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『やまと』 ~戦乙女との現代戦争奮戦記~  作者: Sky Aviation
最終章 ~中亜戦争終結・戦乱の終わりへ~
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中国船乗りの終戦

―TST:AM11:15 DDG成都艦橋―







「……そうか。何とかすべての手順を終えたか」


 俺は部下からの報告にそう一言答えた。


 降伏宣言後、やまとの負傷者治療支援や接舷による横流し等の阻止などをして支援していった結果、その後は一時的には台湾の管理下に入り、そのあとアメリカの準備ができたらすぐさま日台の護衛の下東海艦隊の母港である寧波に向かうこととなった。

 東海も北海もどこも壊滅状態で、まともに残っているのは俺たち南海艦隊だけらしい。で、とりあえず近くの寧波に一つにまとめることにしたようだ。

 別に文句は言わんしそもそも敗戦側の国の人間だからあんまり相手にされんだろうが、しかしこれまでの戦闘でまともなのが我々だけとは……。どれほど相手側の攻撃が熾烈だったことなのやら。我々は幸運だったということか。

 今は日台艦隊の保護を受けて一応台湾方面に向かっている。どこでアメリカが準備完了するまで待つかは後々日台側司令部からの通信を待つほかにないだろう。


 ……そして今は、


「はい。とりあえず日台側の保護の準備は完了し、あとは向こうの総司令部、またはアメリカ側からの指示が出るのを待つのみとなります」


「了解。……それまでは少しの間暇か」


 その間我々は何もすることがなかった。

 今は所定の位置まで移動する必要があるが、そのあとは何もすることがない。


 ……まあ、その間はどうやっても何もすることがない時間ができるのだから仕方ないが。


「(……本当に終わった、ということか)」


 これで本当に終わったということが実感できていた。


 これ以上余計なことをしなくて済む。


 なんとなくだが、それでやっと終わりを実感できた。



 ……最後の最後はおかしな状況になってしまったがね。



「……じゃあ、この後はやまとの護衛しつつ移動のみか……」


 今の主な任務と言ったらそれくらいだろう。


 今俺たちの右舷には反転して曳航されているやまとの姿があった。

 それほど大きな損傷はない。しかし、艦橋右舷側にはまだミサイル迎撃時の傷跡が生々しく残っている。


 ……しかし、まさかミサイルを手動で本気で落としてしまうとは。日本はいろいろとおかしな人間を作ってしまったものだ。


 でもまあ、その彼のおかげで我々も一命をとりとめたようなものだ。こっちからも最大限の支援をした買いがあったというものだ。


 ……あー、そういえばそれで思い出した。


「(……あれ以来中国側の司令部からの指令がないな)」


 まあ、こっちから無線カットしてしまったから入ってこないのは当然ではあるのだが、せめて旗艦を通じてとかだな。


 ……いや、先の事例のある。もしかしたら共産党自体もうすでに倒れている可能性があるのか?


 主席が共産党を脱出する過程でひと悶着があったと聞いているが……。まあ、いずれにしろ向こうの言い分など今更聞く気はないが。

 あと、旗艦からの最後の無線で政治将校っぽいやつ聞こえていたが……。そいつからも無線が来ないな。

 ……どいつもこいつも最後の最後でやられたか?

 ま、俺的にはそのほうがありがたかったりするがな。


 どうせ今のこの一連の行為にブチ切れて終わりだろうし。んな文句聞いているほど俺たちは暇じゃないっての。


「……んで、この曳航が終わるのっていつごろだ?」


 俺は副長にそう聞くと、すぐに返答はきた。


「今日の夕方ごろに一応味方と合流する予定で、そこでいったんは完了します。そのあとはまた曳航で本国に行くようですが」


「そうか……。結局、向こうは曳航しっぱなしか」


「まあ、あれはさすがに機関再始動は無理でしょう。あんだけぶん回したんですし」


「まあな……」


 むしろなんで無事なんだってレベルだ。

 手負い状態で機関一杯を問答無用でなど、ある意味自殺行為の何物でもない。

 一気に機関に負担がかかって最悪誤爆もあり得るのに……。まあ、そう考えると艦も艦でよく耐えたなと。


 ……日本の艦だな。そこらへんは。


 最後の最後まで根性出すあたりは。


「(……とりあえず、今はほかの味方との合流を急ぐか……)」


 そんなことを思っていた時だった。


「……?」


 ふと、隣に目がいた。


 政治将校。さっきまで何をするまでもなく海のほうを眺めていたが、少しこの場を後にしようとした。


 俺は思わず引き留める。


「おい、どこ行くんだ?」


 彼は一瞬足を止めると一言だけ残した。


「……ちょっと一人にさせてくれ」


「?」


 それだけ言うと彼は艦橋を降りた。


 ……何したんだあいつ? 戦争終わったから疲れて寝る気か? まだ昼なのだが。

 まあ、別にそこら辺は好き勝手すればいいが……。


「……まあいいか。俺が一々気にするまでもないな」


 俺はそんなふうに簡単に割り切ると、改めて目の前を見た。


 相変わらず空は青かった。昨日までの曇り空から一変。今日はすっかり晴れがすきとおっていた。


 曇りもほとんどない。雲量は3~4くらいであった。


 この様子だと風もほとんどないだろう。


 ……きれいなもんだ。


「……何とか、終戦してこれをみれてよかったわ」


 戦争中ならこのきれいな空を眺めている暇もなかったからな。


 ……しかし、今となってはその余裕もある。


 もう、昨日までの戦乱ではないことを、改めて実感した。


「……さて、そんじゃ、」














「……さっさと護衛済ませて休むか……」















 俺はそんなことを思いつつまた艦長席に座った…………

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