艦上で行われる予定よ。時期が来たら寧波に赴いてくる予定のそこに移動するわ」


「ロナルド・レーガンか……」


 確か、アメリカ第7艦隊旗艦で日本の横須賀に停泊しているニミッツ級空母だったか。


「しかし、なんだってあの艦の上なんだね?」


「ほんとは手軽に都市部でやりたかったんだけど、その場合警備が面倒だし、何より暗殺の可能性もあるわ。そうなると、より安全が保障される艦の上がいいってわけ。で、使えそうなのがこれってはなし」


「なるほどな……」


 暗殺の可能性か。昔アメリカでも大統領が暗殺されたということもあったし、それを考慮したか。こんな時に暗殺されたらせっかくの降伏調印も台無しになってしまうからな。

 まあ、いずれにせよ安全が保障されているなら安心だ。理由は別としてな。


 ……となると、その1週間はここで暇することになるのか……。まあ、他に何もすることないしな……。


「……しかし、あなたも災難ね」


 ふと、軽くため息をついて頬杖を突きつつ彼女が言った。


「? 何がだ?」


「いえ……。経済危機から始まって、その窮地に陥った国を救うためにやけくそとも取れる戦争を始めて、挙句の果てには軍部に裏切られ……。たった数年で、ここまで振り回される人も珍しいなって」


「……」


 ……まあ、考えてみればそうか。

 経済危機から始まって、国家救済のための戦争。しかし、案の定結局はこれは無駄撃ちどころか本末転倒に終わり、最悪にも一番の頼りだった軍部にすら裏切られる。

 そして、今は命を狙われる身として追われる……、と。


 ……たった数年しかたっていないのに、ここまで運命が変わるというか、振り回されるというか。

 おかしな話だ。……まあ、それが現実というものの面白さでもあるのだが。


「……しかし、結局それは私が発端だ。文句は言えん」


「そうはいってもねぇ……。まあ、それで戦争をおっぱじめたのはやりすぎだったかもしれないけど」


「あれしか方法がなかったのだ……。無理とはわかっていたが、どのみちああでもしなければ最終的には国が死ぬことになる」


「ある意味最後の賭けともいえる打ち上げ花火か……。きれいには上がんなかったみたいだけどね」


「日本のようにきれいには上がんないということだ。……まあ、予想はできていたさ」


 とはいっても、花火自体は我が国が爆竹、ないし火薬を用いたのが起源とされているんだがな。

 いつの間にかほかの国がきれいなのあげているな。気が付けば、周りに追い越されているということか。


「……でも、この後の後継者はきっといい花火を上げてくれるわ。この後は選挙が行われるはずだし」


「うむ……。そう願いたいが、それはいつごろになる?」


「アメリカさんの進捗状況によるから正確にはまだわからないけど、大体来年に持ち越しね」


「来年か……」


 ずいぶんと長くなるな……。しかし、仕方あるまい。

 アメリカとてそうすぐに多方面には動けんだろう。これくらいが妥当か。


「来年には新しい後継者が中国を動かすわ。……彼らが、今までよりよい中国を作ってくれることを祈りましょう」


「だな……」


 とりあえず、今私ができることは、この後の調印式を無事に終え、そして中国の未来を願うだけだ。

 丸投げとなってしまうが、中国の今後は彼らに任せるほかはあるまい。


 ……はは、私も随分と変わったものだ。

 前の私なら自分勝手な考えばかりしていたものを。今となってはどれだけ冷静な人間になったことか。

 よく言われる理由が改めてわかった気がした。そう思うと、自然と笑みがこぼれたが、それを見たらしい彼女が笑みを浮かべつつ軽く鼻で笑うと、話題を切り替えるようにさっきよりはっきりといった。


「さ、それじゃちょっと場所移動してもらうわよ。少し、ここじゃ保護にはめんどくさいしね」


「ほう。そろそろ私も牢屋入りか?」


「いや、ここには残念ながら牢屋はないからね。代わりの部屋で警備付きの待機。あ、不便だろうから今手錠取るわね」


「それで済むのか……。もっと厳しいものと思っていたが。というか、いいのか手錠をとって」


「どうせ抵抗するにしてもあんた一人じゃねぇ。バカにするわけじゃないけど」


「いや、事実そんなもんだろう……」


 私一人で戦える能力なんてこれっぽっちしかないのでな。君らみたいな戦闘に特化した人間に勝てるわけなどない。


「まあとにかく、そういうことだから。じゃ、さっさと移動するわよ。ついてきて」


「ああ」


 そう答えつつ私は立ち上がった。

 手錠を外され、手が図夕になった私は結構腕が軽くなった錯覚にとられるが、それにはかまわず彼女とともに移動を始めた。


 部屋の外には彼女の仲間らしい警備担当の黒のスーツ男が2人おり、私ん後ろに控えておなじく移動した。


 ……ここからまた緊張の時間だな。

 まずは調印式だ。あれを成功させて、さっさと事を終わらせなければならない。


 ……それまでは、











「……少しの、休息の時間か……」













 ひと時の休息をしっかりとることにしよう…………

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